第85話 ぷれぜんと

「シロ、寒いのにご苦労だったな?よく来てくれた」


「実は今日はとても大事なお願いがあるんだよ姉さん」


「フム… お前たち、下がれ」


「いや、いいよ?みんなここにいて?」


 ここは姉さんの城、クリスマスプレゼントに必要不可欠なレアアイテムがある、それを獲得するためにここまで来た。


「姉さん、今度またパーティーをするんだよ?クリスマスって言ってね?姉さんたちにも是非来てほしいんだ」


 それを伝えると姉さんの鋭い目付きはフッと優しく変わり「なんだそんなことか」と笑顔で俺を見た。


「おぉ?パーティーか!いいなぁ!みんなで行くよ!で、クリスマスってなに?」


 そんな質問に対してクリスマスの説明をした後に、俺は詳しく頼みごとを話す。





「ほぉ~?クリスマスプレゼント?」


「うん、彼女になにか用意したくて、それで思い付いたものが… “これ”」


 スッと取り出したのは長の羽が装飾された姉さんの牙、即ち俺のお守りである。


 俺は彼女に同じものをプレゼントすると決めたのである。


「俺はこれにすごく助けられた、いつも肌身離さずいつも持っているんだ?だから彼女にも同じものをプレゼントしたい」


「なるほど…」


 少し鋭い目をして悩む姉、そして後ろの二人は少し焦ったような様子で呟いた。


「弟さん、それはつまり…?」


「たいしょーにまた牙を抜けってことじゃ…」


 瞬時に話を理解し目を閉じた姉さん、そのまも一呼吸終えるとジッと俺を見つめ答えた。


「フム、いいだろうシロ… 大切な弟と妹の為だ、私の牙を持っていくがいい」


 姉さんは、本当にほんの少ししか悩まずにその答えを出した。

 この人はどこまでも俺に甘い、そんな姉さんが俺は大好きだが、でもだからこそ俺はこう答えたのだ。


「いや、必要ないよ」


 ならどうする?という顔をする三人、俺が出した答えは姉さんの答えとは違うのだ。

 わざわざ姉さんを犠牲にしてまでやるべきことではないのだから。


 だから答えた。


「これから野生解放する、だから姉さん達には俺の牙をひとつ抜いてほしい」


 そう、使うのは俺自身の牙だ。


「シロ、正気か?」


「勿論、というか姉さんは人のこと言えないからね?」


 そうとも、それを言うならあなた俺の時は正気だったんですか?という感じだ、姉さんはポカンとするとすぐにいつもの調子で言った。


「それもそうだね~!」


「ははっ全く姉さんは…」


「めんごめんご~!しかしお前もいろいろ考えるねー?」


 なんて少し笑いあった後に姉さんはキリッとした顔ですぐに部下たちに指示をだした。


「ツキノワを呼べ」


「はい大将!」


 オリックスさんがツキノワさんを呼びに出ていった、俺の為に総動員で掛かる為だ。


「お前の覚悟、受け取ったぞシロ…」


「姉さん、俺は姉さんみたいに器用じゃないから…」


「わかってる、三人にはお前の体をガッチリ押さえてもらう… いいかい?ちょー痛いけど我慢しろよ?」


「嫌がっても泣き叫んでも決してやめないでほしい、これは必要なことなんだ」


 やがてツキノワさんがくると姉さんの指示を受けて三人は配置に着いた


 オーロックスさんは俺を羽交い締めに、ツキノワさんは足をがっしりと掴み、オリックスさんは俺の口が閉じないように押さえた。


 そして姉さんは俺に股がり…。


「ごめんなシロ?すぐ済むからな?」


「ひほほほいひやっへ」(一思いにやって)


 よし頼むよ姉さん、いくぞ!野性解放だ!


「気合い入れろよお前らぁーッ!」


「「了解ッ!」」







 部屋にバタバタと暴れる音、そして痛みに苦しむ俺の叫び声、辺りに漂う血の臭い…。


 姉さんの手にはホワイトライオンの牙が。


「はぁ… はぁ… シロ、生きてるか?」


「あ… が… ありがとう姉さん、最高だよ」


 くっそ… いてぇ。


「おとーとさん、さすがっす…」


「感動したよ弟さん…」


「お疲れさま!すごいよよく耐えたね!」


 この痛みに耐えて姉さんは自分一人で引っこ抜いたわけ?最強過ぎるだろ、紛れもない百獣の王だ。

 俺はそんな姉さんのことを尊敬している、今こうして真似をしてみたが姉の背中はあまりにも大きく遠い… そう感じた。


「姉さんごめんこんなこと頼んで、でも頼むなら姉さんがよくてさ?姉さんもこんなに痛いのに俺のために牙を抜いてくれたんだね?」


「よーしよし、大丈夫だよ?よく頑張った!シロは偉いよ!立派だよ!かばんも絶対喜んでくれるよ!」


「ありがとう姉さん!ありがとう…!」


 もう本当にスゲー死ぬほど痛くって俺は叫んで泣いて暴れたのに、姉さんはこれを一人でやったのだ、しかも博士たちの前でサクッとやってのけた、実際この話は耳を疑う。





 それから俺は城をでてまっすぐ家に帰った、何度も血を吐き出したが御飯はちゃんと食べれるだろうか?


 俺が帰って口を洗っていると 博士たちに見つかり言われた


「必要な物は揃ったようですね?」

「よくやったのです」


「うん、作るのは明日にするよ… ところで晩御飯何?」


「「シチューです」」


「ん~OK、なんとか食べて見せるよ」


 その晩彼女に言われた。


「なんだか血の臭いが…」


「ちょっと口の中噛んじゃって、ハハハ…」


 危ない危ない、なんとかバレずに済んだ。


 お守りは翌日こそこそと地下室で組み立てて隠しておく、そしたら準備完了だ。

 

 俺の物同様首飾りのようにしておいた、綺麗な箱が無いのが悔やまれる、箱にリボンでビシッと決めたいところだけどまぁこれは仕方ない。





 シロの日記


“ 明日はクリスマスパーティーだ、あらゆる面で準備万端、人生で最も印象に残るクリスマスになるだろう。

 みんなにプレゼントということで人気の高かった料理のいくつかを出して見ようと思う、魚がうまいこと手に入った点はマルカちゃんに感謝しよう。

 試しに作ってみたお酒もだしてツチノコちゃんにテイスティングしてもらうことも考えている。

 明日の晩、パーティーが終わって二人の時にプレゼントを渡そう、どうか喜んでくれますように。



 それから余談だが、最近になってたまにボーッとして意識が途切れることがある。

 妻は疲れてるんじゃないか?と心配してくれるが特段仕事量が増えた訳ではない、数人で協力して仕事をするようになってからむしろ楽なはず。


 ストレスは無い、生活は充実している。


 最近冷えてきたし、また熱でも出るんだろうか? ”





「みんな!今日の挨拶は“メリークリスマス!”OK?」


「「メリークリスマス!」」


「バッチリ!じゃあみんなメリークリスマス!どんどん食べてー!」


「「わーい!」」


 クリスマスパーティーが始まった、寒いのが苦手な子達が震えてコーンスープに群がり、久しぶりのツチノコちゃんには早速試しに作ってみたお酒を用意してみた。


「どうですかソムリエ?」


「なんだソムリエって… いや、悪くないぞ?なかなか強いが甘味があって苦手なやつでも飲みやすいんじゃないか?お前とかな」


「あ、ほんと?じゃあ一口…」


 ゴクリ… と一口それを口に含むとアルコールが染み渡り熱を感じる。


「あ、ふーん?なるほど… 確かにツチノコちゃんスペシャルより飲みやすい」


「てかおい!お前はオレを毒味に使ったのか!」


「ほら俺はこう見えて未成年ですから」


「だからそのみせーねんってのはなんなんだよ!?」


 これはあまりみんなに与えるとドッタンバッタン大騒ぎになってしまうのでここまでだな。

 まぁ一口くらいなら体にもいいだろうし温まるから大丈夫だろうけど、お酒は怖いからね。






「おーっすシロー!」


「あ、姉さんいらっしゃい、どう?楽しんでる?」


「そりゃもうねぇ!ところで、例のものはいつ渡すのさ…?牙はどうだ?」コソッ


「夜、二人の時に渡すよ?本当にありがとう姉さん?こっちはやっと治ったよ?姉さんは一晩だっけ?回復力もさすがだよね?」


 イーっと歯を見せて再生が済んだことを伝えると、姉さんからは激励の言葉を頂き俺は今夜のメインイベントに気を引き締める。


 彼女は俺のプレゼントをどう思うだろう?


 重たいかな?まぁ歯をプレゼントするなんてここじゃなきゃイカれた行動に違いないだろうが、ライオンの牙とか動物の牙の類いはなにか神聖な物を感じないだろうか?俺はそう感じたので姉さんの牙も嬉しいプレゼントだった、なぜだか力が湧いてきた。


 ただこれは飽くまで男の子の、俺の感想である。


 彼女は、かばんちゃんはどうか?彼女のことだからあげれば嬉しそうにお礼を言うだろう、ただ建前というのもあるはずだ。


 例えば俺がいつかの時のように砂糖と塩を間違えたお菓子などを知らずに渡してしまったとしよう?そしたら彼女は一口食べてこういうはずだ。


「あ、ありがとうございます!後でゆっくり頂きますね?」


 とそんな感じで、同じように俺の身を削ったプレゼントを渡したときには。


「これプレゼント、お揃いなんだ」キラッ☆


「わぁい…」(いや歯て…)


 うわ、つれぇ… これは辛い!離婚されるかもしれないと思うと一人で壊れかけの観覧車で暮らしたくなってきた。


「あぁ… 怖くなってきた」


「どうしたんですか?」


「かばんちゃん喜んでくれるかなって…」


「え?僕ですか?楽しいですよ?」


「アァーッ!?」


「わぁ!?どうしたんですか!?」


 なんということだぁ!?目の前に嫁おりますやんか!?


「なななんでもないよ?はぁビックリした」


「大丈夫ですか?やっぱりお疲れなんじゃ?」


「ううん、平気… ねぇかばんちゃん?」


「なんですか?」


「後で大事なお話があるんだ、パーティーが終わったらお部屋で話さない?」


「大事な?わかりました…」


 こうなれば自分を追い詰めよう、もう渡すしかないのだから。


 少し不安そうな顔を見せる彼女、もしかしたら彼女も俺に何か嫌なことを言われたらと不安になっているのかもしれない、当然そんなことはないが。


「シロさん?」


「ん?」


「僕はシロさんにどう思われても、シロさんが大好きです…」 


 伝え方が悪かっただろうか?誤解を招きつつあるようだ、だからそんな誤解は今のうちに解いてなるべくラブラブした雰囲気でプレゼントを渡したい。


 そのためには… よし!


「かばんちゃん?」


「はい…」


「子供は何人ほしい?」


「ぇっ!?なんですか急に!?」


「俺はねぇ、大変だけど何人いたっていいと思うんだ… かばんちゃんはどう思う?」


「えと… 僕は… 僕も… あの… が、頑張ります!」


 でも実際、子供はいつかできるはずだ。

 

 あれ?クリスマスがきたってことはもう結婚一年目か?なかなかできないものだな。


 しまった、それより結婚記念日ならそれ用にもっといろいろ用意するべきだったかな?


 でも彼女の照れた顔を見てると安心した、こんな記念日にも今頃気付いて指輪も用意してやれず、挙げ句にクリスマスプレゼントに自分の牙をプレゼントしようとしてる俺だが、彼女はそんな俺のことを愛してくれる。


 幸せにしたい、きっと彼女はもう幸せだと言ってくれるだろう。


 だからもっと幸せにしたい、しなくてはならないんだ。


 彼女は結婚式で俺を幸せにすると言ってくれた、でも俺はすでに両手で余るくらい幸せだった。


 そしたら彼女はもっと幸せにすると言ってくれた。


 幸せに限りはない、死んでも幸せにしてやろうじゃないか。





 その晩、一通り後片付けも済んでドンちゃん騒ぎのパーティーが嘘みたいに静かになった夜。

 

「シロ、ビシッと決めるのです」

「お前ならいけるのです」


「やってやるぜ…」


「シロちゃん!なんだかよくわからないけど頑張ってね!」


「ありがとうサーバルちゃん!」


 くっ… しかし緊張してきた!こうなったらツチノコちゃんお墨付きのこの酒で!景気付けだ!


 ぐびぐび…。


「ッハァ!あれ?ちっとも酔いやしない!失敗したかな?」


 やめやめ!酒に力を借りるなんて!


 さて…。


 地下室から隠していたプレゼントを持って我が家に帰宅、枕の下に隠した… 実はこれからお風呂なんだよ、へへぇあ!


 しかし二人で入るのも慣れたものだ、もう我慢して背中を向ける必要がないのだから


 ピッタリと密着して彼女の体を隅々まで綺麗にするのも公認だ、シロイさんはその辺バッチリなのだ。


「さぁ前も洗いましょうね~?ハァハァ」


「んもぅ!シロさん!自分でできますからぁ!」


「ちゃんと綺麗にするのだ!シロイさんに任せるのだ!」←性豪


「ふふふ、もぉー!そのモノマネやめてくださ… キャッ!?シロさん!///」


 きゃっきゃっウフフなクリスマス… 若い夫婦はこうでなくてはな!





 お風呂を上がると用意しておいた寝間着に着替えてベッドに並んで座り込む。


「ふぅ… シロさんったらすぐイタズラして」


「大体かばんちゃんが悪いと思う」


「え~どうして僕が悪いんですか?」


「可愛いから」


 そう、ついイタズラしたくなるのも全部君が可愛いすぎるが故のことなのだ!


「え~?そんなぁ、もぉ///」


「本当だよ~?ほらそうやってまたお尻で俺のこと誘ってんでしょ?」サワサワ


「やぁん!?ほらシロさん!大事なお話はどうしたんですか?」


 あぁそうでした、緊張ほぐれすぎて忘れてた。


 では改めてと俺は彼女に向かい合った。


「かばんちゃん… これは実はさっき気付いたことなんだけど、俺達は結婚して一年経ったんだ」


「あ、よく考えたらそうですね!結婚式はハロウィンの少し後でしたもんね?」


「とりあえず先にそれね?ありがとうございます、これからも末長くそばにいてください?」


「あ、はい!こちらこそ、よろしくお願いします!」


 という切り口で話の流れを作りクリスマスの話に戻る。


「それでね?えーっと… かばんちゃんはクリスマスについてどこまで知ってるかな?」


「えっと… キリスト?って人の誕生を祝うんでしたね?それで木に飾りつけをしたり美味しいものを食べたり、あとサンタクロースっていう人が子供にプレゼントを配るって」


 正解、良くできました。

 それでは現代のクリスマスの情報を補足。


「クリスマスはね、恋人たちにも特別な夜なんだよ?」


「そうなんですか?」


「うん、デートしたりプレゼントを渡して気持ちを確かめ合ったりたりするんだ?」


「へぇ~?なんだか素敵ですね!」


 さて、それでは本題中の本題だ。


「それでえっと… 実はさ?」

 

「はい?」


 やっぱり本番は改まると緊張するなぁ… でも渡すぞ!行け!go for broke!


「かばんちゃんにプレゼントを用意したんだけど…?」


「え!?本当ですか!?でも僕はなにも…」


「あ、いいのいいの!ほら!結婚したけど指輪も渡せてないし、暦もわからないから誕生日のお祝いもできないでしょ?それに結婚記念日もだし、俺はいつもかばんちゃんにお世話になりっぱなしで… どうしても何かお礼がしたくて」


「お世話になってるのは僕も同じですよ?」


 まぁ彼女ならそういうと思ったが、俺は何度も優しい彼女に助けられた、それは事実だ。


 だから。


「とにかく!気に入ってくれるといいんだけど… 受け取ってくれる?」


「もちろんです!わぁ… シロさんからプレゼントなんて初めてですね?」


 ぷ、プレッシャーが… いや、南無三!


「じゃあかばんちゃん、目を閉じて?」


「は、はい!///」ドキドキ


 彼女が目を閉じたのを確認するとひとつ深呼吸、そして枕の下のお守りを取り出すと彼女に首にそっとかけてあげた。


「いいよ?」


 彼女はゆっくりと目を開き、首にかけられたお守りを見た。


「これ… シロさんのお守り?」


「とは別なんだ?ほら、お揃いなんだけどさ?」


「わぁ本当だ…!あ、ありがとうございます!嬉しいです!でも、あれ…?」


 俺が自分のお守りも取り出し彼女に見せると、彼女は驚いてハッとした後に少し不安そうな表情を見せた。


 ライオンの牙、そんなもの都合よく普通は手に入らないのだ。


「シロさん… あの?これはもしかしてお姉ちゃんの…」


「あ、違うよ?それは俺の牙」


「え…!?大丈夫なんですか!?見せてください!」


 事実を聞き、グッとこちらに身を乗りだし俺の口を覗きこんだ。


「大丈夫、もう生えたよ?」


「はぁ… 良かったです…」


 少し落ち着いたのか、手を離してストンと隣に戻った。


「ごめん、やっぱりこういうのは重たかったかな?」


「そんなことないです!僕嬉しくて… でも僕にこれを渡すためにシロさん痛い思いまでして… どうしてそこまで… シロさん?」


 ストンと俺に身を委ねると、彼女はギュウと抱き締めてくれる。


 俺は彼女が大事だけど、彼女も俺のこと大事にしてくれているんだなと安心感を覚える。


「その御守りは、俺に勇気をくれたスゴいお守りなんだよ?姉さんと博士と助手と… 作ってくれたのは君だし、あと母さんからのメッセージもある、それのおかげで頑張れたし、とても強くなれた」


「でも、でも痛いに決まってるじゃないですか?バカ…」


「そうだけど、かばんちゃんのこと思ったら我慢できたんだよ?それは俺を守ってくれたようにきっと君を守ってくれる、俺の気持ちを目一杯込めたつもり

 だからかばんちゃんもこのお守りで勇気をもらえたり、頑張れたりしたら嬉しいなってそう思ってプレゼントに選んだんだ」


 彼女はそれを聞くとたくさん泣いた、嬉しくて泣いていたのもあるのかもしれない。


 でも一番は俺が自分を痛め付けてまでしてそれをプレゼントしたことに泣かせてしまったんだと思う。


 優しい彼女のことだもの、きっとそうだ。


「それで、受け取ってくれる?」


「一生大事にするに決まってるじゃないですかぁ!シロさんのバカ!どうしてそんなに優しいんですかぁ…!」 


「ごめん… でもそれはいつも言ってるけど、君のことが好きだからで…」


「知ってます僕も好きです…!」


 よかった、受け取ってくれた。


 気持ちも伝わった、後はこの溢れ続ける気持ちをかばんちゃんに受け止めてもらうだけ


「じゃあ、メリークリスマス」


「はい…」


「あと結婚一年おめでとう?」


「はい!」


「ついでに、誕生日もおめでとう!」


「はい!シロさん、あの?」


 いろんなお祝いがある、クリスマス以上に特別な夜。


 そんなお祝いの言葉の後に、彼女は珍しくこんなことを言った。

 

「それじゃあ、ワガママを言っても… いいですか?」


 そんな彼女には珍しい言葉に俺は迷うことなく首を縦に振った。

 彼女はじっと俺を見つめると、目を潤ませながら頬を赤く染め、恥ずかしがりながら小声でこんなワガママを。




「赤ちゃんが… 欲しいです…」


 



 そんな彼女を押し倒して俺は答えた。



「俺も…」



 

 彼女の可愛いワガママに自分を抑えきれず、俺達は激しく互いを求めあった。



 何度も何度も… 求めあった。

 



「「愛してる…」」



 同じ言葉を重ねると、なんだか嬉しくなって小さく笑いあった。


「ふふ…」「ははっ…」


 冬の寒い夜、クリスマスの夜。


 互いに互いの体を温めあいながら夜は過ぎていく。











 でもそれくらいの頃からだっただろうか。


 俺の体も目立って変わり始めていたのは。

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