第84話 くりすます

 シロの日記


“ あれから変なことはない。

 そんなことよりクリスマスだ、去年は何もできなかった。

 今年は絶対!素敵なプレゼントを用意する!絶対!必ずだ!

 誕生日のわからない彼女たちにとってプレゼントをする日というのはきっと特別な日になるはずだ。

 みんなへのプレゼントには最高の料理をプレゼントする、でも妻には特別な物を渡したい。


 みんな大好きだが、その中でも彼女は俺の特別なんだ。 ”





「シロ、それは本当なのですか?」

「詳しく聞かせるのです」


「いいとも、ヒトの世界にはクリスマスというイベントがある… 季節は冬、暦で言うと年が明ける少し前で、そしてその日は美味しい料理に美味しいお菓子を用意してツリーに飾りをつけてお祝いをするんだ」


「じゅるり!なんのお祝いなのですか!」「じゅるり!楽しみなのです!」


 クリスマス。

 イエス・キリストの降誕を祝う祭。

 

 一般的に12月25日のことで、前日である24日はクリスマス・イブという。


 サンタクロースという赤い服をきた恰幅のいい白い髭を生やした老人が、空飛ぶソリをトナカイに引いてもらいながら世界中の子供たちにプレゼントを配るというのはあまりにも有名な話。

 俺もサンタの服を隠す父さんを見付けるまではサンタさんを信じていた、そうあれは7才の冬であった…。


 まぁ今は子供にとっての祭日という訳でもなく、恋人たちが過ごす“性なる”夜として世の中に浸透しているのは最早言うまでもないだろう。


 特別な日に大切な人へプレゼントを渡す、あるいは交換する、お互いの気持ちを確かめあいそして盛り上がるのだ。

 すると次のクリスマスにはサンタの格好で子供の枕元に忍び寄る父親となる可能性が浮上する。


 恋人がサンタクロース、そしてプレゼントは新しい家族… なんてことも?


 あ、閃いた!←けだもの


「それで今度は何を作るのです?」

「クリスマスとは主に何を食べて過ごすのです?」


 勿論フライドチキン!なんて口が裂けても言えないので…。


「主にケーキ、クリスマスケーキというくらいだからね?というかお祝いごとには必ずと言っていいほどケーキが付きまとうのさ」


「「じゅるり…」」


「どうする?やる?」


「無論なのです!」

「第一回ジャパリパーククリスマスパーティーを開催です」


 こうしてクリスマスパーティー開催が決定、忙しくなりますねまた。


 さて俺が二人に餌をちらつかせたのには理由がある。


「ねぇ二人とも?そこでお願いがあるんだけど?」


「聞きましょう」

「言うのです」


「食べたい物ならなんでも用意する、何を頼まれても作ってみせる、だから…」


「良い心掛けです」

「用件を言うのです」


 さすがにこの件は俺だけではどうにもできない、どうか長の力を貸してほしいのです?お願いしますなんでも作りますから!


 そのお願いとは。


「かばんちゃんにクリスマスプレゼント贈りたいんだ?な、なにあげたらいいか一緒に考えてくれない…?お願い!」


「ほぅ?」ニヤニヤ

「ほほぅ?」ニヤニヤ


 両手を組んで膝をつき、素直に頼んでみる。

 だって長だもん!なんでも教えてくれるんでしょ?助けて長!俺どうしたらいいの!?


「しかしフフフッ… 我々なんだか安心したのです」

「そんなことで我々を頼るとは、やはり見掛けによらずかわいいやつですねシロ」


「だぁってぇ~!女の子のほしいものなんてわかんないよ!知恵を貸してよ!」


 で三人で頭を悩ませてみたのだが…。


「なにがほしいか…」

「考えると難しいものですね?」


「そうなんだよね、なんか彼女の場合あげたらなんでも喜びそうだし」


 そう、一人で悩んでいたのが三人になっただけである。

 しかし三人寄れば文殊の知恵だ、きっと何か思い浮かぶはず。


「それならお前からのプレゼントならなんでもいいのではないのですか?」


「それでも喜んでしまうのが彼女だけど、そうはいくかい…」


「もう本人に聞けば済む話でしょう?」


「サプライズしたいし、それに聞いたら遠慮して何もいらないと言うよきっと?」


 作戦は早速頓挫した。


 そう、わざわざ聞いてしまってはサプライズ要素に欠けるし感動が薄れる、嬉し泣きさせるレベルの物をプレゼントしたいんだ俺は、シチュエーション込みでだが。


「考えてもわからないのです」

「我々賢いですが、エスパーではないので」


「だよねぇ?頭の良し悪しとは違うよねこういうのは…」


「なのでシロ、ここは観察するのです」


「観察?」


「そうですシロ、観察してかばんの求めるものを突き止めるのです」


 なるほど観察!かばんちゃんをじっくり舐め回すように見ればいいんだろ?楽勝だぜ、獅子奥義に次ぐ俺の得意技だ!さすが長!


「我々も常に目を光らせます」

「野生部分の解放です」


「物理的に光らせる必要はないから、見るだけでいいの見るだけで」


「お前は見るだけに飽きたらず“する”のではないですか?まったく夜はライオンのクセにニャンニャンと…」

「尤も、やがてニャンニャン言うのはかばんのほうになりますが」


「ちょっと!?」


 おい!何が言いたい!なんでそれあれ!そんなこと言うの!←動揺


「助手、かばんの方はニャンニャンというよりキャンキャンなのです」

「ヒトは時に動物の声マネをする… まるでマーゲイのようですね?」


「もうやめてよ!?」


 なんでバッチリ聞いてんだよ!防音設計はどうした匠!?あとマーゲイさんが毎晩喘いでるみたいな言い方するのやめろ!


「我々耳がいいのですよ」

「暗闇に便利なのは目だけではないのです」


 ピョコピョコピョコ

「フクロウノ耳ハ 音ヲ立体的ニ捉エルコトガデキルンダ」


「あぁそう、それは今聞きたくなかったよ」


 クソ… じゃあもしかしてサーバルちゃんにも聞こえているんだろうか?しかも立体的に捉えるってなんだ?つまり音を聞いただけで俺達がどういう体位でゲフンゲフン。


 そんなことよ観察だ…。





「ただいまー!」

「ただいま戻りました!」


 どうやら二人がお使いから戻ったようだ。


「シロ、かばんが戻ったのです」

「作戦開始です」


「了解…」


 これより、プレゼント聞き込み作戦を開始する… 俺たちは一人づつ話のなかにヒントがないのか探り出すことにしたのだ。


「おかえりかばんちゃん、わざわざありがとうね?」


「はい!お安いご用です!」


「フリシアンさんなにか言ってた?」


「気になるんですか…?」ジト


 しまった!そんなつもりじゃないんですお願いお姉さん許して?しかしやけに過敏に反応するじゃないか?


「や!?いやいや!?最近かばんちゃんに任せっきりだから顔見てないし元気かな~?なんて…」


「ふふ、冗談ですよ~?同じことを言ってました、“お元気そうですか?”って」


 ふむ… なるほど今のでわかったぞ!やっぱり胸のこと気にしてるんだ!←ケダモノ


 ということはバストアップブラとかプレゼントしたら喜ぶんだろうか?←デリカシーゼロ

 俺は知っているんだよ?図書館でバストアップ体操の本を読んでこっそりやっていることをね?

 

 でもこれはダメだな、そんな便利な物はないし流石に開発もできない、性的な開発なら進められるのだが。←最低

 

 人は時として無力なり、次頼むよ博士。





「こほん… かばん?その~どうです?最近は?」ヨソヨソシイ


「あ、博士さん?最近ですか?はい、順調ですよ?」


「お前は偉いですねかばん、シロはバカなので相手をするのが大変でしょう?」


「あはは… そんなことないですよ?シロさんは素敵な人です、僕なんて助けられてばっかりで…」


 かばん… どこまでもシロに骨抜きにされたやつなのです。

 ですが、そこがポイントなのです!そこにヒントがあるはずなのです!


「ところでそんなシロの為に忙しいお前はなにか困ってはいないのですか?」


 我ながらさりげない気の配りです、フフ…。


「え?そうですね、特に困っては… あ!そうだ!」


 ほ~ら食い付いたのです、私にかかればチョイなのです!賢いので…。


「シロさん、最近たまにボーッとしてることがあって… もしかして疲れてるのかもしれないので、ワガママもほどほどにしてあげてくれますか?僕もがんばりますから!」


「…」


 こ、こいつ!シロのことしか考えていないのですか!?自分のことはどうでもよいとでも言うのですか!?

 じゃあシロさえいればなんの問題もないのではないですか?これは、参りました… 


 単に“物”として欲しいものなんてあるのでしょうか?


 助手、あとは頼むのです。







「かばん、お使いご苦労なのです」


「あ、助手さん、ありがとうございます!」


「その~… あれですね?最近冷えてきましたね?」


「そうですね?この間ハロウィンパーティーやったばかりだから、もうすぐ冬ですもんね?」


 さて、ここで聞き出せれば苦労はしないのですが…。


「寒くなるとこう、いろいろ必要な物が増えるのではないですか?お前はヒトなので」


「えーっと… 冬物の上着はシロさんが持ってるし、夜はくっついてるからそんなに… えへへ、なんかごめんなさい///」


 ここぞとばかりにノロケですか?これはかばん自身のことよりシロやサーバルを引き合いに出して聞いたほうが成果が得られるかも知れませんね?


「でも、そんなに困ってはないですよ?去年もあるものだけでなんとかしてきたので!」


「なんでもいいですが、無理してはダメですよ?例えば瓶の蓋が固ければシロやサーバルなら開けられるのです、それでももっと二人の役に立ちたいと行動したいのなら、お前はヒトなのでなにか道具を使えばそれも補えそうですね?あれば便利な道具とかはないのですか?」


「道具… そうですねぇ…」


 少し唐突だったでしょうか?いや、大丈夫そうですね、ここからチョイです。


「いろいろあると便利ですよね~?」


 きましたね!


「可能なら用意することも…」


「でも、大丈夫ですよ!」


 な!?大丈夫!?


「だってシロさんがいつだって僕のこと助けてくれます!サーバルちゃんも進んで手伝ってくれます!それに博士さんも助手さんもそうして気を配ってくれるので、僕は僕のできることで皆さんをお助けします!これ以上求めたら贅沢です!」


 なんなのですかこいつは!?便利な物を求め産み出し使うのがヒトのはず!?





「シロ?」

「シロ!ミーティングですよ!」


「…へ?あ、あぁごめん… それじゃあそれぞれ成果を報告しよう」


 いけない、ボーッとしてた… 最近増えてなぁ、疲れかな?


「はいです」

「では、まずは私が」


 再度集まるとそれぞれ観察した結果やそれとなーく話した内容から彼女の求めるものを割り出してみる… まずは助手。


「私は必要な道具があれば用意できると飽くまで利便性の話を前提に話をしてみましたが、みんなと助け合って生活している自分がこれ以上何か便利さを求めるのは贅沢だと」


「つまり、なにもいらないということですか?」


「端的に言うと… はい、そういうことになります」


 優しい彼女なら言いかねない、困ったな… いや、それでももらって嬉しい物があるはずだ。


「では次は私です」


「うん」

「博士、頼みます」


 助手に続き、博士の方で成果を期待する。


「私は毎日シロの世話が大変で困ってるだろうと話を進めたのです…」


「なにそれなんか心外」

「黙って聞くのですシロ」


「するとあいつは、特に困ってはないからお前を休ませろと言ったのです」


「まぁ!かばんちゃんったら!?」


「この幸せ者、つまりかばんはお前に愛されることが一番のご褒美なのですよ?」

「恐らく満たされ過ぎて物欲がないのです」


 なんてことだ… それって彼女を十分幸せにできてるってことでは?すげー幸せになってきた。


 しかし気持ちは嬉しいが俺はそんな彼女にもっと喜んでほしいんだ。

 彼女がそんなに俺の為を思っているのにここでなにもしないのは夫失格というものだ。


「シロ、お前はどうなのです?」

「何か成果はないのですか?」


「胸を大きくしたいということ以外はわからなかったよ…」


「はぁ?逆になぜそれがわかったのですか?」←ドン引き

「あんな綺麗な心でお前を見るかばんを邪な目で見ている証拠です」←ドン引き


「そ、そんなんじゃないよ!」


 でもどうしよう?偉そうなこと言ってるけどつまりは何もわからなかったことがわかっただけじゃないか?


 結婚指輪という意見も出たのだが、まだどうしたらよいかもわからないし… 作るにしても俺には製鉄技術はない、困ったぞこれは。


「はぁ、進歩なしか… でも喜んでほしいなぁ?」


「こうなると、かばんの欲しいものにこだわることはないのですシロ」


「どういうこと?」


「始めに話しましたが、お前からのプレゼントなら何をもらっても喜ぶでしょう」

「なら気持ちを込めてお前が渡したい物を渡すのです」


 それはそうなんだけど… 結局それでは何を渡せばよいのか?もちろん気持ちはありったけ込めるが。


 お菓子でも作るか?いや、渡すのはクリスマスだしお菓子は大量に作るから特別感が薄い。


「まだ悩んでるのですか?」

「では、お前がもらって嬉しい物を渡したらどうです?」


「俺が貰って嬉しい物?」


「それが良いのです!もちろんその中からかばんのことも考えて選ぶことになりますが」

「今まで貰って嬉しかった物はないのですか?」


 俺が貰って嬉しかったもの?勿論俺はなんでも嬉しかったよ。


 でも…。


 でも強いていうなら俺がもっとも勇気を貰った物、あれには特別な想いが感じられて嬉しかった。


 そうだ、あれなら…。


「わかった、決めたよ!」


「すぐ手に入るのですか?」

「困難なら我々も協力してやりますが?」


「いや物はすぐに揃うよ… まず二人からはそれをもらいたい」


 スッと二人の頭を指差した、俺が欲しいのは白い羽を一枚、そして茶色い羽を一枚。


「あぁなるほど… そういうことならばくれてやるのです!」

「いいのではないですか?かばんも喜ぶでしょう」


 ブツッと二人は羽を一枚ずつ抜いて俺に手渡してくれた。


 さぁそれじゃあ残りのひとつを調達しないとな。


 これがちと面倒なアイテムなのだ。



 


「かばんちゃん?サーバルちゃん?ちょっと用事ができたんだ、出掛けるからごはん頼める?」


「わたしに任せて!」


「どうかしたんですか?なにかトラブルなら僕も…」


 ごめんねかばんちゃん?こればかりは君に内緒なんだ?


「ありがとうサーバルちゃん… 大丈夫、かばんちゃんは留守番してて?すぐ戻るから?危ないこともしないし心配いらないよ?」


「ん~でも…」


「不安?」 


「ちょっとだけ…」


 嘘はつけない、でも隠さなければならない… ここは信じてもらうしかない。


「かばんちゃん?きっと後悔はさせない、ちょっと特別な用事なんだ?だから信じて?不安にさせるかもしれないけど」


「かばんちゃん!行かせてあげてよ!シロちゃんのことだからきっとすごく素敵なこと考えてるんだよ!」


「わかりました、温かい物を用意して待ってますね?」


「ありがとう、じゃあ行ってきます!」


 彼女のおでこに軽くキスをして、俺はバギーを走らせた。


 目的地はへいげんちほー。




 姉さんの城だ。

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