第78話 おとなのかいだん
“テュゥーン! KO!”
「バカな!俺のアーマージャガーマンが負けただと!?」
「いつまでもそんな投げ技キャラの対策をとらないとでも思ったの?」クスクス
「あはは… 惜しかったですね?」
お風呂がよよよに占領されている今俺達にできることはゲームだけだ、ゲームで緊張を誤魔化すしかない。
「じゃあ次は僕が相手になりますっ…」
「お願いします先生!」
「誰が来ても同じだよ」
しかしキタキツネちゃんがここまで腕をあげているとは、このままでは罰ゲームになつてしまう… だがその強さこそが君の敗因だ、2対1で構わない?どちらかが勝てばこちらの勝ち?それはうちの先生を前にしても同じことが言えるのかな?その過信が君を罰ゲームへ誘うのだ。
“テュゥーン! KO!”
「そ、そんな… このぼくが!?」
「やりました!」
「やったー!さすがハニー!」
見たかね?これが愛の力だよ?天才ハニーが負けるとでも思ったのかい?無敵に決まってるだろう?
「それじゃあ罰ゲーム!先生、どうしてやりりましょう?ギンギツネさんの尻尾を握るなんてどうかな?」
「なんでギンギツネさんに被害が… そうですね~?あ、そうだ!キタキツネさんにお願いがあります!」
「仕方ない、聞くよ…」
「あの~… お耳と尻尾を触ってみたいのですが?」モジモジ
かなり私的な罰ゲームだな… まったくこの子はモフモフしたものが好きなんだから、でもいいんだ!可愛いから許す!
そんな楽しいゲームとモフモフタイムが過ぎて、やがてカピバラちゃんがホクホクとした顔でお風呂から上がってきた。
ということはだ…。
ギンギツネさんがお風呂を俺達専用にしてくれたのでこれから俺達の時間になるってことだ。
そうだ… 俺たちの… じ、時間に…!
「待たせたわね二人とも?さぁ存分に使って?」
「さ、先に晩御飯にしない?」
「そ、そうですね!お腹が空きましたもんね!」
あのまま流れでいってしまえばよかったのだが、幸か不幸かお風呂は「よよよ~」になっていたので改めて混浴の恥ずかしさを噛み締めることとなった、さぁどうする?時間は刻一刻とせまるばかりだ。
そんな時だが、ギンギツネさんが何か思い出したようポンと手を叩き言ったのだ。
「あ、そーだ!二人ならあれがなんなのかわかるかしら?」
「「あれ?」」
「実際に見たほうが早いわね、こっちよ?」
あれ… とは?
そうして案内されたのはリネン室?のようなところで、布団や枕が沢山置いてある部屋だった、そんな部屋の隅の方に積まれているのが例のあれ、それは…?
「このヒラヒラしたやつと細長い布なんだけど、一緒に置いてあったから一緒に使うのよね?でもなんなのかわからなくて…」
「袖があるから多分服だと思います… でもどんなふうに着たら?」
「へぇ、これは…」
「シロさんわかるんですか?」
これがなにかって?これは所謂あれだろ。
「浴衣だね」
「「ゆかた?」」
浴衣。
和服の一種で、素肌の上に着る略装である。
そもそも“ゆかた”とは“ゆかたびら”の略である。
「温泉だもんね、あって当然か…」
「どうやって着るんですか?」
「あ、えっとね… 」
かばんちゃんをモデルに着方をレクチャー… もちろん服の上からです(今は)。
「腕を通して、右側を下にして、左側を上に重ねるんだよ… それからこの帯をこうグッと… あ、キツくない?」
こ、腰細いなぁ…!?折れてしまいそうだ!くびれに百点。
「いえ、大丈夫ですよ?わぁ… なんだかヒラヒラして落ち着かないですね?」
「いい…」鼻血タラー
浴衣美人だ、これ俺の彼女なんだぜ?
「シロ、鼻血出てるよ?」
「出てないよ」
「出てるわ、ダラダラよ?」
「これは愛だよ、あふれでる愛さ」
「へんなの…」
「これ以上触れないでおきましょう…」
そんな反応の冷たいキツネさんたちも先程のかばんちゃんを見てすぐに覚えて、長い髪がふわりと揺れる浴衣美人姉妹の完成だ。
さすが温泉の管理人、よく似合っております… もちろん服の上からの試着です(今は)。
「こういうとこではお風呂上がりはもとの服でなくこれを着てそのまま寝るんだよ」
「どうしてですか?」
「単に素肌の上に着るのが楽だからじゃないかな?例えば二人みたいにしっかり着込んでるとなんだか窮屈でしょ?」
「そう?」
「気にしたことないね」
ま、所謂寝間着というやつだ。
家にいるときは全裸でないと落ち着かないとかいう人もいるらしいし、楽な服装は利に叶っている。
「ここでは服の概念がすでに微妙だからそのままでも違和感もないかもしれないけど、寝るときって本当はそういう脱ぎ履きしやすい服に着替えるものだよ?実際締め付けるのは帯だけだし楽でしょ?」
「確かに、言われてみればそうですね?シロさんのシャツで生活してたときみたい… あっ…」
「「シロのシャツ?」」
「ま、まぁそれはいいじゃん!?とにかくお風呂上がりはこれを着て、外に出たりするときにまたもとの服を着る、浴衣は寝間着だよ」
セーフ… かばんちゃんが爆弾を投下してくるとはね、彼女は申し訳なさそうに手を合わせて口パクで「ごめんなさい」と言っている。
話が済むとなるほどと温泉管理人の二人も浴衣をもとに戻した、今度はこれらを全部屋に振らなくてはならないね?お洗濯頑張ってくださいギンギツネさん。
「二人ともせっかくだからお風呂上がりはこれを着たらいいんじゃない?」
「そー… だね?まぁ楽だし、かばんちゃんはどう思う?」
「はい、僕もそう思います」
お風呂上がりは浴衣のかばんちゃん… 許せるっ!でも俺はそれを見て許されなくなるかもしれない!どうしよう!
とそれはともかく、温泉がフリーということは…。
「そろそろお風呂… 入ろうか?」
「は、はい…」
混浴の時間がやって参りましたのです。
…
「あの…」
「あはは… うん」
なかなか服を脱げません!そこで俺達が考えたのは背中合わせになりお互い「いい」と言うまで振り向かない方法だ。
でもお約束というのがありまして?
チラッ…
「ッ!?」
あのおしりは完全に誘ってますわ…。
あーヤバイヤバイヤバイ!入ろう!もう走って入る!
「か、かばんちゃん!お先に入りますね!」←全裸ダッシュ
「ふぇ!?は、はい!」
ザバーン…
落ち着け… 落ち着け… タオルは巻いている、大丈夫だ… あとは落ち着くだけだ。
「あ、あの… お待たせしました///」
落ち着けない!←ドバドバ鼻血
そんな彼女はバスタオル一枚で、小ぶりな胸と女性らしい腰のライン… そして秘所を結構ギリギリのラインで隠している。
実にけしからん、もう逆上せてきた。
「お隣… 失礼しますね?」
「は、はい… どうぞ…」
温かい温泉、隣にはバスタオル一枚の最愛の君、触れあう肩。
その手で決して触れてはいけない… 彼女に触れることは!死を意味する!理性パッカーんだ!
本当はタオルを湯に付けるのはルール違反だなんて言えない!
それにしても…。
隣の彼女をそっと見てみると… 鎖骨のラインが大変美しい、肌も綺麗だ、そして胸は小さくても決して無ではない、確かに存在しているんだ。
首筋に滴る汗が色っぽさをだし、あどけなさの残る顔の中に大人の部分を感じさせる、そしてお湯で温まった肌はやや紅潮して色気をさらに引き立て俺の心を掻き乱す。
「「あっ…」」
目が合ってしまった…。
「見てました?」
「はい…」
「そんなにじっと見ないでください… 僕やっぱり自信なくて…」
胸のことまだ気にしてるの?そんなの関係ない、もうヤバイんだって俺。
「で、でもすごく綺麗だから… ごめん、見とれてたんだ」
「本当ですか…?」
「う、うん…」
爆発しそうだよ!落ち着け… 呼吸を整えろ!心臓をリラックスさせろ!
抑え込むのではなく、慣れてみてはどうだ?気にしないようにするんだ。
「ありがとうございます///」ギュウ
気になるッッッ!!!
彼女はこのタイミングで腕に抱きついてきた… 彼女の胸は確かに大きいほうではないがあるものはあるんだ、そしてそれはバスタオルとかいう頼りない布1枚で隔たれているだけでしかも濡れているんだ、伝わるぞ感触!ホワイトオーバードライブ!
「あの…」
「ひゃい!?」
「体… 洗うんですよね?」
「そそそうだね!洗わないとね!」
「逆上せてしまうので、その… そろそろ///」
念願の洗いっこだぞ… ほらどうした?
「か、かばんちゃん先に行ってくれる?」
「あ… えと…」←察し
「うん、えーと…」
「それは僕のせい… ですよね?」
「まぁ… 全面的にかばんちゃんのせいかな、うん… いや、ごめん…」
「いえ!… じゃあ、先に行きますね?」
ごめんね… それにしてもこの状態でバスタオル一枚の女の子の後ろを着いていくなんてマジでヤバイやつだ… 貸しきりでよかった。
しかも彼女、タオルが濡れて体のラインがさらに際立って…。
歩くとき少しおしり振ってるんだよねかばんちゃんって、ねぇそれわざと?誰に習ったの?長はどう思う?
これは誘ってますね?
ですね、発情したメスがオスを求めているときの歩き方なのです←心の長
ホワイトもそう思います、ホワイトのホワイトはもうヤバイことになっててタオルで隠している意味が無いんです、こんな状態で洗いっこなんてしたら俺もう触れただけでホワイトなやつが溢れてしまいそうだよ。←最低
なんて考えている間に洗い場に着いた、彼女は小さなイスに座ると同時に。
ハラリ… とバスタオルをとった…。
どんどん壁が破られていく… 内なる野生が向かってくる。←走るホワイトガンガー
「背中、流してくれますか…?」
少しだけ見えた彼女の顔はうっとりとしていた、そんな紅潮した彼女の顔を見てると恐怖心が性欲に飲まれてしまう
もうこのまま後ろから体を密着させてその控えめな胸を揉みしだき、体の隅々まで石鹸で泡だらけにしてから君の大事なところに手を… いやまて!
よしわかった受けてたってやる!どちらにせよこのあと本番が待っているのだ!ここは耐える!部屋でも絶対優しくする!覚悟だ!意志の強さが結果に繋がる!俺は彼女を守る!俺自身から!
「では失礼します」と俺は優しく背中を洗い流す。
が…。
あなたの背中… とても滑らかな肌をしていますね?白くて綺麗な腰のラインだぁ… ハァハァ。←煩悩爆発
「ん… くすぐったいですよぉ///」
「前もやろうか?ハァハァ」滑らかな手の動き
「ァン!? だ、大丈夫です!じ、じゃあ次はシロさんの背中を!」
ハッ!?と我に返り、俺はものすごいスピードで背中を向けた。
危ないところだった… この童貞を虐殺するシチュエーションで健全な心を守る男でいなくてはならないなんて、なぜこのような苦行に逢わなくてはならないのか?
いやいや苦行だなんてとんでもない、かばんちゃんとお風呂に入れるなんて御褒美だろうが… ちょっとエロいことできなくて生殺しにあっているだけだ。
「シロさんの背中、広いんですね?なんだか頼もしいです」ゴシゴシ
「鍛えるからね~… かばんちゃんの背中は綺麗だったよ?俺我慢するの大変」←ヤケクソ
「もう… そういうの僕だけにしてくださいね?」ゴシゴシ
「約束します、破ったら爪全部剥がしていいから」
「こ、怖いですよぉ!?」
…
やがて、お互いに洗い終わると。
今度は背中合わせに湯に入り他愛のない話でもして過ごした、これなら幾分ましだし彼女とも十分ベタベタできる。
「背中を流してるときに気付いたんですけど、何かの傷跡がありますよね?もしかして崖から落ちた時のものですか?」
傷…?なんだったかな?確かもっと子供のころだったはず。
「いや、違うよ?小さい頃にちょっとね、あんまり覚えてないんだけど」
「小さいころですか… でも不思議です、僕は生まれた時からこの姿で、物心もついてたので」
ほんの少し寂しそうな声を出す彼女の手に自分の手を重ね、励ますとも少し違うが俺はその言葉に自分の言葉を返した
「どう生まれたとか、先のことには関係ないんだよ?ずっと一緒にいよう、それじゃあダメ?」
「…アリガトウゴザイマス///」ブクブク
…
お風呂を上がり浴衣を着る、せっかく馴れてきたのにあんまり色っぽいから俺はムーンウォークで移動することになりそうだ。
彼女の黒髪に浴衣が映える。
綺麗だ、とても…。
濡れた髪も赤く染まる肌もチラリと覗く鎖骨にうなじも、もう全部俺を誘ってるようにしか見えない。
「かばんちゃん?」
「あ、はい?」
「綺麗だよ、似合ってる」
「え~?えへへ///もう…!」
さぁもう少し頑張れよ俺?
そして部屋に戻るといつの間にやら布団が敷かれていた。
ギンさんの仕業、いや仕事だな?まさかと思って両隣の部屋に物音がしないか確認したが大丈夫… ここには本当に俺達しかいない。
「布団がひとつなのに枕が二つ… ですね?」
「狭いからくっつかないとね?」
「はい、あのシロさん…?」
「ん?」
かばんちゃん、なんて顔で俺を見てくるんだい?
俺を見る彼女の目はウルウルと、そして頬は赤々としてとても女性的だった。
そんな彼女が次の瞬間俺に言った。
「僕… 覚悟できてますから…!」
俺もできてる。
というかもうさすがに無理なんだ、女の子にそこまで言われたら恥をかかせる訳にもいかないし。
大丈夫だ、ゆっくりいこう?よく耐えた、恐れることはないぞシロ、ここまで我慢できたならあとは優しく最後までしてやれるさ?
「かばんちゃん…」
「シロさん…」
俺達は布団の上で優しく抱き合い、唇を重ねた。
唇同士が少し触れただけなのに彼女の細い肩はぴくりと跳ね「ん…」という声が甘い吐息と共に漏れる。
ハァ…ハァ… と互いの呼吸が混ざり合う。
唇を離した時、お互い息を荒くして見つめ合うと無言のまま次のキスをねだる。
その時にしたのが前に話した“おもいっきしハードなやつ”だ、始めたのは俺。
自分の舌を彼女の舌に絡み合わせるように口内に侵入させた時、彼女は言葉にならない小さな悲鳴のような声を短くあげていた。
だがやがて彼女も舌を入れてくるようになり、まるでお互いの舌が生き物のように絡み合う。
ペチャリ… ペチャリ… といやらしく湿った音が部屋に鳴り響き、今度は互いの唾液が混ざり合う。
名残惜しそうに口を離すと、唾液が舌から舌へ糸を引き、彼女も俺も先程よりさらに息を荒くし、体にも熱を持つ。
ここまで来たらもう後戻りはできない。
はだけた浴衣から彼女の白い肌が露になり、それを見た俺はさらに体が熱くなる。
「脱がしても… いい?」
「はい…」
許しが出たので俺は手をかけて下ろそうとした。
のだが…。
「あれ…?」
手が、ガタガタと震えているら力が入らない…?
なんだこれ…。
「寒い… ですか?」
「いや…」
「でも震えています」
情けない、ここまでビビりだとは自分に失望した… 潜在的なものか?俺は彼女に嫌われることを恐れるあまり体が震えているんだ。
「ごめんかばんちゃん… ごめん…」
「謝らないで?どうしたんですか?」
ギュウと優しく抱き締めてくれる彼女にすがり付くと涙がでてきた。
俺は恥を忍んで彼女に本心を伝えた、こうなると隠していても仕方がない。
「怖いんだ、かばんちゃんのこと傷つけるかも…」
「大丈夫です… 僕は大丈夫ですから?」
「乱暴にしてしまって君に怖がられたらって思うと… 俺… 俺嫌われたくなくて…」
「シロさん… 聞いてください?」
彼女の胸で情けなく震える俺の頭を優しく撫でながら、彼女は聞かせてくれた。
大丈夫だよって、俺を安心させるために。
「嫌いになったりしないって言ったじゃないですか?」
「うん…」
「信じてください?それに僕、シロさんなら怖くないです!本当ですよ?」
「かばんちゃん…」
その時彼女は薄暗い部屋で自らの帯を緩ませ、はだけた浴衣もそのままハラリと落としてしまった… 白く綺麗な肌が全体的に露となり、全てを俺の前に晒した。
すると、彼女はそんな姿のまま俺の帯も緩めて優しく浴衣を肩から下ろすと。
「ねぇシロさん…?」
彼女は目を潤ませてうっとりした顔で俺に言った。
「きて…?」
頭の中なのか心の中なのか… パンッとなにか弾けとんだ気がした。
その時その言葉で耳と尻尾を隠しきれなくなり、俺はやや強引に舌を絡めながら彼女をまた押し倒した。
そのまま首筋に下り雨のようにキスを浴びせ、気が済むまで愛撫して彼女の体を堪能した。
高鳴る胸と、火照った体… このまま二人で溶けて混ざりあってしまう、そんな気持ちにさえなる。
「シロ… さん?」
「ん…?」
手が休み、また見つめ合った時彼女が息を乱しながらも俺に言ってくれる。
「僕も… そのお耳が好きです、尻尾が好きです、危ないものから守ってくれる爪や牙も大好きです、シロさんのこと全部… 大好き…」
部屋に着いた時、俺が彼女に言ったように彼女も俺にそう言ってくれた。
「ハァ… かばんちゃん?愛してる…」
「僕も愛してますよ?」
彼女はその時、コソッと耳元で俺の“名前”を囁いた…。
そうして一糸纏わぬ姿の俺と彼女は、その晩誰にも邪魔されることなく。
何かを恐れることもなく。
ただただお互いを求め合い。
ついには体を重ね、大人の階段を昇ることとなった。
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