第76話 えむしー
「わぁ…」
「あ、怖くない?」
「大丈夫です!初めて乗ったからなんだか新鮮で」
本日、俺はようやく恋人と呼べる人を後ろに乗せることができたのである。
思い返せばおかしな話だ、始めて乗せたのは確かラッキーか?次はツチノコちゃんとスナネコちゃんと共に三人乗りだ、で次がこれから会いますプリンセスちゃん、でまたツチノコちゃん、そして我が最愛の君かばんちゃんというわけだ、荷車も合わせれば博士達もかな?
右往左往しすぎだろ、いい加減にしろよ。
だから八方美人と呼ばれるんだよ、プリンセスちゃんの件がいい例だぞ。
それはさておき。
みずべちほーのライブ会場、今日も今日とてライブで賑わいをみせている。
まだ始まるには早いのにフレンズ達が続々と集まっているようだ、PPPの皆さんはリハの最中かな?
俺たちは早速楽屋に回り込み耳を澄ますと談笑のような物が聞こえてきた、恐らくリラックスタイム… 顔出しなら今チャンスだ。
「準備はいい?」
「は、はい!」
緊張してるね… 俺も平静は装ってるが二人きりなことに緊張している、しっかりしないと… こういう時ら男がリードするものだと聞いたことがある。
コンコン
「おはよーございまーす!ご挨拶に伺いましたシr ブッ!?」バンッ!
「ようこそいらっしゃいましたシロさん!お待ちしておりました!」
痛い… ドア… マーゲイさんのバカ!せっかくリードして頼れる男を演出する予定だったのに!
「し、シロさん大丈夫ですか!?」
「イタタ… マーゲイさん勢いよく開けすぎだよ!」
「あ、あははは!ごめんなさい!今日はやんだか気合い入っちゃって… さぁ中へどうぞ!」
…
中に入るなり俺達が受けたものそれは。
\二人ともおめでとー!/
「え!?」「わぁ!?」
PPPからのお祝いの言葉だった。
アイドルが直々にお祝いを頂くとは名誉でございます、鼻痛いけど。
「ようやく収まるとこに収まったわね!シロ!」
「フルルだったりプリンセスだったり、フラフラしていたのにな」
「今日は二人のために最高にロックなライブにするぜ!」
「ちょっとしたサプライズも用意してるんですよ?」
「シロー今日のご飯はー?」
各々一人ずつからも祝福を頂いた、どうやらチケットを作る上で博士達からの根回しがあったようだ。
「ありがとうみんな、あとご飯はごめん今日はないんだ」
「ありがとうございます!でもあの… ひとつ聞いてもいいですか?」
とキョトンとした顔も可愛いかばんちゃんが手を挙げてPPPの皆さんにある質問を投げ掛けた、気になることは聞けるうちに聞こう。
「シロさんがフラフラしてたというのはどういう意味ですか?」
やっぱり聞かないでください。
BGM ~セルリアンのテーマ~
あ~スルーされなかったか~!マジやらかしたわコウテイちゃん、かばんちゃん頼むからその獲物を見つけたセルリアンのような目をしないでくれ。
「か、かばんちゃ~ん?それはほんの情報の行き違いでね?」←焦り
「はい… それでコウテイさん?どういうことなんですか?」獲物を見つけたry
「あ… えと…」←気絶寸前
彼女は俺が割って入ろうとするとまるで黙っとけと言うように手のひらを見せてきた、コウテイちゃん頼む… 頑張って正気を保って無実を証明してくれ!無理か!
「ほ、ほら!博士達が勝手に勘違いしたのよね!それでフルルとくっつけろとか私達に言ってきて!」
「そー!そーですよ!あの時シロさんの怒った顔怖かったですよ~!」
「ホットケーキ美味しかったよー?」
「なんだ~ビックリしました!」ニッコリ
ふぅ… なんとか切り抜けたな?だから誤解だと言っt
BGM ~セルリアンのテーマ~
「じゃあプリンセスさんとは何があったんですか?」獲物をry
「か、かばんちゃん?それも情報の行き違いで…」
「はい… プリンセスさんどうしたんですか?教えてください?」
クッ!まるで釈迦の手のひらのようだ!俺の手の中にすっぽりと収まるはずなのに俺よりでかく見えてくる!プリンセスちゃん!ビシッと言ってやってくれ!
「ひぃえぇ!?あ、あれはほら!私がバギーに乗ってみたいって言ったらシロが後ろに乗せてくれたのよ!?それだけだから!本当にそれだけだから!」
「そそそそうだ!みずべちほーのみんなに誤解されたからキシャカイケンしたんだぜ!」
「そうなんですかぁ… 大変でしたね?ダメですよシロさん?アイドルに迷惑かけちゃ?」
「あーははは… はい、気を付けます…」
こんな風に奥さんに頭が上がらなくなってくのかぁ、おぉ怖い怖い… でもそれもヤキモチだと思うとなんか可愛いよね?俺病気みたい… 病名は恋煩いさ!キラッ
「ビックリした… かばんってあんな顔するのね?」
「ブリザードのように冷たい目をしていた…」
こら!女の子やぞ!いつもはキラキラした純粋無垢な目で見てくれるんだ!
…
という小さなハプニングにもめげず、マーゲイさんは俺たちを案内、これがVIP席?いやこれはさすがにキツいだろ。
だってこの真ん中の通路みたいなとこによさげな椅子置いてあるだけじゃん!客席じゃない!ここは最早ステージだ!PPPのみんなも真正面に人がいたらやりにくいだろ!
「あはは… なんかこれ、恥ずかしいですね?」
「普通の席でよかったのにね?まぁでも、案内されたからには使うしかないかぁ…」
こんなところにいてPPPガチ勢に暴行を加えられないだろうか?みんなの目が痛い!早くライブ始めて!
「みんな今日も来てくれてありがとう!」
\ワー!ワー!/
大歓声だ。
最早彼女達も伝説となったということだろう、初代PPPがどれ程のものか知らないが、概念すら消えていたパークでアイドルを復活させたんだ、十分すごいじゃないか?そんな伝説のアイドル達に祝ってもらえるなんて幸先のいいカップルだよ俺達は
「…~///」ガチガチ
隣を見るとライブどころじゃなくガチガチに緊張しているかばんちゃんがいた、君がライブするんじゃないだろうに。
でもこう落ち着かないと確かに緊張もするか?よし… ここで頼れる男を挽回しよう。
ギュ…
「ぇ!? シロさん?」
手を握ってみた、その時分かったが少し震えているようだった。
「大丈夫だよ、俺が付いてるから?」
「はい…///」ウットリ
お、震えが止まったね?大成功だ、俺頼れるぅ~?
俺も彼女に集中すればそんなに周りの目も気にならない、では歌っていただきましょう… PPPで。
「それじゃいくわよ!大空ドリーマー!」
\キャー!/ \ワーイ!/
曲が始まると更なる大歓声が、かばんちゃんも思わず体を動かしているようだ、たまに目が合うとニコッとしてくれるし耳を澄ますと鼻歌が聞こえる、楽しんでくれているなら何よりだ。
…
そうしてやがて曲が終わると、所謂MC?ライブトークのような物を挟むメンバー達、そんな会話の中でふとメンバー達が全員こちらに目を向けてニッと笑った。
何か始まるのかな?
「来てくれたみんな!実はとっても素敵なことがあったから聞いて!」
「私達の大事な友達が二人、想いを伝え合ってツガイになったんだ」
「二人ともパークに欠かせない超有名人だぜ!」
「一人は困ってる子をいつも助けてくれる優しい帽子の女の子です!」
「もう一人は美味しいご飯をたくさん作ってくれる優しい男の子だよー」
俺達は互いに顔を見合わせてキョトンとした、これはひょっとしなくても俺達のことではないかね?するってーとつまりサプライズってのは~?
「かばんにシロ!さぁステージに上がって!」
「「えぇ!?」」
思わず他人事のようにキョロキョロ周囲を見渡してしまった。
「みんなに見せつけてやれよ!」
「二人の幸せはみんなの幸せだ!」
「パークで唯一無二のカップルですから!」
「ご飯とおんなじだよー?分け合おうよー!」
もう上がってます!
というのはもちろん言わないが…。
手を差しのべられている、かばんちゃんも呆気にとられてどうしたらいいかわからない感じになっているようだ。
でも、ここで断るわけにはいかないよね!
「行こうかばんちゃん!」
「あ、は…はい!」
俺は彼女の手を引いて小走りでPPPの元へ駆け寄った。
「おめでとう二人とも!みんなもお祝いしてあげて!」
\オメデトー!/ \ステキヨー!/
大きな拍手と祝福が俺達を包む。
先程までPPPのためにあった歓声が俺達二人に向けられ拍手喝采となっているなんて、島のみんなからの祝福か…。
この時「俺たちのことみんなに認められたんだな~…」とそんな気持ちになって嬉しくて仕方なかった。
俺ってちゃんとパークの住人なんだなって。
「僕たちまでステージに上がるなんて…」
「まぁいいじゃない?二人でする旅の最初の思い出に…ね?」
「エヘヘ… はい!」
なんてイチャイチャやってるとMCが再開された、プリンセスちゃんが俺たちに簡単なインタビューをしてくる。
「まったく熱々ね二人とも!そんな二人に話を聞きたいわ!ずばり!お互いのどんなとこが好き?」
客席はキャーキャーと騒ぎ立てている、やっぱり女の子は女の子なんだなみんな、こういうの好きなんだろう。
「まずはシロから!」
彼女の魅力を語ればいいのだろう?任せなさい、得意なんだ。
「優しいとこも怖がりなとこも真面目なとこも全部好きだよ、可愛いし?でも一番はやっぱり俺のこと好きでいてくれるところかな?なんて…///」キラッ☆
\キャーキャー!/
隠したりしないぜ?これが愛だ。ドヤァ
「ひゅー!やるなシロー!」
「聞いてるこっちが恥ずかしいですよぉ~///」
「よかったね、女冥利に尽きるじゃないかかばん!」
「そういうの~ノロケって言うんだよね?」
いや~しかし照れますなぁ…///
かばんちゃんは恥ずかしすぎて後ろに隠れてしまったこれもひたすら俺にとっては可愛いだけだ。
ひたすらに愛しいのです… 愛し君よ…。
「じゃあ次はかばん!恥ずかしがってないで答えてね!彼の想いに答えてあげて!」
そんなプリンセスちゃんの質問があったので彼女を前に出そうとするのだが、マイクから逃げるようにまた俺の後ろに隠れてしまう
仕方ないなぁ… と俺はマイクを借りると彼女に手渡しその逃げ道を塞いだ。
「かばんちゃんの気持ち、俺に聞かせてくれる?」
「あのあのあの!ぼぼぼぼ僕は…!僕も…///えとぉ…あのあのあの///」ガチガチ
緊張しすぎてとんでもないことになっている…。
放送事故ですよこれは、でも可愛い!許せるっ!みんな許してくれ!
そう思ってると話してもいないのになぜかかばんちゃんの声がステージに響き渡った。
『シロさんの全部が好きでぇす!嫌いなとこなんてないですよぉ~!』カバンボイス
\キャーキャー!/
「えぇ!?今のは僕じゃ!?なんでぇ!?」
え!なんで?あ、あぁ…!? ステージの端にマーゲイさんが!?あれが例の声まねか!?スゲー!今度博士の声で「筋肉は裏切らないのです!」とか言ってもらおう!
『なんだよハニー…愛してるぜ?』シロボイス
『やだダーリンったら…今夜はメチャクチャにして?』カバンボイス
『もとからそのつもりだぜ?』シロボイス
『やん///ダーリンのえっち…』カバンボイス
「待て待て!俺なにも言ってない!」
「僕じゃないですからぁ!?今の僕じゃないですからぁ!///」
おい!誰かあの変態メガネを止めろ!
「そ、そう!なによまったくイチャイチャして!そんな二人もよかったら次の曲歌っていかない?」(今のはマーゲイの仕業ね…)
「むむむ無理ですよぉ!?」(助かりました…)
「それはさすがにプロに任せるよ…」(さすがプリペンさんですよ…)
「しょーがないな!許してやるよ!」
「それじゃあ次の歌も二人に捧げよう、是非聞いてくれ!」
「「ようこそジャパリパークヘ!」」
\ワァー!!ワァー!!/
プリンセスちゃんの名司会によりなんとか危機は脱した、あとであの変態マネージャーにはとびきり長いお説教が必要だ、短めにするかどうかは反省具合で決める。
…
ライブ後。
「ではマネージャーさん、先程の件に付いてお話が」
「あれはその… かばんさんが困ってたから助け船のつもりで」
「俺の声が聞こえましたが?」
「えっと… やってみると楽しくてつい…」
申し訳なさそうにしている、だから俺はそんなマーゲイさんの頭にポンと手を置いた。
「あの、これは?」
「メチャクチャにしてほしいって?」
「は!?いけませんよシロさん!あなたにはかばさんという大事な… あぁぁぁあ!?痛い痛い痛い!?」ギリギリギリ
俺の心!かばんちゃんの心!大切な心ために… 頭を締め付ける男!
「シロさん!」
「ホ!いつのまに!?」マーゲイ解放
「助かった…」
「その辺にしてくださいね?マーゲイさんも悪気があったわけじゃ… 無い… と思います多分」
自信無さげじゃないか、いやあれは悪意あると思いますよ?吐き気催す邪悪なる意思を感じましたね。
「無いです無いです!ぜんぜんそんなつもりじゃ!」
本当かよ…。←疑心暗鬼
「まったくあんな戯けたアフレコをしてくれるとは… 公衆の面前で“メチャクチャにして”はやりすぎだよ!」
「ご、ごめんなさーい!」
説教が済むと俺たちはメンバーに丁寧にお礼を言ってその場を後にした。
さーてお次はゆきやまちほーだ、問題のペア宿泊券が火を吹くぜ。
がそこに… 我々のラブロードを止める者がいる。
「ちょいと待たれい若き獅子よ!」
「誰だ貴様は!」←知ってる
「地獄からの使syじゃないよ!まったく… 幸せそうじゃないか?自分の気持ちに正直になれたようだねぇ?しっしっしっし!」
「あ、ジャイアントさん?お久しぶりです」
「かばん、お前も幸せそうで何よりだよ?」
二人は顔見知りか、一応お礼を言っとくべきかな?でもあんとき辛くなったのって半分この人のせいなんだよなぁ… まぁいいか
「ありがとう先輩、おかげでこういう結果に収まったよ?二人して辛い想いしたけど」
「まぁ礼には及ばないよ?へいげんちほーでもお前らのことを話しといたぞ?姉ちゃんになにか言われたろ?」
「オマエの仕業ダタノカ?」
「ん?」
この人本当に神出鬼没だな、余計なこと言って姉さんまで悩ませちゃったじゃないか?
やれやれ… いや元はと言えば俺が原因か?
仕方ない 許してやろう ペンギギス←シロ川柳
「これからゆきやまちほーかい?」
「はい、温泉宿に泊まろうかと」
「女はあまり体を冷やすもんじゃないよ?おい小僧!嫁さんがが薄着なのにお前だけ着込んで何様だ!しっかり温めてやるんだよ!」
む… 確かに。
かばんちゃん常時半袖なんだよな。
「それもそうだ… かばんちゃん?雪山で半袖はさすがに自殺行為だよ、とりあえずこれ着ててね?」
でも彼女、前にサーバルちゃんとそのままの服で行ったんだってね?
人間、辛抱だぜ!ってことかな?
「ありがとうございます、でもそれじゃあシロさんが…」
「俺は大丈夫だよ、ホワイトライオンは雪に強いから」
「んん?お前さんはフレンズの服を再生させればいいだろう?ホワイトライオンの服をな」
「えっ…と」
なにそれ?俺知らない… みんなは生まれたときから服があるから分かる、それも体の一部みたいなものだから再生する。
現に地下室の件でかばんちゃんの服を破り捨てた時も数日後に同じ服で彼女ほ現れた。
ただ、それは俺にも適用されるの?
「できないのかい?けものプラズムで服を作り出すんだよ?みんな無意識でやってるけど、その気になれば任意で生み出せるはずだ」
「「けものプラズム?」」
「私達の服や体を構成するエネルギーみたいなもんさ?体内のサンドスターがもとで発生しているんだ… 詳しいことは知らんがね」
なにもんなんだよこの人…。
というと、そうか。
師匠の槍もそうか?手元を離れてるのに形が残ってる… 槍は師匠のけものブラズムでできてるのか。
たまに持ってなかったり持ってたりしてどこに置いてあるのかと思ってたけど、もしかして自分の意思で出し入れが可能なの?便利かよ!
「わかったらやってみな?」
「どうやるの?」
「お前の場合特殊だから、出てこい出てこい!って念じればでるかもね?しっしっしっし!」
よしやってみよう… 野生解放して…。
出てこい!俺のけものブラズム!温かい服!カッコいいやつ!カッコいいやつ!センス最高なやつ!
「あ!シロさん!」
「ん?おぉ… 真っ白い上着?」
見覚えがある、ファーがあって博士の服と似てるかな?でも違う… これは母さんがよく着てたものと同じだ少し丈が短いかな?まぁメンズとレディースの違いだろう、なるほど便利プラズムだ。
「ほぉ~?本当にできたのかい?」
「え!適当に言ってたの?」
「お前は半分ヒトたからねぇ?半信半疑だったよ?でも意識しないと出せないみたいだねぇ?まぁこれでよかったじゃないか?気を付けろよ~?女難の相はまだ消えてないぞ~?しっしっしっし!」
プラプラと手を振り去っていく
くっ!あの人はイマイチ掴みきれない!女難の相はマジ勘弁なんですが。
「やっぱり、似合いますね?」
「なんだか落ち着かないよ」
「似合ってます!カッコいいですよ?」
「そ、そう?ありがとう///」
でもやっぱり落ち着かないので白コートをかばんちゃんに着せることにした。
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