第75話 ふたり

「じゃあ二人とも、明日からまたご飯作るからよろしくね?」


「待つのです」

「シロにかばん、お前たちにはお祝いの品を用意しているのです」


「「お祝い?」」


 ご祝儀のような物だろうか?もっとも結婚したわけではないのだが… あ、結婚と言えば?

 まったく話しは変わるが赤ちゃんの前に結婚だよね?順序は守ろうぜロックンロール!


「これです」

「ありがたく受けとるのです!」


「あ、これって?」


 長方形の… 紙?なんだかカラフルだけどこれは何?


「かばんちゃん知ってるの?」


「PPPのプラチナチケットですよ?握手つきでレッスンも見学できるって」


「その通りです、ですがそれにはライブ以外の特典を付けてあるのです!」

「我々が特別に用意したのです」


 ひゅー?粋なことするねぇ長?見直したよ?サンキューでーす!


「へぇ~?ありがとう!でもなんで?せっかく帰ってきたのにいいの?」


「島中のフレンズに挨拶しているのでしょう?なら、行っておくべきですよ」

「しかし考えましたねかばん?それはよい浮気防止に繋がるのです」


 浮気なんかしないよ!


 しかし特典とはなんだろうか?言っとくがヒーローショーはしないぞ、今彼女で手一杯なんだ。


「あの、特典?って何があるんですか?」


「よくぞ聞きました!」

「よく聞くのです!」


 長がくれた… 話題騒然、PPP スーパープラチナチケット!その内容は?


「ライブはもちろんVIP席を用意」

「握手、練習見学、ステージに上がることも可能です」


「いや、見るだけでいいかな」

「あはは…」


「ここで終わり… と思うでしょう?」

「肝心なのはここからです」


 これ以上PPPにどんな特典を?あんまりワガママ言ったらダメだよみんな大変じゃないか?


「このチケットはそのまま温泉宿のペア宿泊券になっているのです!」

「なんと混浴付き、つまりハネムーンというやつです」


 な、なんだってー!?←期待大


 ていうかハネムーンなんて言葉どこで覚えたんだ!最高なんですけど!ですけどですけど!


「こここ混浴って…!?」


「そうですよかばん?その晩は覚悟しておくのです」

「シロ、おまえも男なら一発きめてくるのですよ?」


「任務了解…」


「…~!?///」


 フッ… 余計なことを。


 順序は守ろ… いや行き着く先は同じだしいいんじゃないかなぁ?←熱い手のひら返しをする性獣


 ところで別に宿泊は手ぶらでもできたはずだが?キツネちゃん達が何か特別なサービスでも用意してくれるのかな?いや特別ってへんな意味じゃなくてね?


「「それともうひとつ!」」


「まだあるの?」


「そうです、へたれのお前のためにわざわざ用意したのです」

「それに女の子はデリケートなので、いくらお前が荒ぶる性欲の権化でも手を出してはならないタイミングがあります」


「心外だよ!」


 しかし、心の奥底にそれを否定できない自分がいる。

 それに二人の言う通り失敗は尾を引くぞ、何か打開策があるのなら教えてください!


「そんなタイミングを逃してしまったときのための手としてもうひとつです」

「もちろんフル活用しても構わないのです」


「ほう?」←察し


 そのもうひとつとはなんなのか?話の流れからして大体察しはついた、なぜなら雪山を過ぎるとあれがあるからだ。


「あのぉ?もうひとつというのは…?」


「ロッジのツガイ専用部屋“なかよし”のペア宿泊券です」

「名付けて…」


「「愛のドキドキハネムーンプラチナチケットです!」」


 なんだそのハネムーンベイビーに期待込めまくりなチケットは!かばんちゃんも恥ずかしくて顔を隠してしまったじゃないか!


 ちなみに(まだ)結婚してない!

 

 これ、単純に二度ほどチャンスがあるということだよ?しかも上手くいけば2回ともその… へへぇッ!←けだもの♪


 とんでもないもん用意してくれたな?まったく!ありがとうございます!

 


 でも…。

 


 ダメだよ、ペアで行くわけにはいかない。


「ペアということは二人で行くことになる」


「そうです」

「当たり前でしょう?」


 それはダメだ、そんなこといくら俺とかばんちゃんが愛し合っていてもまだできない。


「サーバルちゃんはどうするのさ?せっかくここまで着いてきてくれたのに」


「できれば僕もサーバルちゃんに来てほしいです」


「なんてことですか、シロお前…」

「二人同時に相手をするというのですか!けしからんのです!」


「一旦夜の話から離れようか?」


 ペアなら行くことはできない、サーバルちゃんのまっすぐなとこに助けられたことも少なくない今回の旅だ、置いていくことはできない。


「なになに?わたしがどうかした?」


 その時本人が自分の名前を聞いてこちらまで駆け寄ってきた、大分気まずいが心配はいらない… 本来俺こそが部外者、俺が仲の良い二人の間に入ってしまったのだから。


「サーバルちゃん?いや実はここより向こうのみずべちほーのほうにも挨拶に行こうと思ってるんだ、いいかな?」


「あ、そうだよね!PPPのみんなも雪山のキツネたちもロッジのみんなにも教えてあげないとね!」


 この子といると元気になるな、かばんちゃんには彼女が必要だ… 俺よりもずっと必要だと思うんだが。


 博士達は納得いかない様子。


「サーバルちゃん?でも今日はもう遅いから図書館に泊めてもらって明日から行こうね?」


「うん!だけどかばんちゃん…?」


「…?どうかした?」


「ううん!なんでもないよ!またライブが見れるの?楽しみだねかばんちゃん!」


 決まり、ハネムーンは無しだ。


 まぁ二人の時間というのももちろんほしいのだけど、別にサーバルちゃんを疎ましく思ったことはない。

 今回の旅に限ったことではなく、俺が難しく考えているとサーバルちゃんがよく「大丈夫だよ!」と自信をつけてくれたものだ、かばんちゃんもこれに何度も助けられたと言っていた。


 二人は親友以上になにか… 表現しにくいがでもきっとどちらかが男の子ならそういう関係になっていたはずだ、でないとしても俺が存在してなければ来年辺りに尊いことになっていた可能性すらあるんだ。


 やっぱり俺って相応しくないんじゃ?


 いや、やめとこう… 結果が出ている以上過程に疑問を持っても仕方がないことだ。


 なるようにしかならない、ここに住んでから俺は今幸せだもの、彼女までできて文句なしの満足だ。


「いいのですかシロ?」

「ほんの数日の話ではないですか?」


「いいって、そんなに無理してその… 子作りを急かさないでよね?お互いにタイミングってものがあるんだよ?てか結婚してないし」


  そうだよ、俺達はまだ付き合って何日も経っていないんだ。

 急いては事を仕損じるってオオカミ先生が言ってた。


「もしサーバルに残ることを言いにくいのなら我々が代わりに…」


「やめてよそんなんじゃないって!とにかくそのペア宿泊券とかはいいから、ほら… 機会があればそれこそハネムーンに使わせてもらうよ?」


「わかったのです」

「ではこれは然るべきタイミングのときまで保管しておきましょう」


 その日は夕食の後、そのまま就寝となった。


 俺は久しぶりの自分の寝床に一人眠ることとなり、他のアライさんたち含むみ為さんはバスへ… 女の子がいっぱいのバスで俺も一緒に寝るわけにいかないからね。


 慣れた枕はグッスリ眠れるものかなーと思っていたんだけど、残念ながら寝付きが悪いようだ、目が冴えている。


 ここ数日いつも見えるところにかばんちゃんがいたせいか、一人の夜というのがどこか不安になっているようだ。


 例えるならそう… 寝る前までは母親がトントンと寝かしつけてくれていたのに、ふと目を覚ますと隣にいたはずの母親がいない、不安になった子供はたまらず泣き出してしまうような。


 尤も俺は泣くほど不安なわけではない、彼女がバスにいることも知ってるしなにも言わずに帰るような子ではない。

 ただ、手の届かないとこにいると思うとありもしない不安にかられてしまうのだ。


 かばんちゃんは独占欲というのに偉く悩んだようだが、どうやら俺も少しコントロールが下手らしい。


 むぅ… 気になるなぁ?こそっと顔を見に行こうかな?


 いやダメだ、そんな夜這いのようなマネ。


 でも…。


「水… 飲もうかな…」


 そうだ、その後少し散歩でもしよう。




 

 冷たい水が喉を通り、全身に染み渡っていくような感覚を感じた。


 さぁ… 少し歩こう。


 そんなことを言いつつも、俺の足はバスに向かっていた。

 すぐそこだ、ここからでもよく見える。


 一回だけ、一回寝顔を見れば安心すると思うから… だからこっそり窓から覗きこんでそれだけだ。


 そう思いバスに向かうと。


「あ、あれ?サーバルちゃん?」


「シロちゃん?どうしたの?もう真夜中だよ?」


 バスに寄りかかり一人佇むサーバルちゃんが待ち構えていた、まさか俺の下心が読まれて!?


「あぁいやちょっと眠れなくて… サーバルちゃんは?」


「わ、わたしはほら!夜行性だから!」


 変だな… 夜行性なのは知ってるがかばんちゃんと過ごすうちに夜は寝るようになってたはず。


 妙だな… 彼女にしては変に複雑そうな顔をしている。


「少し散歩するけど、サーバルちゃんもくる?」


「え~っとぉ…」


「眠れないんでしょ?」


「え、えー!?なんでわかったの!?」


 いや、そんなあからさまに悩んでますって顔をしてたらなぁ…。


「顔に書いてあるよ~?」


「そっかぁ… 今度からちゃんと顔を洗うようにするよ?」


 いや、比喩なんだけどね?まぁでも、彼女のこういうとこが魅力だよ。


 結局二人で夜のしんりんちほーを歩くことにした、言っておくが断じて浮気じゃない。


 かばんちゃんほど近い距離で歩くでもない、俺が少し前を歩きサーバルちゃんがトボトボと着いてくる。

 

 ふと彼女から俺に聞くのだ、沈黙が嫌だったのかもしれない。


「シロちゃんはパークに来てどれくらいになるの?」


「もう一年くらいたったかなぁ?もっとかなぁ?いろいろあったなぁ… ここに来る前も来てからも」


「そうなんだぁ… 大変だったんだね?いつかは自分の故郷に帰るの?」



 冗談やめてくれよ… なんであんなとこ。

 その質問は少し嫌な気分になってしまった、彼女は何も悪くないのに。

 

「いや、そのつもりはないんだ… 俺はヒトの世界よりここのが合ってるみたいだから」


「よかったー!かばんちゃんはシロちゃんが大好きだから、いなくなったらどうしようかと思ったよ!」


「そうだね、どちらにせよ彼女を置いてはいけない… 俺も離れたくないし」


 サーバルちゃんは自分のことは二の次でかばんちゃんのことを考えているのか、俺は彼女のようにかばんちゃんを気づかってやれるだろうか?

 勝ち負けではないが、俺も負けないようにしないといけない、彼女は手本だ。


 だが今は…。


「それで、何か悩んでるなら俺に話してみない?言えないことならいいんだけど」


「えっと… なんでもないよ?」


「さすがにそんな辛そうな顔でなんでもないは通用しないよ?言いたくないなら無理に話さなくていいけど、朝起きた時君がいないとかばんちゃんが不安がるだろうから、ちゃんとバスに戻ろうね?」


 君は嘘が下手だよな…?俺もだけど、君はもっとそうだ。


「うみゃぁ… かばんちゃんもシロちゃんもどーしてそういうのすぐにわかるの?」


「ヒトって生き物は周りの目を気にして生きてるんだよ?みんな一人にならないように顔色を伺って生きてるから、そういうの得意なのかもね?」


 そうさ… 群れにいるはずなのに孤独なヒトもいるんだ、馴染めずに苦しむヒトがいることもあるんだ。


 だから怯えて人の顔色ばっかり伺っちゃう人もいる。


「だからサーバルちゃんもなにか気にして言いにくいのかもしれないけど、別に気にすることないよ?みんな仲間じゃないか?」


 俺がこう言うとかなり言いにくそうだった、だが彼女は答えた。

 ここにきてそう感じたのか、それとも三人で行動し始めた時からそうなのか… それはわからない、だが。


「あのねシロちゃん… かばんちゃんのことは好き?」


「もちろん、こんなに一人の女性を好きになったことはないってくらいね」


「うん、見てたら分かるよ?かばんちゃんもシロちゃんがすごく好きなのわかるもん!」


 最早周知の事実、わざわざ確認するほどのことだろうか?あれだけ苦労したのだ、絆はより強固となる。


「サーバルちゃんに怒られないように、オレも悲しませないように頑張るよ?」


「そうじゃなくて! …なんか、わたしは二人の邪魔になってるんじゃないかな…って」


 これこそが彼女の心の悩みだった。


 俺達二人の姿を見たとき、彼女は疎外感を感じたのかもしれない、ずっと気にしていたのか… あるいは博士達の仕業か?それとも話を聞いていた?


 でも、彼女の言ってることは違う。


「そんなことないよ?もし邪魔になっているとしたら、それは俺のほうだよ」


「え、どうして!?」


「君はずっと彼女のそばにいた、辛いことも楽しいことも分けあってきた… 彼女は言っていたよ?何度も君に助けてもらったって、今さら君のいない生活なんて考えられないんだと思う、でもそこにポンと現れたのが俺さ?ごめんね?間に割って入ったのは俺なんだよ?」


「そんなことないよ!」


 そうだ、俺こそが邪魔者。

 本当なら君たち二人はサバンナにいて、気が向いたらバスを走らせて誰かに会って… そんな生活をしてたはずだ。


 ただ、サーバルちゃんならそう言うだろう、それはわかってた。

 こういう無条件の優しさに救われてきたんだ、かばんちゃんも…。


「だって!わたしもシロちゃんといると楽しいし!嬉しそうなかばんちゃんが見れるからもっと楽しくなるもん!」


「そこまでわかってるなら大丈夫、どういうことかと言うと… 俺から見た君は君から見た俺なんだよ?」


「ん~…」


「難しかった?えーっとつまり…」


 俺もサーバルちゃんがいると楽しいよ、まぁ好きだ、多分彼女を嫌う子はそういない。


 そしてサーバルちゃんと話すかばんちゃんは本当に楽しそうに飾らないで笑ってくれるんだ。


 俺の時はまだ気を使った感じがするが… できたての彼氏なんて素で話せる親友と比べればそれだけの差があるってことだろう、いや頑張りますけど。


「だから、俺もサーバルちゃんと楽しそうにしてるかばんちゃんを見てると幸せってことだよ?」


「でも、二人きりになりたいこととかないの?」


「あるけど… これからずっといっしょにいるつもりだから、その時はちょっとだけ借りるね?」


 こんなんでサーバルちゃんの悩みが消えるといいんだけど…。

 最後に俺は「だからこれからも彼女をよろしく」と伝えたんだ、するとサーバルちゃんは胸のつっかえがとれたのか突然泣き出してしまった


「わたしも… わたしも一緒にいていいの…?グスン」


「サーバルちゃんが嫌がっても、俺とかばんちゃんは引き止めるよ?」


「うぇーん!嫌がらないよぉ~!」


 しまった… また女の子泣かしちゃった。

 

 こういうときは軽く抱き締めて頭を撫でるのがいいかな?姉さんの時もそうだったし。


 いや浮気じゃないから。


 だって放っておけないよこんなに泣いてたら…。


「よしよし… 落ち着いたら戻ろうね?かばんちゃん心配してるかもしれないから」


「うん… グスン」

 

 意外と気にするタイプなのかな?でも大丈夫、俺達は君を一人にはさせない。





 バスに戻ると先程と変わらずみんなが眠っていた、泣きつかれたサーバルちゃんもウトウトしていたので一言「おやすみ」と伝えるとすぐに俺も部屋に戻った。


「シロ、優男ですね?」

「そうですよシロ?大概にするのです」


「うぇ!?起きてたの?」


「「フクロウなので」」


 なんだ、昼間も起きてるクセに…。


「だって、あんな顔して悩んでたら話くらい聞いてあげたいじゃない?」


「まったく、それが八方美人なのです」

「ツガイのメスを守るのがオスの仕事ですよ?よそのメスにちょっかい出してる暇はないのです」


 だから出してないって…り

 でもまぁそうだね、気を付けます。





 バスの中。


「ん… サーバルちゃん?眠れないの?」


「あ、かばんちゃん起こしちゃった?大丈夫だよ?… あの、ねぇかばんちゃん?」


「なぁに?」


「くっついて寝てもいい?」


「ふふっ…いいよ?おいで?」


「うみゃぁ、かばんちゃん大好きぃ!」ギュウ


 かばんはサーバルと離れるつもりはないし、サーバルもまた同様である。


 

  



 翌朝… 俺達は次のちほーを目指すために荷づくりを済ます、朝食がてら再度ご飯の炊き方をアライさんにレクチャーして準備ができたら出発だ。


「それじゃアライさん、フェネックちゃんと協力すればもっと美味しいご飯が作れるはずだから、できるね?」


「はいよー」


「お任せなのだ!シロさんは安心してかばんさんとよろしくやってくるのだ!」


 こら、誰だアライさんに変なこと教えたやつは。


「じゃあいってきます!数日で戻りますね?行こうサーバルちゃん?」


 バスに乗り、サーバルちゃんも乗り込むようにそう声を掛けた彼女、しかしその返事は…。


「かばんちゃん!わたしやっぱりここに残るよ!」


「え…!?どうして?来てくれないの?」


 かばんちゃんが不安そうな声をだした、サーバルちゃん、なぜそんなことを?


「かばんちゃん!わたし達ずっとずっと一緒だよ!でもシロちゃんとももっと一緒にいてあげてよ!」


「サーバルちゃん、もしかして気にしてるの?僕はそんなこと気にしないよ?シロさんだって…」


「わたしはずーっとかばんちゃんの隣にいたから!今日からシロちゃんに独り占めさせてあげたくて!大丈夫だよ!ほんの2、3日だから!」


「サーバルちゃん…」


 結局気を使わせたっていうのか?でもダメだ、お心遣いは嬉しいが止めないと。


「サーバルちゃん、せっかくここまで来たんだ、行こうよ?」


「ダメだよ!博士達だってヤボって言ってたもん!たからシロちゃん!かばんちゃんを絶対連れて帰ってきてね?」


 博士達何か言ったのか?目を向けて見たが二人もキョトンとしている、恐らくこれはサーバルちゃん個人の意志… だったら踏みにじる訳にはいかない、そうだろ?


「わかった… 君の代わりに彼女を守るよ、必ず帰るからね?」


「シロさん!」


「かばんちゃん?彼女の目を見て?きっと一歩も譲らないよ?親友の気持ちを無下にしてはいけない、それとも… 俺と二人きりはイヤ?」


「そんなこと… 全然ないですけど…」


「じゃあ、来てくれる?」


「あの、はい…」


 彼女達は抱き合うと「ありがとう」と言い合った… 二人が旅を始めてから初めて離れるのだ、身を裂かれるような気持ちに違いない。


「ならばシロ、これが必要になりましたね?」

「受けとるのです」


「そうするよ、こうなったら最高のハネムーンにしてくる」


 チケットを受けとると俺達は旅路に着く、ここからは正真正銘二人旅、しかも長からビシッと決めてこいとのことだ。


 かばんちゃんの希望で移動をバギーに変えることにした、バスはサーバルちゃんと一緒に図書館でお留守番だ。


「じゃあサーバルちゃん、僕達行ってくるね?」


「うん!あんまりゆっくりしすぎてわたしのこと忘れないでね!」


「うん!すぐ帰るから待っててね!」


 美しい友情を背に俺はかばんちゃんをバギーの後ろに乗せてみずべちほーを目指す。

 

 さて、それじゃ。

 まずはライブでVIP待遇を受けてくるとしようか?







「行きましたね、博士」

「えぇ、行きましたね助手…」


「ねぇねぇ博士!わたしにもなにかさせてよ!かばんちゃんとシロちゃんがいなくてもできるよ!」


「サーバル、そしてアライグマにフェネック… 聞くのです!」

「実は仕事があるのですよ」


「なになにー?頑張るよ!」

「アライさんにお任せなのだ!」

「まぁー付き合うよー?」

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