第68話 カフェデート
高山は… じゃんぐるちほーのすぐそばにでーんと佇んでいる、そしてその頂上にはアルパカさんが経営するジャパリカフェがある。
カフェには二人のトキちゃんが常連… というよりはほぼ住み込んでいるような状態で、来る客に対し歌を聴かせている。
あれだね?むかーし居酒屋なんかにいた流しの人?みたいな感じだろうか、ストリートミュージシャンとも違うけど、お客がリクエストするとその曲を歌ってくれたりするっていう。
まぁ、一方的に聞かせられるんですけどね!
…
そして早速頂上へ向かおうと乗り場についた俺達三人であったが。
「ロープウェーが無い?」
「誰か先に来て使ったみたいですね?」
先客がいたか… 誰かな?ここをわざわざ使うのは鳥の子ではないだろうし。
「わたしはもう山登りはしたくないなぁ…」
「あの時大変だったもんねサーバルちゃん?無理しないでゆっくり待とう?」
なんでも岩壁を登りきったらしい、しかも何度か落ちたとか… そりゃ登りたくもないだろう。
しかしサーバルちゃん、バス抱えて川渡ったとか高山自力で登りきったとかとんでもねぇなぁ?オラワクワクしてきたぞっ!
まぁ、それなら俺がロッククライミングして上から持ってくるとするか、行くぜ行くぜ行くぜぇ!
「じゃあ俺が行くよ」
と意気込んで立ち上がってみたのだが、二人は急に不安そうな顔をして俺を止め始めた。
「シロさん… おとなしく待ちませんか?」
「そんなに急ぐことないよ!」
「もう大分元気だし、野生解放すれば落ちても大丈夫だよ?」
「お願いですシロさん、危ないことはもうしないでください…」
そんな今にも泣き出しそうなくらい不安そうな顔で見られたらおとなしく従うしかないが… あぁそうか、以前俺が死に目にあったから心配かけてるのか。
「そうだね、ごめん心配かけて… 三人で待とうか?急いでる訳じゃないしね?」
「はい!」
「よかったぁ~!」
ここで反論しても仕方ないし、自分の力を過信してもいけない。
それに彼女は頭がキレるから、大事な選択は従った方がいいだろう。
…
「あ!降りてきたよ!」
しばらく待っているとガシャガシャと音が聞こえてきた、サーバルちゃんの一声で俺とかばんちゃんもロープウェーの方を見ると、三人ほどの人影が見える。
あれに見えるはもしや?
「登り降りも楽じゃないなこれ?」
「お疲れさまですヒグマさん」
「ここまで大変だと誰も来ないのもわかります、経営キツいですよ…」
降りてきたのはヒグマさん、キンシコウさん、リカオンちゃんの三人。
ハンターがカフェ?珍しい、今日はオフの日かな?
「あ~!ハンターの三人だったんだ!」
「こんにちは、ヒグマさんたちもカフェで休憩ですか?」
「なんだ?かばん達じゃないか?」
「最近はセルリアンも少なくて平和ですから、たまにこういう日もいいかと思いまして」
「紅茶美味しかったです!あれ?シロさんもいるんだ?珍しいですね?」
世間話もほどほどに、突如現れたハンターの三人に緊急告知!
祝!シロさん彼女ができる!青春はこうでなくては!お相手はなんとあのかばんちゃん!わーい!
というのをやんわり伝えてみるとお三方口を揃えて…。
「「えぇぇぇぇ!?!?!?」」
なんだそんなに意外かね?
「恋仲というやつか… 驚いたな、おいかばん?こいつのどこがいいんだ?」
「ヒグマさんそれ失礼!俺傷付いたよ!」
「エヘヘ… シロさんは素敵な人ですよ?」モジモジ
「ふふっ女の子してますね?」
「シロさん、とうとうかばんにまで手を伸ばすなんて…」
なんかハンターの人たち俺に厳しいよ!何人も手ぇ出してないし!まるで俺がそこらじゅうでちょっかいだしてみんなを泣かしてるみたいじゃないか!
「シロ!泣かすんじゃないぞ!」
「かばんさんは人望が厚いですから…」
「傷付けたら島中のフレンズを敵に回しますよ?」
ひ、ひどい!なぜこれほどまでに信用がないのか?言ってみろ!俺が何をしたと言うんだ!
「ねぇ!?なんで俺そんなに風評被害が激しいの!?」
「そりゃおまえシロだからだろ」
「まぁ… シロさんですから…」
「シロさんキツいですよ…」
失礼過ぎるだろ!なんだシロさんキツいって!存在の否定やめてよ!基本的人権の尊重!
ふぇぇ… 悲しいよぉ…。
「ひどいよ… 俺だって真剣にかばんちゃんに恋してるのに…」シュン
「僕にはちゃんと伝わってますよ?」
「そういってくれるのはかばんちゃんだけだよ…」ギュウ
「よしよし… シロさんは甘えん坊ですね?」ナデナデ
あぁ~心がかばんかばんするんじゃあ~…安心感がサンドスターのように沸きだしてきますわ。
それを見たハンターズの反応一覧…。
「おまえなんか気持ち悪いぞ?」
「そういうのはあんまり人前でするのはどうでしょう…?」
「キツいですよぉ…」
実に辛辣である… でも俺だって皆さんのことなにも知らない訳じゃないよ?さぁ聞いて驚けまずはヒグマさんあなただ?
「俺のこと何て言おうと勝手だけど、そんなヒグマさんが隠れてPPPの振り付け練習してるのを知ってるよ、可愛いとこあるよね?」
「おま!?なんで知ってるんだ!?///」
「えぇ… 意外!超意外ですよ!?」
「ふふっヒグマさん可愛いですよね?」
さすがキンシコウさん、すでに知っていたようで?しかしそんなキンシコウさんにも意外な一面がございます。
「そしてキンシコウさんはちょこちょこ俺の作ったお菓子食べにくるよね?一度気を使って二人におみやげを用意したけどお口に合ったかな?」
「それは!?」
「知らないな?キンシコウおまえ…」
「えぇ!いいなぁ… キンシコウさんそのお菓子どこにやったんですか?」
「どどどこにやったかしら… 落としたかな~?ハハハ…」
さて、すまし顔のリカオンちゃんよ?君は俺のことわりと好き勝手に色々言ってくれたが、君のことなにも知らないとでも思うのかい?
「リカオンちゃんはうちのラッキーによくちょっかいだしてるね?撫でまわしたり抱き締めたり… 連れて帰ろうとしたときはさすがに止めさせてもらったけど」
「あぁ~!?それ言わないでって言ったじゃないですかぁ!?」
「リカオンお前また!」
「ボスはみんなのボスよ?わかってリカオン…」
「でもでもあのボス尻尾にリボンみたいのつけてて可愛くて…」
これでよし… ハンター同士で隠し事はいかんよ。
三人は「ぐぬぬ」という表情を見せているが、それはこっちのセリフだっつーの、彼女の前で他の女にちょっかい出してる話とかされたら嫌に決まってるだろうまったく、てか出してねーし!
「わかったシロ、私たちが言い過ぎた、まぁその… お前は優しいからな?かばんも幸せそうだしつまらんことでケンカするなよ?」
「今度は三人でお菓子食べに行きますね…」
「ボスに… またあのボスに会いに…」
「うんわかった、わかったからごめん落ち込まないで?」
ハンターの皆さんは仕事に戻った、これからどこのちほーに行くのかな?平和とは言えセルリアンはいるから、パトロールはやめられないのだろう。
「偉いですねシロさん!」
「え?なにが?」
「さっきはえっちな目で見てなかったので!」
判断基準… まぁ確かにヒグマさんはシャツピッチピチだし、キンシコウさんは下半身の主張が半端じゃないしね?リカオンちゃんはスカートじゃないのが逆にくるものがある、かばんちゃんと同じだ。
「…」ジト
「え!?なんで!?」
まさかかばんちゃん… 心を読んだのか?すっごーい!超能力が得意なフレンズなんだね!よし見てろ…。
愛してる愛してる愛してる…。
「…」ジト
え、えぇー!?なんでぇ!?心読んでよぉ!
…
さておき…。
戻ってきたロープウェーでカフェを目指します、元気にしてるかなー?三人は俺たちのことを聞いたらどんな顔するだろう?「いんやぁおめでとぅお!」「愛の歌を歌わせてもらうわ」「ですけど!」って感じかな?きっとそうだ。
いやしっかしこれキツいな相変わらず、キコキコとペダルをこぎ続ける俺の顔にも汗が。
ツチノコちゃんの時は見栄張りっぱなしで頑張ったから肩を借りないと動けなくなってしまったが、今回はフレンズパワーで乗りきるぞ!大丈夫大丈夫!ホワイトライオンだから!
…
そして頂上。
「シロさん大丈夫ですか?」
「だから代わるって言ったのに~!」
「ハァ…ハァ… もう~だめ、もう漕げない… ハァ…」
あれから筋トレしたりさぁ?師匠に稽古つけてもらったんだけどさぁ?
病み上がりにはキツいですよぉ… 俺にはもう爪を研ぐ力も残ってない。
でも到着したぞ、扉を開けていざ店内へ。
ガチャ キィ
「ふわぁ~!いらっしゃぁ~い!三人ともよく来たねぇ!」
「こんにちは~… あの、先にお水をもらえませんか?」
「んぅ?あんれぇ?シロちゃんまたへばっちゃったんだねぇ?」
「また?シロちゃん前もこうなったの?」
あ、ちょっとそれまって気まずい気まずい… 言わないでほしいな。
「シロが来たばかりのころにツチノコに肩を借りてここに来たわ」
まぁ言うよね~?でもトキちゃん?その話をするときはもう少し間を置いてほしかったな?
「あ、トキ!」
「トキさんもこんにちは、そうですか… その時はツチノコさんと」
「かばんちゃん… あの?」
「ちょっとだけヤキモチ妬きました」
ごめんなさい、いやまだ君もこっちに帰ってなかったころでさ?
でもこれから二人でいろんなところに行こう?どこにでも行きますよ?なんなんりとお申し付けください…。
「少し休んでくださいね?横になりますか?」
トントンとその健康的な太ももに手を置き頭を乗せるように促してくれた、イェイ… 膝枕だ。
「いいの?」
「僕の膝で良ければ」
天使かな?
お言葉に甘えて顔を埋めた。←枕にして下さい
はぁん///幸せ!!!
…
それから俺がお水を頂き一息ついた頃だ。
偶然とは言えヤキモチを妬かせてしまった彼女のご機嫌取りではないが、早速アルパカさん達には俺と彼女の関係をご紹介することとなった。
とりあえず紅茶を注文して。
「はいどぉぞぉ!それでぇなにかお話し?があるんでしょ?なぁんかいいことあったのぉ?」
「うん、かばんちゃんから言ってもいいよ?」
そうだ、君から報告してはどうだね?これウチの彼ピなんだけどぉ?ちょーやさしーんだよね?スゴくね?ってさ?ほらほら?
「恥ずかしいですよぉ~?シロさんからお願いします///」
「でもさっきから俺が言ってるけど…」
「えへへ///でもぉ…えへへ///」
「あぁ… もうわかったからいいよぉ…?」
ちょっとイチャイチャが過ぎたか… アルパカさん、なんか目が冷えきってるよ?あの癒し系美人の顔が「チッ」って感じだ。
「熱いねぇ~?熱々だねぇ~?ペッ!」
違った「ペッ!」て顔だった。
すんまんせん、でもそんな露光にウザそうな態度やめません?美人が台無しですよ?
「ごちそうさまって感じね、羨ましいわ」
「ふっふーん!二人はとっても仲良しだから!もうすぐ赤ちゃんも作る予定なんだよ?」
「あらぁ~!楽しみだねぇ!」
なんだろうかこの実家のような空気は… アルパカさんのおばあちゃん感はなんなのだろうか?あと子供はまだです。
「もう、サーバルちゃんったらみんなに赤ちゃんの話しして!」
「かばんちゃんは赤ちゃん欲しい?」
「ままままだそんなのわかんないですよぉ!?///」
俺… 頑張るよ?
しかし赤ちゃんかぁ?どんな子になるだろうか?俺の遺伝子が強すぎるためにホワイトライオンが生まれることもあるだろうし、普通に黒髪の子供が生まれることもあるんだろう… あるいは、黒いライオンが生まれる可能性が?
でも生まれたら男の子?女の子?俺はご覧の通り男の子だけど、かばんちゃんはヒトだけどフレンズだし… フレンズの割合が高いと女の子になるんじゃ?
しかし俺とかばんちゃんによく似た女の子の赤ちゃんだと…?許せるッ!
「シロさん?考えこんでどうしたんですか?」
「あぁいや、男の子か女の子かどっちがいいかな?」
「まだその話を… 僕はシロさんとの赤ちゃんならどっちでも…」ゴニョゴニョ
うん、俺もかばんちゃんを妊娠させたいな、するってーとママンちゃんになるのか?許せるッ!←問題発言
二人でコソコソと話していたつもりだったが、やっぱり耳も大きいのでサーバルぅ…。
「え?なになに?二人とも!これから子作り?」
「しょうがないねぇ~?奥の部屋を片付けてくるよぉ…」←いらぬお世話
「い、いいですからぁ!そういうのは僕たちのタイミングでしますから!?」
とは言っても俺には付き合った彼女と初めて肉体関係を結ぶタイミングなんてわからないからなぁ… でもしたいか?って聞かれたら、ネットリ熱い夜を過ごしたいですよねやっぱり。 フーヒヒ
「いいわね二人とも?なんだか私もそういう意味での仲間が欲しくなってきたわ?それじゃあ新曲聴いてください“赤ちゃんの唄”」
…
というくらいだから、俺はその曲が子守唄みたいなやつかと思ったんだけど、なんか微妙に生々しいラブストーリーな曲だった
しかもなんか紅茶のせいか上手くなってるのが逆に俺とかばんちゃんをモジモジとさせた。
そんないい声で「あなたと絡み合ったぁ~!熱いよぉ~るぅ~!」とか言われたら、年頃の俺達はどんな顔で聞けばいいんですかねぇ?
「愛の結晶ぉ~!あぁ…赤ちゃん…」♪
「すっごーい!」「うまいねぇトキちゃん!」
「「わぁ~///」」パチパチ
そういえば、ショウジョウちゃんの姿がみえないね?どこかにお出掛けかな?
その頃カフェの外。
「なんかトキが変な歌を歌ってて入りにくいんですけど///」
後で聞くに、服だけでなく顔まで真っ赤だったそうな。
…
カフェをでてジャングルに戻るころ、空は夕方だった。
バスに戻るとジャガーちゃんとコツメちゃんの二人が待っていてくれて、少し話した後に各々寝床を探して帰っていった
そしてその夜のこと。
「サーバルちゃん、今日も木の上で寝ちゃいましたね?」
「気を使わせてるのかな?いつもはどういうふうに寝てるの?」
「はい、そこに並んで…」
尊い…。
それは申し訳ないことをしてるな、俺が木の上で寝た方がいいんじゃないか?そんなことを提案してコソッと口にしてみたが。
「隣には、いてくれないんですか…?」
こんなことをウルウルした瞳で言われてはオスライオンは野生解放してしまうがここは我慢だ、ガマン!
「あの…」
そんなガマン!に集中する俺の手をギュッと握り、照れくさそうにうつむいている彼女は、目を合わせずそのまま俺に話しかけた。
「僕は… 知識の上ではどうすれば赤ちゃんができるかわかってるつもりです」
俺も知ってる、お互いの体をですねぇ… って、でも彼女のほうからその話を振ってくるとさすがにドキドキしてしまう、気にしてるのかな?
「興味がないんじゃないですけど… やっぱりちょっと、なんか怖いのもあるって言うか…」
「急がなくていいよ?俺はほら… 頑張って我慢できるよ?傷付けて嫌われるくらいなら我慢するから!」
「ありがとうございます… で、でも…!」
我ながら相手の事を考えた返しだと自画自賛していたんだが、彼女はグッとこちらに身を乗りだして顔を近づけた、今夜も月は明るく彼女の顔を照らす
「地下室で話したこと… シロさんは覚えてますか?」
正気はほとんど無かったが記憶は鮮明だ、たまに思い出して悶絶するほどに。
「シロさんは、自分で言ったことを覚えていますか?」
「それは… 君が、欲しいって…」
「それじゃあ… 僕の言ったことも覚えてます… よね?」
そんなふうにされるとあの時の衝動が体の奥から…。
俺は手を握ったままグッと彼女を抱き寄せて体を密着させた「ぁ…」と小さく声を出し、潤んだ瞳はジッと俺の目を見ている。
「“食べてもいいですよ″… だったね?」
「もしシロさんが辛いなら、僕は…」
あ、熱い!これは止めないと、止まらないけど…!でも止めたほうがいい!
優しくバスのベッドに彼女を寝かせると俺は上に覆い被さった、いつのまにか野生解放までしてさらに体は熱を帯びる。
「ハァ… ハァ… 止めるなら… 今だよ?」
「今度は、腕を噛まないでください… 大丈夫ですから?」
「食べちゃう…よ?」
「優しく… 食べてください…?」
そのまま勢いでキスをした、あまりに可愛いと思った… 唾液が混ざりさらに発情してしまう。
彼女も息が荒い、熱が伝わる。
も、もうダメ… それじゃあ。
「いただきま…」
「シロ 食ベチャダメダヨ」
ラァッキィ~… !!!
「「…///」」
お互い正気に戻ると顔を見合わせて頬を赤らめた。
「き、今日は寝るだけにしようか?」
「は、はい!」
…
決めた、寝るときはラッキーさんをカバンにしまっておこう。
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