第62話 こくはく

「博士!かばんちゃん… もしかして泣いてたの?声がここまで聞こえてきたよ!ねぇかばんちゃんは大丈夫なの!?」


「落ち着くのですサーバル… 今かばんは泣き疲れて眠っているのです、起きたら水の一杯でも飲ませてやるのです」


「そっか… わかったよ!」


「この件ですが、一度持ち帰らせてほしいのです、面倒な偶然が重なったようなのでこちらも確認が必要なのです」


「どういうこと?」


 二人は原因に気付いていた、しかしどうしてそのような状態になったかまではわからなかった。


 故に、原因の部分を小突くと気持ちが不安定なかばんはすぐにボロをだした。





「「失恋?」」


「やっぱり僕じゃダメだったんです… シロさんの隣にはいられないんです」


 詳しく問い詰めると、それはハロウィンの夜にまで遡った



 フレンズたちが服の交換を始めた時、すでにサーバルとの交換が済んでいた彼女は走り去ったシロが心配になり、森に探しにでたのだ。


 ヒト故に夜目も利かなければ耳も鼻も皆のように良いわけではない彼女は、迷っては困ると慎重に森の中を進んでいった。


 探すのに手間取ってしまった彼女だったがようやく目当ての彼の姿を見付けた…。


 がしかしそこには先客がいたのだ、彼の隣に並んで座るのはスナネコ… の服を着たツチノコだった。

 

 彼女と違い、鼻も利いて夜目も利くツチノコはまっすぐ迷わず彼のいる位置へ歩くことができた、その差でかばんより後に出たにも関わらず彼を先に見付けることができたのだ。


 その光景に彼女は胸を締め付けられ、話しかけることもできなかった。

 少し離れたとこで眺めることしかできず酷くもどかしい気持ちになっていた。


 なんで?なんで…?


 かばんは自分の中にあるこの黒い感情が嫌いだった。


 恨みたくもない相手に嫉妬から憎悪を向けている自分に嫌気がさしていた。


 ただそれと同時に羨ましくもあった、だからこそ並んで座る姿も上着を掛けてもらってるとこも嫌で仕方がなかった。


 なぜ彼の隣にいるのが自分ではないのか?と。


 そしてその時…。


「今度デートしよう!」


 それは彼の声だった… その時彼女の中でなにかがぷっつりと切れた。


 つまりそういうことなんだと悟った彼女はその場にヘタりこんでしまった。


 全部前からわかっていたこと… だから泣いちゃダメ… 泣いちゃダメ。


 彼女は… 一人息を殺して涙を流した。




「わかってたんです、ツチノコさんが好きなんだろうって… でも地下室の件でちょっといい気になってました、もっと近づけるって思ったんです」


 やがて自分の片想いが終ったことを思い出し、とうとう目からは大粒の涙が。


「どうして?どうしてこんなに辛いのにヒトは恋なんてするんですか?教えてください!なんでなんですかぁ…!」


 だんだんと、悲しくて声がしゃくり上げてきて口が利けなくなっていった。

 まるでダムがいっぺんに崩れ始めるように、どしゃぶりの雨のように泣き始めてしまった。


 長達はかばんを慰めるように頭や背中を撫でた… 言葉は浮かばなかった。

 ヒトであるかばんがわからないのなら二人にもそれはわからなかったからだ。


 ベットに横にさせ、泣き疲れると彼女はやがて眠りに落ちた。





 図書館に戻る際、二人は考えていた。


「シロ… まったく罪な男です、かばんをあそこまで追い詰めてしまうとは」


「しかし予想が外れましたね?ツチノコに執心だったとは… イマイチあいつのツボがわからないのです」


「デート=好きで考えないほうがいいかもしれません、故に確認が必要なのです… かばんのあんな姿を見せられては、さすがに本人同士の問題とは言え無視はできないのです」


 二人が帰った直後、それはシロとツチノコが丁度遊園地にいた時間だった。


 シロはその後ツチノコを地下迷宮に送り届け、図書館に帰る頃はすっかり夜になっていた。





「ただいま… 遅くなったね、ごめん」


「シロ、よく戻りましたね」

「そこに座るのです」


「ごめん、今日はもう動きたくない… 明日の朝は好きなもの作るから、それで勘弁してくれる?」


「それはいいのです」

「我々は話があるのですよ?」


 正直… 今は何も考えたくないな。


 でもご飯以外のことでわざわざ俺を待ち構えていたということはなにか大事な話があるのか、なら聞かないわけにもいかないか。


「話って…?」


「まず、今日はツチノコといましたね?」「何をしにどこへ行ったのか聞かせてほしいのです」


 ずいぶん踏み込んでくるな…。

 

 話したくない。

 ツチノコちゃんはあぁ言ってくれたが、お互いショックがないわけではないんだ。

 彼女だって俺との間だけで処理したいからああいう形をとったんだと思う、実際俺と彼女の問題だ。


「言わないとダメなの?」


「無理に問い詰めたい訳ではないのです」「ただ… どういうつもりなのか聞きたいのです」


 どういうつもり…って。


「ツチノコちゃんに対する気持ちの話をしてるの?」


「まぁ、端的に言うとそうですね」

「二、三確認したいだけです、答えてくれますか?」


 何を確認したいと言うんだ… これは俺の問題のはずだ、二人には関係ない。

 正直に答えてもいいが彼女のメンツもある、結果だけ話そう。


「彼女は良い友人、今までもこれからも…」

  

 こういうことになったんだ、何もおかしくはない… ただ、さっきの後だと少し胸が痛む。


「妙に含みのある言い方ですが…」

「まぁいいのです、では次ですが」


 二人は互いに顔を見合わせると小さく頷き俺を見た、そして口を開くなりストレートにこう聞いてきたのだ。


「「かばんのことは好きですか?」」


「…」


 この流れだと、女性としてどうか?と聞いているんだろう。

 ずいぶんストレートに聞いてくるじゃないか、二人がこう絡んでくるとあまりいいことが起きない、話が拗れるイメージがある。


「それを聞いてどうするの?」


「前からそうではないかと思っていたのです」

「ただ今日は、それを確かめざるを得ない状況になりました、答えてくれますか?」


 どうする… なぜ確かめなくてはならないんだ?これは俺の問題のはず。

 そんな俺の心情を感じ取ったのか、二人はあれこれ理由を言い始めた。


「誰かに言って冷やかそうだとかそういうのではないのです」

「ただお前の行動の理由が知りたいのです」


「行動の理由?なにそれ?よくわからないけど…」


 今日の二人はなにがしたいのかさっぱりわからない、答えないとダメなら答えるか… なんか照れくさいけど仕方ない。


「好きだよ」


「おぉ…!」

「間違いないのですね?」


「今日ハッキリしたんだ、俺はかばんちゃんが好きなんだ… 勿論、女性としてね?」


「はぁ~… そうですか」

「博士、それならばなんとかなりますね?」


 ほっとしたような顔をしているが、いったいなんの話をしてるんだ?今日二人はどこへ行っていた?何をしてた?


「しかしシロ、それならなぜツチノコとデートなど!」


「ちょっと、何でデートって知ってるの?」


「何でもいいのです!」

「想い人がいながらなぜ他のメスとデートなど!」


 これも答えないとまずいやつかな?仕方ない、ここまで言ったら隠すもなにもないか。



 俺はジャイアント先輩に話したように二人にも悩んでいたことを話した。


 デートの目的はどちらかハッキリする為にあった、そして今日、それはツチノコちゃんのおかげでわかった。


 二人にはツチノコちゃんの気持ちは伏せておいたが、これでどんな状況だったか理解してくれるはずだ。


「なぜ我々に話さずにジャイアントペンギンなんぞに…」

「共に暮らす我々に信頼はないのですか!」


「そうじゃないけど、二人に色恋沙汰を絡ませるとろくなことがないんだもん」


「う… そ、そんなことよりもかばんです!」

「お前のせいでまずいことになったのです!」


「え…?」ガタッ


 思わず立ち上がり二人に訳を聞いた… そして確かに大変なことが起きていた事を知った、俺のせいだ。



「それ、本当なの…?」


「酷く弱っていたのです…」

「お前とツチノコのことを誤解してすっかり意気消沈としているのです」


「なんてこった… 全部俺のせいだ」


 俺が優柔不断だからこんな… これも女難の相か?


 どうやら驚いたことにツチノコちゃんの見立て通りかばんちゃんと俺は両想いらしい。


 でも都合の悪いことにデート申込みシーンを余すこと無く見て聞いていた彼女は俺とツチノコちゃんがすでにいい仲なのだと誤解したようだ。


 つまり彼女は今恋に破れたと勘違いしている、そして俺は同時に二人の女の子を… しかも意中の子を悲しみに溺れさせてしまったということだ。


 とんでもない大罪だ、許されるはずがない。


「すぐにロッジへ…!」


「構いませんが」

「疲れているのではないのですか?」

 

「俺なんていいんだよ!かばんちゃんが傷つく必要なんてないんだ!連れてってくれ!」


「そんなに大きな声を出さなくても連れてってやるのです」

「やっとお前も身を固めるのですね… なぜかホッとするのです」


 そんな言い方するけど俺はまだ16歳だよ… あれ?17かな?いつが誕生日なのかもわからないな。


 正直、こんなに早く想いを伝える予定ではなかった… もっと今日のことも落ち着いてすっきりした気持ちでかばんちゃんを見れるようになったら言うつもりだった。

 その時はバラの一輪でも持ってこうとか考えてたが、この際仕方ない… 手ぶらで告白に行くなんて少し寂しいけど、それ以前にそこまで追い詰めてしまったこと謝らなくてはならない。


 俺は博士達に連れられロッジアリツカを目指す。





「ん…」


 夜?あ、そうか… 確か博士さん達が来てくれて、それから話したらたくさん泣いてしまって… 気づいたら眠ってて。


 まぶたが痛い、これはたくさんの涙を流した証拠。

 眠ってしまうとあの辛かった出来事は全部夢だったの?と思ってしまうことがあります。

 でも赤く腫れたまぶたはそれが現実のことだったと僕に教えている。


「あ… サーバルちゃん」


 ずっと見ててくれたのかもしれない、ベットのすぐ下の床でごろんと丸くなっている


「んみゃ… かばんちゃん…」zzz


 心配かけちゃった、今度サーバルちゃんにもちゃんと話さないと。


 大親友のサーバルちゃん… いつも僕の隣で明るく笑って元気付けてくれる。


「ありがとう… 心配かけてごめんね?」


 頭を優しく撫でると。 


「んみゃあ…」zzz


 と気の抜けた声をあげている、見ていると荒んでいる僕の心が和んだ気がする。


 サーバルちゃんの為にも早く立ち直らないと。

 

 泣いたことでスッキリできたのか、そこまでどんよりとした気分ではありませんでした。


 でもそれでも気持ちが暗いことには変わりない。


 僕… フラれちゃったんだ…。


 始めから僕の入り込む隙間なんて彼の隣にはなかった。

 でもそれでも、どうせフラれるならちゃんと好きって言いたかった… その方がまだ踏ん切りがつく思うから。


 でもこれでよかったんです… もう二人の邪魔をすることはないし、僕みたいにヤキモチを妬いて人のことを悪く見てしまうような子は優しいシロさんに相応しくない。


 僕は… 悪い女の子です…。


「カバン 水分ヲトッタホウガイイヨ」


「ラッキーさん… ありがとうございます」


「zzz… んみゃあ!?寝ちゃってた!?かばんちゃん!」


 ラッキーさんと僕の声に気付いたのか、サーバルちゃんが飛び起きてすぐにこっちに目を向けた。


「おはようサーバルちゃん?寝ててもいいよ?」


「かばんちゃん!大丈夫!?どこも痛くない!?」


「うん… 平気だよ?」


 サーバルちゃんは優しい、僕はずっと自分のことでいっぱいいっぱいでお話もちゃんとしてなかったのに。

 でもサーバルちゃんはこんなにも心配してくれる、どんなに辛くてもサーバルちゃんといればかならず元気になれる気がする。


「あ、そうだ!博士がね?起きたらお水を飲ませてあげてって言ってたんだ!わたし持ってくるよ!」

 

「ラッキーさんにも言われたよ、僕も一緒に行っていい?」


「え、大丈夫?歩けそう?」


「平気、大丈夫」


 一緒にいたい、一人でいるとまた泣いてしまいそうだから…。





「着いた!降ろして!」


「シロ!慌てるなですよ!」

「普通に降りるのです!」


 気が急いていたためか、腕を振り払い野生解放したままロッジに降下した。

 降りたすぐそばにはキリンさんがいて突然の俺の登場に大層驚いていた。


「わぁぁあ!?シロ!?降ってきたの!?」


「キリンさん!俺をかばんちゃんのとこに案内して!」


「ず、ずいぶん慌てているのね?でもわかったわ!あの子は“みはらし”の部屋よ!」


 勢いよく階段を駆け降りお部屋みはらしへ向かう。


「シロ… 慌てるなんとかは貰いが少ないのです…」

「しかしあれほど必死になるなんて… シロはかばんに本気な証拠ですね?」




 

 キリンさんの案内により目的地は目前まで迫った、しかし。


「着いたわ!」


「ありがとう! …かばんちゃん!俺だよ!返事をして!」


 コンコンとやや乱暴なノックで扉を叩くが返事はない。


「どうしたんですかー? …ってシロさん!?いついらしたんですか!?よ、ようこそロッジアリツカに…」


「アリツさん!かばんちゃんはどこ!」


「か、かばんさんならお水を飲みたいからとサーバルさんと向こうへ…」


「ありがとう!」


 くぅ… 近くにいるのに、なんだか遠ざかっていってる気がする!


「シロさん… わざわざかばんさんに会いにこんな夜に?」


「アリツさん!私達もこの事件の最後を見届けにいきましょう!」





 これはかばんちゃんの匂い… 近くなってきたな!


 俺がなんで野生解放までして走っているか… 彼女の誤解を解きたいからというのももちろんある、でもそれ以上に傷付いてボロボロにしてしまったことを謝りたいからだ。


 こんな俺に君を抱き締める資格なんてあるんだろうか?


 どこか俺に似たところのある君もきっと初めての感覚に戸惑っていただろう… 恋のことを尋ねる君に前に話したね?「自分でもよくわかっていない」って。

 あの時は同じだね?って笑ったけど、今はもうわかるよ… きっと頭のいい君はもっと早くに気付いたんだろうね?


 誰かを好きになるって嬉しいし楽しいんだ、でも時に辛く苦しい… なんにも手がつかないくらい辛い時もあるけどそれでも人は恋をするんだ。

 

 理由なんかない、人間もフレンズも心があれば恋をする理由には十分だ。


「やぁ?来ると思ったよシロ君」


「オオカミさん、かばんちゃんは?」


「慌ててはいけない、今の彼女はデリケートだ… こんな言葉を知ってるかな?“急いては事を仕損じる”だ、冷静になるんだ… 急ぐ気持ちはわかるが、焦ってはいけないよ?彼女は扉の先だ」

 

「わかった、いってきます…」


 そうだ慌てんなよ俺、彼女だって急に逃げたりしないさ。


 俺は扉の前で深呼吸するとドアノブに手を掛け、扉を開けた。


 ガチャ…





「かばんちゃん、すこし落ち着いた?」


「うん、ごめんねサーバルちゃん?心配かけて… 理由はもっと気持ちが落ち着いたら話すから、待っててくれる?」


「わたしたちずーっと一緒だよ!だからかばんちゃんが話したいときに聞くよ!」


「サーバルちゃん…」


 切り換えていかないと… サーバルちゃんの為にも。


 ガチャ


 僕らが座ってお水を飲みながら話していると扉が開きました。


 でも僕には、そこに立っている人がそこにいることが信じられませんでした…。


 あなたが来るはずがない、僕のところに来る意味がないもの。


 でもここにいる、どうしているの?なんで来たの?なんの為に?


 いけないとわかっているのに、あなたの顔を見ると胸が踊ります。


「あ、シロちゃん!いつ来たの?かばんちゃんが心配で見に来てくれたの?」


「それもある… けど謝りにきたんだよ?あと誤解を解きに… かばんちゃん?話を聞いてくれる?」


 ダメダメダメダメ… ダメだけど…。


 ダメなのに。


 僕に会いに来てくれたことがただ嬉しい。


「はい…」





 やっと会えた。


 見た感じ、少し痩せた?いややつれたように見える。


 顔色も優れないし、目の下には隈があるのがわかる。


 これは全部俺のせいだ。


 俺は歩み寄ると彼女の両手をとった、震えているのは触れる前から分かってた。


「ごめんね、俺のせいで辛い想いをしたでしょ?」


「そんな… ちが… 僕が勝手に…」


「それは違うよ、俺のせいなんだ… だからまず一つ誤解を解かせて?」


 俺は自分の気持ちに悩んでいたことを彼女に話した、そのためにハロウィンの夜の出来事が起きたとも話した… そして自分の気持ちにハッキリと気づいたからここに来たと伝えた。


「どうしてあの時僕があそこにいたって… それに二人は恋人同士なんじゃ?」


「博士達に聞いた… あとそれは違う、今日は誰が好きなのかハッキリと分かったから来たんだ」


「え…?え?」


 まっすぐ目を見つめ、思ったことを素直に彼女にぶつけていく。

 照れてる余裕なんてない、俺の言葉を聞いてほしい。


「かばんちゃんは俺が好きだからそんなに辛い想いをしたの?」


「あ、あの… それは」


「眠れてないしご飯も食べてないって… それにまぶたが赤い、たくさん泣かせちゃったんだ、そうでしょ?」


「これは… その…!」


 今日のツチノコちゃんには勇気ももらった、すぐそこにサーバルちゃんがいるし後ろにはオオカミさんもキリンさんもアリツさんもいる、それに博士達も… でも気にすることはない、かばんちゃんにだけ集中すればいいんだ。


 一呼吸終えると俺は正真正銘初めての愛の告白というやつを行う。


 それじゃいきます…!



「俺はねかばんちゃん?君が好きなんだよ」


「ぇ…ッ!? 嘘…」


「信じてよ?わかってくれるまで何度でも言えるよ俺は?かばんちゃんが好きだよ、大好きだ… 君はどう?」


 言った… 後はお返事を待つだけだ。





「あぁ… そんな、あぁ… 僕…」


 夢みたいなことが起きています、急に現れたシロさんが、僕のことが好きだって… しかも大好きだって。


「ぼ、僕は… 僕も…」


「ゆっくりでいいから、聞かせて?」


 僕も答えないと… お返事をしないと。


「僕もシロさんが…」



 ちゃんと言って… 言うなら今しかないのだから。



「シロさんが好きです… 愛してます…!」



 やっと言えた、僕の正直な気持ち…。





「「え、えぇ~!?」」


「聞きましたか助手!」

「はい博士!ツガイの完成ですね!」


「やはり恋患い… 勘違いラブレターからすでに始まっていたんだね?」


 みんな今の聞いた?愛してますって?やったぜちくしょう!俺もだよ!かばんちゃん愛してるよ!


「そっかよかった!俺の勘違いだったらどうしようかと… これからはかばんちゃんの為に生きるよ!俺頑張る!君を絶対幸せにするから!」


「はい、僕も嬉しいです…!胸いっぱいです!」


 泣きながら笑う彼女はとても綺麗で安心した笑顔を俺に向けていた。


 そんな彼女を見て俺も心の中が一面お花畑になった気分だ。


 向こうじゃろくに友達もできなかったのに、今はこんなに幸せだ、人生で一番幸せかもしれない。





 だけど、なにかで聞いたことがあるんだ… 幸せってやつはそう長く続かない。



「でも…」 



 笑顔から一変、彼女は下を向き絞り出したような辛そうな声で俺に言った。


「僕なんかシロさんの隣にいる資格ないんです… グスン」


「え?そんなこと…!」


「ダメなんです… 僕は…悪い女の子です」


「なにを…?」


「僕は… シロさんとお付き合いできません…」


 ぇ… 嘘だろ…?




 \え、えぇぇぇぇえ!?!?!?/



 その日、俺は二人の女の子にフラれた。

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