第60話 かそー

 サクサク… クリクリ…。

 俺は今、ハロウィン用のかぼちゃを大量に切っている、中身はパンプキンパイにでもする予定だ。


 サクサク… クリクリ…。

 このかぼちゃに顔を付けたものは“ジャックオーランタン”という、中にロウソクを立ててランタンにするものだ、最初はカブでやってたとかなんとか。


 サクサク… クリクリ…。

 そもそもハロウィンの起源とは秋の収穫祭と悪霊を追い出す宗教的行事であり、それが今では仮装パーティーとなり現代に浸透しているらしい。


 サクサク… クリクリ…。

 よくわからないがケルト人とかいう人たちの一年の終わりが10月31日で、死者が訪ねてくるので仮装で誤魔化そうとかなんとかそういう理由から始まった… らしい。


 サクサク… クリクリ…。

 博士達にそれを話すと…。


「す、すぐに仮装をするのです!」

「緊急事態なのです!」


 と焦っている姿が実に面白かった、毎年そんなことやってないでしょうに何を今更焦るのか?


 しかも完成した仮装が二人で抱き合って。


「「カレーライス!」」


 とか言い出したものだからもう腹を抱えて笑う他に俺には道がなかった、文字通りにカレーの鳥になるなんて反則だ。

 そして笑いすぎた俺は長奥義をくらったので黙っておばけかぼちゃ作りに勤しんでいるというわけだ。


「アライさんも作ったのだ!」


「アラ~いさーん?底からくり貫くとロウソクが立てられないんじゃないかな~?」


「うぇぇぇえ!?」ガーン


 お手伝いにアラフェネのお二人が駆け付けてくれた、二人とも包丁上手になりましたね?先生嬉しいです。


「またやってしまったねー?それ被ってみたらどうかな~?」


「こうなのだ?」ガポッ


「おぉ~…似合うねー?」


「ブハッ!」


 もぅ~ダメだよさっきのカレーライスからツボ浅いんだから!やめてよ変なことするの!


 中身をくり貫くとき上からではなく下に穴を開けてしまったアライさん、まぁロウソクに被せてしまえばいいんだけどフェネックちゃんがまた悪ふざけをさせ始めたようだ。

 かぼちゃ頭のアライさんが大変シュールなのでカレーライスに続きツボにハマった俺は呼吸困難に陥った。


「かぼいさーんシロさんが苦しそうだからやめようかぁー?」


「かぼぃッハッハッハッハッ!?…クックックッ!」


「シロさん笑いすぎなのだ!アライさんさりげ傷つくのだ!」


「ごめ!ッヒヒヒ!それもう脱い…ククク!」


 ノリノリでやってたクセに傷つくとはなんなのか。←ノリノリだったのはフェネ

 そこへ俺の爆笑に気付いたのか長の二人が現れた、今は正直笑いを堪えられないので来ないでほしい。


「キビキビ働くのです」

「手を止めるなですよシロ」


「カレーェッヘッヘッヘッヘッ!?」


「「ッ!!!」」ガシッ!ガシッ!


「あぁ~!?ごめんって!?」


 とまぁこういう愉快な日なんだ今日は、でも俺には人生最大の大仕事がある、二つもだ!


 先日ジャイアント先輩の言ったあれ。


 “デートしてきなよ!” 


 これだ!


 つまり俺はツチノコちゃんとかばんちゃんの二人にデートを申し込まなければならない!もちろん一人ずつだ!


 先輩曰くそれでより胸を締め付けるほうが本当に好きな相手で、愛情と情は違う… だそうだけど。


 どちらかを愛とは別の感情でよく思ってるということなのか。


 でも片方といい仲になれたとしてもう片方はどうなるのだろうか?


 いや、これこそが何様のつもりなんだ、この考えは二人も当然俺に惚れているんだぜ?という考え方だ、ジャイアント先輩が言ってた“何様”というのはこういうことだ。

 この考えは無しの方向で行こう、飽くまで俺の片思いであり俺がどっちに惚れ込んでいるか… これが大事。


 でもデートってどうすればいいんだ?全然わからん!


「シロさーん!」


「ん?ブハッ!」


「仮面フレンズ!アラァイッ!なのだ!」カボチャヘッド


「同じく、フェネックなのさー」カボチャヘッド


「~ッハハハハハ!」


 なんでもう一個増やしてんだよ!はぁ~たのし…。


 はぁ… それにしても先にどっちに声をかければいいんだろ?





 そんな悩みを抱えつつハロウィンパーティー当日を迎えた俺は、無心でお菓子を量産し続けていた。


 わかっている、こんなものは予定の先伸ばしに過ぎないことを。


 でもどうしたらいいんだ?どこに連れていけば二人は喜ぶんだ。


 もうわかんなぁい!改まって考えたら誘う勇気もないよぉ!?


 んあぁ~~~!!!


「ハァ…」


「なんだ溜め息なんかついて?」


「あぁツチノコちゃん、なんでもな… え!?ツチノコちゃん!?」


「ウワァハッ!?なんだよ!」


 まさかの本人ご登場であった、しかしハロウィンを意識したのか今日はほんの少しいつもと雰囲気が違うようだ。


「いや… あれ?」


 そう突如現れた目当てのツチノコちゃんに動揺を隠せないが… それよりも今日の彼女を見てくれ!フードを下ろしてるじゃないか!ビューディフォー!そして頭のそれはもしかして?


「今日はフード被らないんだね?綺麗な髪だもん、隠すのはもったいないよやっぱり!」


「き、今日は特別だ!スナネコがこれを付けろって言うから…」


 “これ”とは付け耳のことである、仮装の話をした際に博士達が遊園地にそれらしき物があったとツチノコちゃんに調査させていたらしい。

 確かに良く見たらみんな耳が沢山あったり尻尾が二本だったりしてる、仮装を絶妙に履き違えているようだ。


 あとあのかぼちゃ被るのが流行ってる、誰の仕業だ。


「変だろ?オレの髪の色には合わんから、必要ないと言ったんだが…」


「そんなことない、可愛いよ?似合ってる!それなんの耳かな?猫かな?色が白いから俺とお揃いだね!やったぜ!」


「~!?///べ、別に意識したわけじゃないからな!?コノヤロー!キッキックシャー!」


 まったく照れちゃってこの子は… 可愛いなぁ、マーゲイさんだったら鼻血ダラダラだね。

 …ってそうじゃない!ほらデートだよデート!チャンスだ誘えオラ!


「ね、ねぇツチノコちゃん?」


「クシャー! …ん?ど、どうかしたか?」


「あのさ?こ、今度都合のいいときでいいんだけど?その… 俺と…」


 ファイト!さぁ言え!たった一言だ、彼女とは友人同士だ、軽くデートしようぜ?チェケェラベイベハァン?って言うだけだ。


 さぁ言え!


「今度デーt…」


「おぉ~?これも食べていいのですかぁ?」


「フゥワァァァァア!?」ガポッ!


「ファハッ!?なんなんだよさっきから!?」


 突如現れたスナネコちゃんに驚き俺は手近にあったかぼちゃを被り顔を隠した。


 それみたことか?さっさと誘わんからこうなるのだ、このクソザコナメクジめ。


「なんでもない!なんでもないよ!スナネコちゃんこれまだ焼いてないからちょっとまってね?」カボチャヘッド


「わぁ!?なんですかそれ?ボクも被りたい!」


「え?いいよハイ」スッ ガポッ

 

「ふーん… もういいです」スポッ


 瞬間的な満足、彼女とのやり取りでは既にこういったことが一連の流れなのだ。


「おいおいお前なぁ…!悪いが後で聞かせてくれ?」


「あ、うん… またね?」


 言いそびれた、そして行ってしまった。


 邪魔が入ったとまでは言わないけど…。


 はぁ… うまくいかないなぁ…。



 ツチノコちゃんは奔放なスナネコちゃんの目付け役のようになっている、もっとも振り回されているようだが…。

 俺はその間また無心にお菓子を作っている、いくつのケーキやクッキーを焼いたかわからん、不思議と疲れはない。


 どーすればいいかなぁ?ツチノコちゃんなかなか戻ってこないなぁ…。





 その頃、図書館の中ではサバンナコンビが何かしらのイベントを発生させていた。


「さ、サーバルちゃん?本当にやるの?」


「うん!だってかばんちゃん!今日はそういう日だって本に書いてあったんでしょ?大丈夫だよ!さぁ脱いで脱いで!」


「あ!ま、待ってぇ…!?やぁん!///」




 \ヤァン!////


 ん…?なんか今、悲鳴みたいなものが聞こえた気がするけど。


 気のせいかな?人間の耳では聞き取りきれなかった、みんな楽しそうだから誰かがひゅーひゅー言ってるのかもしれない、きっとそうだ。


「わぁ~い!」


「サーバルちゃん!待ってぇ!?」


 今のはサーバルちゃん?騒がしいな?ってパーティーだから当たり前なんだけど向こうでなにしてんだろ?


 ってあばば!?クッキーが焦げる!ふぅ… セーフセーフ… ひとつも無駄にはできない。


「シロちゃーん!見て見て!」


「サーバル… ちゃん?」


「そうだよー!これが“かそー”なんでしょ?うみゃー!食べないでくださーい!」カバンコス


 かばんちゃんの服を着てるのか?ハハハ帽子が耳に乗ってますよサーバルさん?まぁあの耳じゃあ帽子はキツいか… いやまてよ?ってことは~?チラ


「「あ…」」


「か、かばんちゃん?それは?」


「シロさん!?えとぉこれは…///」


 俺の目線の先にはなかなかに強烈な光景が広がっていた。


「あ、あの… た、食べちゃうぞ~?なんて… えへへ///」サーバルコス


 そうそれは、サーバルちゃんのコスプレをした… かばんちゃん?


「…」無言の鼻血


「わぁ!?大丈夫ですか!?」


「満足…」鼻血ダラダラ


「シロさん!?」


 あぁ今日は良い日だ… まるで花畑にいるみたいだ。

 

「カバン 食ベチャダメダヨ」


「た、食べませんよぉ!?」


 かばんちゃんコスのサーバルちゃんが来た時点でわかっていたことだ。

 そうだねサーバルちゃん、それが仮装だよ?君は間違ってない、ビューディフォー!素晴らしい発想だ!


「お前たち、何をやっているのです?」

「お互いの服を交換したのですか?」


「だって“かそー”って誰かのマネをするんでしょ?だからわたしは大好きなかばんちゃんにしたんだ~!」


「なんだか足がスースーして落ち着かないけど… 結構楽しいですよ?なんだかサーバルちゃんになれたみたいで!」


 スカートを履き慣れないようだ、とても恥ずかしそうだが、同時に楽しそうでもある。


 そこがまた堪らんのですよ。←変態的思考


「なるほど… 盲点でしたね助手?」

「では、我々も服を交換しますか?」


 あれなんだこれ?猛烈に流行り始めた、カボチャヘッドのように。

 でもそうだね、耳と尻尾を増やすんじゃなくて別の子の服を着ればお手軽だね?


 だけどさぁ…?


「わたしもやるー!ジャガ~服ちょうだーい!」ヌギヌギ


「えぇ~… いいよ~!しょうがないな~?でもカワウソの服は私には小さくない?」ヌギヌギ


「よしライオン!私達も交換だ!」ヌギヌギ


「いいよ~?さぁ脱げ脱げ~!」ヌギヌギ


 なぜこうなった!?ダメだよ女の子が男の子の前で簡単に肌を見せちゃあ!


 ダン!

 調理台に拳を叩きつけながら、俺はこの楽e… 間違いを正すため叫んだ。


「みんな!俺もいるんだよ!そういうのは男の子に見せないようにやらないとダメじゃないか!」鼻血ダラダラ


 がしかしだ、早着替えを済ませた長が現れては俺に言ったのだ。


「シロ、オスはお前だけなのです」助手コス

「お前が見なければいいのです」博士コス


 アーハァン?←納得


「失礼しましたー!?」逃走


 その通りです長!俺しかいませんでした!存分に脱いでください!俺はしばらく木陰に隠れて熱を冷ましますから!





「はぁ~…」


 適当に駆け抜けて見晴らしのいいとこに座り込んだ。


 静かだな森の中は、綺麗な満月だ…。

 

 一方的図書館の方からキャッキャッウフフと声が聞こえてくる。


 でもあっちは楽しそうだなぁ?一旦離れたはいいけど、どのタイミングで戻ればいいのかな?オスは俺だけね… よく考えたらそうか、俺しかいないのか。


 改めて考えると変な感じ、でも俺が恋をするのは一人だけ… 即ち“ツガイ”というやつは一組しか出来ないんだ。


 結局俺はどっちが好きなんだろう?でも二人に限らずみんな可愛いし仲良しだから、二人に絞れたのは逆に頑張ったほうかな?いや、そんな生っちょろいこと言ってたら二人に失礼だ。


 結局デートにも誘えてないし…。


「ハァ…」


「また溜め息か、なんか悩んでるのか?」


「え!?」


 この声はツチノコちゃん!?

 ぐるりと振り向くとこれまた衝撃を受けた、なぜならば。


「よ、よう…?もう戻っても良さそうだぞ?」スナネココス


「おぉ…」鼻血タラー


 ビュ、ビューディフォー…。


「ジロジロみるな!?スナネコが無理矢理オレの服を剥いだから仕方なくなぁ!」


「そういうフリフリのもいいと思うよ?」鼻血ダラダラ


「まずはそれを止めろ!みっともない!ったく…」ゴシゴシ


「んぁ… ごめんなさい…」

 

 いつだったか… パスタで汚れた彼女の口を拭いたっけ?いや俺が拭いたのはスナネコちゃんだったか?そしてスナネコちゃんがツチノコちゃんの口を拭いたんだ。


 つまり、今日は逆だね?って言いたいんだ… しかし今日は鼻血がよく出ます。


「それで、何悩んでるんだよ?」


「え?」


「あんな露骨に溜め息ばっかついてたら気にもなるだろうが!」


「あ、あぁ… うん… え~っとぉ…」

 

 困ったな、デートに誘おうと思って!なんて本人に相談できませんよ、しかも二人だ!


「言いにくいなら、無理に言う必要はないけどな?」


 満月が浮かぶ森の中に二人、並んで座り込む。


 チラッと横目で彼女を見ると、綺麗な髪を月明かりが照らしどこか幻想的な雰囲気を見せてくれる。

 服のこともあってか、いつもより開放的に見える彼女を見ると鼓動が早くなる。


「っくし!」


「あ、大丈夫?ツチノコちゃん寒いの苦手でしょ?」


「あぁ、そういう動物だからな…」


「スナネコちゃんの服じゃあ寒いよね?これ着てて?」

 

 サッと俺の上着をかけてあげた。


 この時期夜は冷えるからね、元は変温動物?の彼女にはフレンズ化しても寒さは辛いだろう。


「すまない… お前は寒くないのか?」


「まぁ、ツチノコちゃんに比べたらね?」


「じ、じゃあ借りるぞ?ありがとうな?」


「うん…」


 どこか汐らしく… 照れくさそうに笑う彼女を見ていると胸が高鳴って… なんか苦しくて…。


 思うんだけど、これが恋なんじゃないのか?


 じゃあ俺が好きなのは…。


 ツチノコちゃん?


「どうした?」


「いや…」


「そういえばさっきの、なんだ?」


 さっきの?とは?なんだったかな?

 首を傾げていると向こうから教えてくれた。


「都合のいいときにどうこうって言ってたろ?なんだ?」


「あ、あぁ~…それね?」


 言えよ、聞くだけじゃないか?「デートしませんか?」って、これだけだ。

 もともと聞く予定だったんだ!早く聞け!このあとかばんちゃんにも言わなきゃならないことだぞ!


 グッと拳を握るが手が震えるのがわかる。


 ダメだ… 上手くしゃべれないよ…。


 弱いな、俺。


「おいどうした?汗なんかかいて?具合でも悪いのか?」


「なななんかさ… ごめん、ちょっと… 手を握ってもらってもいいかな?」


「お、おおう!?よくわからんが必要なら仕方ないな///」ギュウ


 はぁ… 少し落ち着いた、逆に落ち着いた。


 ひとつ深呼吸… それからじっと目を見ます、恥ずかしくても反らしてはいけない、面と向かって聞きましょう。


 じゃあいくぞ!せーのっ!




「今度デートしよう!」 




 よし!言えた~!?!?!?

 


「で、デート!?あれか?な、仲良くでかけるやつか!?」


「う、うん…///」


「なぜわざわざそんな恥ずかしい言い回しを… いや、ままままぁいい!要は一緒にどこか行けばいいんだ!そうだろ?」


「それでその… お返事を聞かせてもらえると…?」


「オ、オレでいいのか?だってお前… いや、お前がそう言うならオレは構わんぞ?」


 え…?あ、え?い、いいの?マジかよ。

 自分で言っといてビックリしてる。


「ま、まぁ知らない仲じゃないしな?なんの理由があるかは知らないが、お前が行きたいって言うならいいぞ?」


「ありがとうツチノコちゃん、はぁ緊張した…」ドキドキ


 とにかく良かった、でもこりゃあ大変だ… もう一回あるのかこれ?何回もあったら心臓持たないよ、ドキドキして死ぬかもしれない。


 まぁ誘ったはいいとして、どこにいくかなんて決めてないんだけど。


「…ん?」


「どうかした?」


「いや、なんでもない… そろそろ戻るぞ?みんなお前を待ってるからな?」





 その後パーティーも無事終わり、ほんの少し肩の荷が降りた俺は少しだけ上機嫌に後片付けをした。


 デートか…。







「かばんちゃん?どうかしたの?寒い?」


「ううん大丈夫… 今日はもう帰ろっかサーバルちゃん?」


「う~ん… うん、わかったよ!」

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