第59話 ねつあい
「はい、これで全部ですよ~?」
「フリシアンさんいつもありがとう、今度お礼にお菓子でも持ってくるよ」
「いいえいいんですよぉ?いつもミルクを美味しく飲んでもらって、私も牧場の子達も嬉しいですから!」
ニッコリと笑ったフリシアンさんはタユンタユンとたわわなミルクを揺らしながら俺を見送ってくれた?
「あぅ…じゃあ、また来ます///」
「はーい、お待ちしてま~す!」
いろんな子に慣れたけど、俺あれだけは慣れない、だって男の子だもん…。
でも眺めるわけにいかない、そういう悪事は誰かがみている。
さておき、俺は今ちょうど切らした乳製品を牧場に取りに来たところだ。
相変わらずフリシアンさんはフリシアンさんだったし俺は俺だった、何を言ってるかわからないと思うが俺にもわからない。
それからまったく話は変わるがショーの帰り際にこんなことを言われたんだ。
“女難の相がでているぞ?”
あれはそう、これからひとっ走りしてさっぱりしてから帰ろうかな?というときだった。
あの子には初めてあった… 彼女の名は。
…
「しっしっしっしっ!ちょいと待ちな、若き獅子よ!」
「え… 誰?」
彼女は見たところペンギンのフレンズだと思われた、見た目はPPPの面々よりも幼い… だが妙に貫禄がある、博士たちと似た感覚だった。
「私はジャイアントペンギン、ショーを見させてもらったぞ?アドリブが効いててなかなかよかったじゃないか?」
「ジャイアントペンギン… さん?ありがとう、俺は…」
「知ってるよ有名人、シロだろう?皆私のことはジャイアント先輩と呼ぶ、お前さんもそう呼んで構わないよ?」
掴み所のない子だと思った、そしてその時に彼女は俺に対して意味深なことを言い残した、それがやけに俺の頭で引っ掛かる。
「それにしてもお前さん… 女難の相がでているぞ?」
「女難の相?そんなのわかるの?」
「なに、いろんなヤツの顔を見てたら何となくわかるのさ?若き獅子よ、優しいのはいいことだが八方美人はほどほどにしときなよ?」
「八方美人だなんて…」
そうだろうか?でも冷たくなんてできないし… 加減が難しいんだけど、まぁせっかく忠告されたのだから考えておこう。
「ま、なにか困ったら相談くらいは乗ってやるぞ~?私は大体みずべちほーにいるからね~?またな若き獅子よ~!しっしっしっしっ!」
「あ、うん… またね?ジャイアント… 先輩?」
プラプラと手を振り行ってしまった… しかし不思議な子だ、女難の相だって?フレンズはみんな女の子だし博士たちのワガママなんかのことなら確かに当たってるのかな?しかし八方美人か… そうなのかな?
なんかモヤモヤするなぁ。
相談って恋愛相談とか聞いてくれるんだろうか?この話をするならどんな子かもう少し知りたいところだけど。
…
そんなことがあり少し女性にびくついているのは否めないのだ、フリシアンさんのお胸に目線が行くことで「アイツはおっぱい星人だ」とか不名誉な呼ばれ方をされてみんなに嫌われたりしたらそれは確かに女難と呼べるかもしれない。
ともあれさっさと帰るか… 先日紅葉の話からハロウィンにまで広がってしまいお菓子を大量生産することになってしまった。
みんなで騒ぐのは楽しみだが余計なこと言っちゃった感も否定はしない、お菓子作りはまだ手探りなんだ。
…
その頃図書館では、シロの帰りを待つ二人がハロウィンについて調べていた。
「博士、どうやらハロウィンというのはこのカボチャというのをたくさん使うようですよ?」
「しかしこんなにたくさんのカボチャに顔をつけてなにがしたいのでしょうか?さっぱりわからないのです…」
文字を完全に読むことができない二人には挿し絵などが本の内容の理解へ行き着く鍵となる、カボチャに関してはハロウィンを知らない人が見たとき確かにそんな反応になるのかもしれない。
そんな時、外から物音に二人は気付いた、どうやら来客らしい。
「シロですかね?」
「いえ、バギーの音が聞こえないのです」
「ごめんくださぁ~い?」
そこに現れたのはPPPのマネージャーであるマーゲイだった、今回はヒーローショーのことではないがそれに関しては丁寧にお礼を言う彼女。
しかし、本題に入ると急に神妙な顔に変わった、深刻な相談らしい。
「シロさんはお留守?」
「少しお使いです、すぐ戻ると思うのです」
「何か用なのですか?」
「いえ… じゃあお二人に先に相談させてください」
その内容はPPPマネージャーとしては深刻、島の長の二人からすれば呆れたものだった。
しかしまだ噂の範疇を出ない、三人ともまさかそんなはずはと信じきることができていない。
「ということなんですが… どう思われますか?」
「何かの間違いでは?」
「シロにはすでに想い人が…」
助手、その時うっかり口を滑らせる。
この時長達が恐れたのはアイアンクローである、マーゲイはそれを聞き逃さなかったが二人もここで焦った素振りは見せずさらりと流す。
「え?シロさんが誰かに恋を!?」
「なんでもありません」
「話をつづけるのですマーゲイ」
「あ、はい… みずべちほーでは目撃証言が多くてですねぇ?」
聞けば聞くほど、博士たちも顔をしかめた、自分達の知る情報とはあまりにもかけ離れていたからだ。
これは事実確認が必要なのです…。
二人は目で語り合うとまずマーゲイに帰ることを促した。
「一旦帰るのですよマーゲイ?」
「我々はシロに事情を聞くのです、お前はお前の方で話を聞いておくのですよ?」
「わ、わかりました!」
マネージャーマーゲイはみずべちほーへ、博士達はシロを問い詰めてやろうと彼の帰り今か今かと待ち続けた。
…
「ただいまー… ってえぇ?どうしたのさ?」
帰ると二人が仁王立ちで俺を待ち構えていた、その立ち姿はまるで師匠のようだ。
「聞きましたよシロ?」
「お前というやつはまったく…」
なんなんだ急に… ははーん?腹が減って不機嫌なんだな?
「なに?晩御飯はシチューだよ?」
「「じゅるり… ではなく!」」
なにやら怒ってるような呆れているような… 特になにかした覚えはないけど二人はなにが言いたいのだろうか?
「前の話ではないですが… おまえまさかPPPに手を出すとは」
「やはりアイドル好きでしたか、節操のないやつです」
「待って… どういうことそれ?」
とんだ風評被害だ、アイドルに手を出したってか?俺はそんなことしてない。
しかもこの言い方… 博士たちが発端ではないのか?誰の仕業だ?何を聞いた?
話を聞くと衝撃の事実が明らかとなった。
「えぇ!?俺とプリンセスちゃんが恋仲だって!?」
「マーゲイが来てそう言ったのです」
「みずべちほーでは大胆にも仲良くデートをするお前たちの目撃情報が相次いでいるそうです」
「デートなんて!?いや… もしかして~」
「心当たりがあるようですね?」
「さっさと真相を話すのです」
あ、あれのことかぁ~…。
…
ジャイアント先輩が去った後、そこで気を取り直してひとっ走り行くか!というときだった、プリンセスちゃんと会ったのだ。
「あらシロ?まだ帰ってなかったのね?」
「うんちょっとね?今さ?ジャイアント先輩?って子に会ったんだけど… どんな子なの?」
彼女もライブが済みその辺をブラブラしてたそうだ、アイドルとは言え常にアイドルではいられない、普通のフレンズとして気分転換でもしたかったのだろう。
がここで会ったのも何かの縁、俺は例のジャイアント先輩のことを彼女に尋ねた。
「先輩と会ったの?変なこと言ってたでしょ?」
「う~んまぁ… うん、言われた」
「そのまんまよ?でも言ってることは正しいし悪いフレンズじゃないわ?私も悩みごとがあったら結構相談するもの!」
そうなのか… トップアイドルのセンターが言うんだから間違いないんだろう、今度おやつでも持ってご挨拶に行くか。
「もう帰るとこ?引き止めちゃったわね」
「いや、ひとっ走りしてから帰ろうかな?って、天気もいいしちょっと気疲れしちゃったからさっぱりしたくて」
「へぇ~… あの、一つお願いがあるんだけど… いいかしら?」
いつもの自信のある態度とは別に、申し訳なさそうな控えめな態度で俺にそう言った彼女、何を頼まれるか知らないけど可能なことなら聞いてあげようと思う。
「その、バギー?っていうの?ちょっとだけ乗ってみたいんだけど、ダメ?」
「運転はさせられないけど… 良かったら後ろに乗ってみる?」
「いいの?むしろそのほうがいいわ!私じゃ動かせないもの!」
ってアイドルにそんなこと頼まれちゃ断れないね、プリンセスちゃんのことはビビらせてばかりだからここらでイメージの回復といこう。
で後ろに乗せてみずべちほーを走り回ったんだ、夕日が綺麗だったなぁ…。
アイドルを後ろに乗せて夕日を背に走るなんて贅沢だろう?
プリンセスちゃんも言ってたよ。
「速い速ぁーい!アハハハ!」
って、御満悦でなにより。
ペンギンは地上を速く走れる訳じゃないしヒトが乗り物に乗るのと同じ感覚があるのかもしれない。
なんだか意外というか、彼女はしっかりしたイメージだったから、手放しではしゃぐ姿が新鮮だったというのが正直な意見だ、アイドルだろうがフレンズだろうが女の子であることに変わりはないんだろう。
その後普通に送り届けると「ありがとー!」って元気よくお礼を言って彼女は帰った。
だからそれを俺もプリンセスだけに「姫に喜んでいただきありがたき幸せ」って答えたんだ。
でも彼女、「また変なこと言ってる…」ってジト目を向けてきてね?ちょっぴり残念です。
俺はそんなショーの帰りのことを二人に話したすると呆れ返ったのか溜め息混じりに納得してくれたようだった、そんなにイケナイことだっただろうか?
「人騒がせにもほどがあるのです!」
「すぐに誤解を解くのです!“きしゃかいけん”を開くのです!」
記者会見てあなた…。
その言い方は意味わかって言ってるんだろうなぁ… どこで知ったんだそんな言葉?
しかしそうか、ジャイアント先輩の言ってた意味を今理解した。
「はぁ~女難の相と八方美人か… お見通しだったって訳ね」
「なんの話です?」
「そんなことよりもすぐにマーゲイにこのことを知らせるのです、熱愛スキャンダルを終わらせるのですよ」
それにしてもなぜ二人がここまで焦るのだろうか?プリンセスちゃんはアイドルだし、事実ならハッキリしておかないとならないのは分かる、ファンに失礼だ。
しかし俺が誤解されても俺が困るだけなんだけどな、二人に不利益なことでもあるだろうか?結局誤解なわけだし。
「なんですかその顔は?お前がこのままでいいのならそれでいいのですが」
「PPPの影響力を甘く見てはだめなのです」
「いやそうだけど… なんで二人がそこまでしてくれるの?俺が焦るならともかく」
「では誰とはハッキリ言わないですがシロ?」
「おまえの想い人の耳にこの話が入ってもいいのですか?」
「そ、それは!?」
い、いやだ… それは困る… というか待てよ?なんだって?
「じゃあ… 二人とも俺が好きな子知ってるの?」
「それはおまえに確認しないとわからないのです」
「まぁ、可能性は高いと思いますが」
「本当に?また暴走しないでよ?」
「なにもしないのです」
「我々、アイアンクローはこりごりなので」
「そ、そう…」
本命の子ね… 二人は誰のことだと思ってるのかしらないけど、俺が本当に好きな子って… 誰?どっち?
今考えても同じだ、答えはでない。
とにかく二人は俺の為に動いてくれるそうだ、これだから二人のワガママもついきいてしまうのだ。
とわけで、俺たちは翌日お急ぎ便で再度みずべちほーへ向かった、まずはお詫びにクッキーを焼いたので皆さんに献上する。
「皆さんお騒がせしております、こちらつまらないものですが…」スッ
「わぁ~いい匂いだねー?」
「フルル~?がっつくなよ~?」
着くなり早速フルルが匂いに気付きクッキーを貪り始めた、喜んでる顔を見るに好評のようだ。
「し、しかし驚いたよ… この前はフルルかと思えば今回はプリンセスだなんて」
「でも話によると、勘違い… なんですよね?」
「ちょっと後ろに乗せてもらっただけよ!そう言ったでしょ!」
なんでもPPPメンバーは照れてるだけだと思い笑いながら聞いていたそうだ、マーゲイさんは博士達の司令により事実確認としてしつこく聞いたので間違いないと断定していたようだが。
「ごめんねプリンセスちゃん?大変だったでしょ?」
「別にシロが悪い訳じゃないわ?私もまだまだアイドルとしとの自覚が足りなかったってこと… プライペートもアイドルであることを忘れずに過ごさないとね!」
そんなに無理をして自分を見失わなければいいけど…。
ともかく緊急記者会見はライブ後に発表された。
「俺たちはよい友人であり他のメンバーともそれは変わらず、差はない」
というような内容だ、みんな納得してくれたようだと信じたい。
ついでに他のちほーに響かないようになんでもないことを噂にしてほしいとすら思う。
さて、これでわかった。
どうやら“あの人”の助言は素直に聞いた方がいいらしい。
「二人とも、急にこんなことになってごめん… ちょっと先に帰っててくれる?寄りたいとこがあるんだ」
「また面倒を起こさなければいいのです」「晩御飯までには帰るのですよ?」
「うん、ありがとう」
俺が向かったのは他でもない、この一件を予言していた人物のもとだ。
「ジャイアント先輩、探したよ?」
「しっしっしっしっ!来ると思ったぞ若き獅子よ、大変な目にあったみたいだねぇ?」
「一応確認だけど広めたのって先輩じゃないよね?」
「あたしぁそんな面倒なことしないよ、ほんのちょこっとヒントを与える、それだけさ?」
わからないな… いったい何を考えてるんだろうか?ていうか今回の件のヒントも誰かに与えてたらあなたは戦犯だからな。
でもここはプリンセスちゃんを信じてこの子を信用してみよう、頼むぜ先輩。
「で、悩んでるんだろう?恋愛相談とみたぞ!しっしっしっしっ!」
「う…!?なんでわかったの?」
「顔に書いてあるぞ~?恋に悩める若き獅子よ!じゃ、とりあえず聞くだけ聞こうか?」
不適な笑みを浮かべ俺が話すことを今か今かと待ち構えている、どうやら彼女には変に隠しても無駄そうなので俺は洗いざらい話すことにした。
二人の子のどちらが本命なのかわからない。
まずツチノコちゃん。
パークに来て始めにツチノコちゃんと会った。
しばらくして彼女と旅をして、二人で助け合って進んでいくうちにおかげでいろんな子と会えた。
彼女には感謝してもしきれないことが多い、献身的な介護も受けたのもそうだが何度も励まされたのが俺の中では彼女の存在を大きくさせている… 気がする。
それからまたある日、パーティーをした時かばんちゃんと初めて会った。
なぜか彼女と面と向かって話すとき緊張したのは、もしかしたら一目惚れとかいうやつなのかもしれない。
それから頭もいいのでよく知恵を借りることも多かった。
なんでもできて優しくて、だんだん甘えるようになってしまい、でもそんな彼女を俺も助けてあげたくて… でも発情の件で…。
でも彼女は乱暴に服を破り捨てた俺を見て怖がりながらも受け入れようとしたんだ…。
優しすぎる、そんな彼女の“初めて”を野獣の如く奪って傷つけるくらいならと死ぬ気で正気を保った、だってどーせ奪うなら目一杯優しくしたいと思ったから。
二人には迷惑かけっぱなし、それだけはわかる。
…
「なるほどなぁ、同時に二人の子をな?」
「そんなことってあるのかなって…」
ジャイアント先輩は顎に手を当てて少し考えるとニッと笑ったまま答えた。
「どちらかはそうでないと思うなら、確かめてくるといい?ほら、デートしてきなよ!」
「え?で、デート?」
「そうさ、よりおまえの胸を締め付ける方がおまえの真の想い人だ」
結構単純だけどそんなもんなんだろうか?いやでも、デートて…。
「いいか?愛情なのか情なのか… それを見極めろ若き獅子よ、もし片方が情でそんなこと思われてるとしたら… それは惨めだろ?自分がパークで一番のモテ男だとでも思ってるのか?まったく何様だお前は?」
「そこまで言わなくても…」
でも、これって贅沢な悩みなのかな?やっぱり…。
…
それから俺は丁寧にお礼を言ってその場を後にした、帰り際先輩は「頑張れ若き獅子よ!しっしっしっ!」とからかってるのか応援してくれてるのかわからないが笑いながらそう言っていた。
しかし本当に掴めない人だ… 普段何してるんだろうか?
さてと、日が落ちてしまったな、帰るか。
…
「ただいま~?遅くなってごめ…」
「遅すぎるのです!」ガシッ!
「お腹と背中がくっついているのです!」ガシッ!
「あぁ~!?ごめんごめんごめん!?腕ひしぎやめて~!?」グギギ
「「許せんッ!…なのです!」」
…
この後、めちゃくちゃ作らされた。
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