第58話 ほんばん

 衣装が届き、やる気に満ち溢れ、アドリブしすぎてもはや原型をとどめているのは大筋の流れだけとなり果てた。


 俺たちは練習に練習を重ねとうとうヒーローショー本番の日を迎えたのであった。


「いやぁ皆さん、気合い十分ですね!リハーサルなのに本番のような気分になりました!」


「フッフッフッ… お前らのステージも我等ブラックガオガオ軍団の物だ!」


 \きゃー!ブラックガオガオ軍団よー!?/←PPPの皆さん


「仮面フレンズ!ホワァイッ!!!」キメッ!


「フッ…でたな仮面フレンズ!このフンボルトペンギンがどうなってもいいのか?」グイッ


「ジャパリマンいつくれるのー?」←人質


「卑怯なやつめ!許せんッ!」


 とまぁ、リハーサルやその間も姉さんは悪役で俺はヒーローを拗らせていた。


 ダメじゃないかフルルさんもう少し緊張感持ってもらわないと?←プロ気取り


「大将まだ本番前だからもうやめようよ!」


「何て言うか… やっぱり姉弟なんだね?」


「なぁ、先にオレがしゃべるんだったか?あれ?ツキノワだったか?ややややべぇよぉ…わかんねぇよぉ!?」


 このように、俺と姉さんが拗らせてる中ツキノワさんがオーロックスさんの肩を揉みリラックスさせて緊張を解いたりしていた。

 そうして時間はすぐに本番直前となり、マーゲイさんはお先にステージに挨拶に向かった。


 覗いてみると、すでに観客がたくさんいるのが分かる。


 流れの確認だが、マーゲイさんがみなさんに挨拶をする。

 

 ここで「もうしばらくお待ちください…」が合図となり姉さんたちがステージに上がりその場を占拠してマーゲイさんを人質にする。


 そして定番の流れでみんなが「助けてヒーロー」と三回叫んだら俺がバギーで登場。


 セリフ→殺陣→セリフ→殺陣→苦戦→セリフ 


 ざっくりこの流れの後、みんなの「頑張れ」が三回聞こえたら復活して姉さんを倒す。

 そのあとは演技だからね、姉さんたちが妙な風評被害に合わないようにみんなで仲良く挨拶だ、悪役は辛いっていつの時代も言われてる。





 そしてステージ裏。


「お前達、やる気は十分のようですね?」

「我々はここで勇姿を見届けているのです」


「私はこのような瞬間に立ち会い、ストーリー脚本を担当できたことを誇りに思う、特等席で君達の勇姿を眺めさせてくれ」


 オオカミさんも感慨深くなったのかどこか遠い目をしていた。


 俺はオオカミ大先生の指導のおかげでヒーローになれた、姉さん意外は問題だらけの俺たちが今や役を忠実に演じているのだ… いや、なりきっている!最早“仮面フレンズホワイト”とは俺のことを指すし“ブラックガオガオ軍団”とは姉さん達のことを意味する!例外はない!

 そりゃ始めこそ「できない!」と突っぱねたし、オーロックスさん達も「やべぇよぉ…」と弱音を吐いていた、でも今となってはほら!もう俺達にしかできないことなんだ!


 PPPは今最終チェックの最中… 曲合わせやリハーサル、打ち合わせなどを行っている。

 

 その時間稼ぎ… 引き受けよう!





「それではみなさん!PPP登場までもうしばらくお待ちください!」


 合図だ!


「んじゃ、お先に行かせてもらうよ~?」


「練習の成果を見せるよ!」


「弟さんも、うまくやろう!」


「最初にオレがしゃべる… 最初にオレがしゃべる…」


 オーロックスさんだけプレッシャーに潰されそうになっていたけどまぁ大丈夫だろう、練習はできてたし彼女はそんなに弱くない。


 で俺はバギーで待機。


「ラッキー、エンジンチェックは?」


「大丈夫ダヨ イツデモデレルヨ」


 よし…。


 そしてとうとう待ちに待ったヒーローショーが幕を開けた。


「ハーハッハッハッ!」


「なんですか!?あなたたちは!?」←迫真


 ライオン総統の高笑いに続き部下達がステージに現れた、マーゲイさん迫真の演技で対応、流石だ。


「このステージはオレ達ブラックガオガオ軍団が占拠した!」


「ここにいるやつら全員分のジャパリマンを頂く!」


「PPPのマネージャーは人質にさせてもらうわぁ~!」


「あ~れぇ~!お助け~!」


 ステージに上がったブラックガオガオ軍団の面々は手始めにマーゲイさんを人質にとりジャパリマン回収作戦に入る。


「PPPのステージが見たいやつらはすぐにジャパリマンを我々に献上しろ!」オヤダマボイス


「親分!客の中に反抗的なヤツらがいます!」


「なにぃ…?そいつらも人質だ!連れてこい!」


 親分の指示により客席へ降りた三人はノリのいいフレンズをステージに連れていく、その際その子達にはコソっと説明をするのだ。


「おまえ!一緒に来い!」


「わーい!捕まっちゃったぞ~!」


 コツメちゃんである、恐らく素の状態でこれ以上ノリのいいフレンズはいない、オーロックスさんはナイスチョイスだ。


「カワウソ!?待て!」


 ジャガーちゃんがガチな強者オーラを出して牙を剥いている、目がマジだ。

 近くにいたオリックスさんはすぐにネタバラしの説明をした。


「まてジャガー!?これはぱふぉーまんすなんだ!あ、そうだ!よし!お前もこい!」ガシィッ


「え?えぇ~!?」


 二人確保、続いて…。


「カメレオ~ン?ちょっと協力してよ?」コソコソ


「ふぇあ!?ツキノワ殿だったでござるか?これはなんの騒ぎでござるか?」


「ひーろーしょーとかいうのでさぁ?人質の振りしてほしいんだよ、演技だからさぁ?怖がらなくていいよ?」


「わ、わかったでござる…」


 さりげ仲の良い二人、ツキノワさんは交流を使い人質に協力してもらう作戦のようだ。


 これで計3人の人質を取りステージに上げたブラックガオガオ軍団、そこに再び姉さんの名演技が入る。


「ハーハッハッハッ!ライブもジャパリマンも我々の物だ!これからパークのジャパリマンは我々が管理する!分けてもらいたいヤツは私に従え!」


 \ひど~い!/ザワザワ


 今のところ順調だ、ところで人質が揃ったので博士たちは出番無い、残念そう?にしてるかと思ったが。


「予定通りですね助手!ニヤリ…」

「はい博士、無事人質も揃ったのです、ニヤリ…」


 それならそれでいいって感じか?なんだかその笑いが不安なんだが。

 

 まぁいい…。

 

 そしてここで取って付けたようにマーゲイさんの説明タイムが入る。


「何てことでしょう!パークの危機です!この危機を何とかしてくれるヒーローはいないの!?は!そうだ!ライブに来てくれた皆さん!ヒーローを呼びましょう!大きな声で呼べば必ず来てくれます!助けてヒーロー!皆さんも!はいせーのっ!」



 \助けてヒーロー!/


「声が小さいですよー!もう一度!せーのっ!」


 \助けてヒーロー!!/


「もう一回!最後にもーっと大きな声で!せーのっ!」


 \助けてヒーロー!!!/


 来た!予定の三回目だ!


 俺はその割れんばかりのヒーローの呼び声を聞きバギーのエンジンを掛けた、そして勢いよくステージへ飛び出すのだ。


「待てい!ブラックガオガオ軍団!」ブォォォン!


 ステージにバギーで乗り上げたヒーロー(俺)は悪の前に立ちはだかる。


「なんだお前は!何者だ!」


 そして姉さんのセリフを合図に、さぁ声高らかに答えよ!そう俺の名は!


「フレンズ達の友情に希望を見た男…!仮面フレンズ!ホワァイッ!!!(ホワイト)」ビッシィ!キメッ!


 \ヒーローダァ!/ \ヒーローキテクレター!/←好評


 人質の皆さんもここぞとばかりに喋ってください。


「ヒーローだってー!面白い面白~い!」


「どういうことか、全然わからん!」


「なんだかよくわからないけどやったでござる!これで助かるでござるよ!」


 よし。


 歓迎を受けた仮面フレンズホワイトはとうとう宿敵ブラックガオガオ軍団との戦いに挑むのであった。


「みんなのジャパリマンを奪う悪党!許せんッ!」


「たった一人で我々に挑むとは命知らずなヤツめ!お前ら!痛めつけてやれ!」


 敵の親玉の一声で次々に襲いかかる敵達、しかしヒーローはそんなヤツらを返り討ちにしてやるのだ!


「オラぁ!その仮面剥ぎ取ってやるぜぇ!」


 オーロックスさんは早速本番にも関わらずリハと違うセリフを使い槍を片手に突っ込んできた、彼女とはここで数回組み合い押し返す。


「くらえ!ホワイトパァンッ(パンチ)!」


「ぐぁ!?強い!」退場


「よくもやってくれたな!」

「私たち二人相手にいつまで持つかな!」


 ここは尺の都合上オリックスさんとツキノワさんの2対1の殺陣である、上手いことやったあと退場してもらう。


「せい!でぁ!とう!」


 と大きめの動きを見せて場を盛り上げる作戦である、そしてまず先にツキノワさんを。


「でぇあッ!」


「や~ら~れ~た~!」退場


 次にオリックスさんを。


「とゥアッ!」


「うぁ~!強い!?」退場


 一丁上がり。


 退場した三人はここまでだ、ゆっくり休んでいてもらおう。


 そしてとうとう悪の親玉である姉さんとの直接対決が始まろうとしていた、がんばれ仮面フレンズホワイト(俺)。


「残るはお前だけだ!ブラックガオガオ軍団総統!覚悟しろ!」


「ふん!貴様など私一人で十分だとわからんのか!愚かな!来るがいい!」


 VS姉さん。

 黒と白のぶつかり合いは嵐を呼ぶ。←呼ばない


 まず、始めだけいい感じに互角に戦う。


「やるな!だがここまでだ!」


 姉さんのこのセリフを合図に俺は次の攻撃で不本意ながら負けそうにならなくてはならない、そういう演出だ。


「クッ!このままではやられてしまう!」

 

 そして俺のこのセリフを合図に人質マーゲイさんが再び客席に声をかける。


「大変!ヒーローが苦戦していますよ!?皆さんで応援しましょう!ヒーローがんばってー!せーのっ!」


 \ヒーローがんばってー!/


「まだまだ!声がちいさーい!せーのっ!」


 \ヒーローがんばってー!!/


「もう一度!すっごく大きな声でお願いします!せーのっ!」


 \ヒーローがんばってー!!!/


 三回目の声援を受けヒーローは立ち上がる、さぁ行くぞ覚悟しろ。


「パーク中のフレンズを守るため… 負けるわけにはいかない!いくぞ!ブラックガオガオ軍団!」


「何度やっても同じだ!」


「「おぉぉぉぉおッ!!!」」


 拳が交差し姉さんが吹き飛ぶ… そしてとどめのフレンズキックでこの戦いは幕を閉じる。


 ハズだったが!


「おのれ!仮面フレンズ!」


「とどめだ!」


 距離を取りキックの姿勢を取る俺だったが、その時筋書きと違うことが起きる。


「させんぞ!ハーハッハッハッ!これで攻撃できまい!」ガシッ


「わーい!また人質になっちゃったぞ~!」


 ここに来て姉さんのアドリブが発動である、これは流石に無茶ぶりだ… もう終わるところをひきのばしているのでオオカミさんも知らないのだから。


「まずいなこれは… しかしシロ君とライオンさんのコンビネーションを信じるしか… どうする博士?ん?あれ?博士たちはどこへ?」





 なにやってんだよ姉さんマジで勘弁してやそういうの。


「仮面フレンズよ!こいつがどうなってもいいのか!」


「極悪非道の冷血動物め!許せんッ!」


 アドリブで誤魔化すしかない、しかしその時であった。


 マジで完全に筋書きから外れた事態が起こったのは。


 ガシッ!

 2つ影が空より現れ、悪の手から罪の無いコツメカワウソは救われる。


「ッ!?なにぃ!?人質が!?」


「やったやったー!解放されたよー!飛んでる~!」


「貴様ら何者だ!」


 コツメちゃんを救いだし姉さんを出し抜いた存在、それは…。


「「我々は!」」


 なに!?その阿吽の呼吸でピッタリと合った話し方はまさか!?


「哀しみの長!仮面博士!… なのです」シュバシャキン!←哀しんでない


「同じく、怒りの長!仮面助手!… なのです」シュビ!ビッシィ!←怒ってない


 この時、俺は自分を見ているようで少し恥ずかしくなった… そしてその隠す気のないネーミングをどうにかした方がいい。←特大ブーメラン


「チッ!仲間がいたのか!」


「さぁホワイト!とどめの合体攻撃をするのです!」


「え?」


「合体攻撃で戦いを終わらせるのです!この島のヒーローなので」


「…」


 なんだよ突然現れて、でもこの戦いを終わらせる為にはなんだかよくわからないがやるしかない!


「よし!いくぞ必殺!」


「スーパー!」

「トルネード!」


「「「フレンズキィーック!!!」」」


「うぁぁぁあ!?」舞台裏ガシャ~ン!



 姉さぁーん!?


 自ら舞台裏に突っ込んでいくなんて凄まじい役者根性だ!痛くないのかな!?


「みなさーん!平和が戻りましたよー!」


 \わーい!/

 \ありがとう仮面フレンズ!/


 舞台は大成功のようだ。


 このあとすぐにマーゲイさんが。


「という待ち時間の舞台演出でしたー!皆さん楽しんでいただけましたかー?このあとPPP登場でーす!」


 とフォローを入れた後に、姉さんたちとふたたび舞台に上がり仲良くご挨拶をした、これでブラックガオガオ軍団を本気にする子達はいないだろう、ホッとした子も多いようだ。





「みんな大成功だったね?ライオンさんが人質をとったときはどうなるかと思ったが… 二人の登場にも驚いた!でも結果オーライ!みんなのいい表情いただきました!」


「ふぅ~疲れた疲れたぁ… 最後勢いよく飛びすぎてちょっと痛かったなぁ」


「大丈夫姉さん?あんまり無茶しないでよ?」


「なぁにお前ほどの無茶はしないさ!」


 予期せぬアドリブに混乱はしたものの、乗り切ることができて本当によかった… 瞬間的な盛り上がりはPPPを超えたとさえ思ってるよ俺は。


 ところで…。


「ねぇ、なんで出演してんの?聞いてないけど?」


「それは当然です」

「言ってないので」


 おうおう役者ナメてんのかねーちゃん達?台本通りやってくんねぇと困るぜ?←アドリブ祭り


「無茶ぶりにもほどがあるよ!ていうか二人がやるなら俺でなくてもよかったじゃん!すげー困ったんだよ!?尺も無いのにどーやって助けようかと!」


「愚問ですね、ヒーローとは遅れてやって来るのです」

「我々はお前が苦戦する瞬間を待ち望んでいたのです」


 そ、それがヒーローの言葉か…!


「信じるヤツがジャスティスなのです」

「我々のおかげで丸く収まったのです」


 二人のせいでややこしくなったんだよ!


 ん?でも二人は俺が困るの知ってた?即ち最後のアドリブは仕組まれたものだったってことか?


 つまり…?


「姉さん知ってたの?」


「ちょっと前にねぇ?博士たちも目立ちたいから最後伸ばしてくれってさー?」


 それであんなアドリブを?勘弁してよ… っていうかさ!


「結局二人が目立ちたいから俺にやらせたわけ?」


「よくわかりましたねシロ」

「花丸をくれてやるのです」


 このッ!その為に俺は弱味を握られノリノリでヒーローやらされたってのか!ノリノリだったんだぞ!恥ずかしいだろうが!


「ゆ゛る゛さ゛ん゛ッ!」


「は!?」ガシッ 

「んな!?」ガシッ


 俺は再びヒーローとして二人の前に立つと、例の如くアイアンクローで頭をギリギリと締め付ける


「何をするのですかぁ!?」

「あどけない野生の少女に味方するのではなかったのですかぁ!?」


「よくも哀れな俺の心を利用したな!情け無用の男!仮面フレンズ!ホワァイッ!!!(ホワイト)アールッ!エェッ!(RX)」


「「あぁー!?!?!?」」ギリギリギリ





 大変な目にあったなぁ… まさか俺を利用して自分達が目立つとは。

 まぁ姉さんたちと色々できて楽しかったしいいんだけど、やっぱり長だからって甘やかさないで然るべき制裁を加えておかないと。


 まったくなにが信じるヤツがジャスティスだ…。


 はぁ~あ、しばらくヒーローはやりたくないね?実はヒーローになるのに憧れてはいたんだけど、やってみるとこんなもんか。


 いいんだいいんだ、心から愛する人のヒーローでいられればそれでいいのさ~?なーんて…。




 天気もいいし、バギーでひとっ走りしてから帰ることしよう。

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