第57話 やくしゃさん

「で、やるのはいいけどどうする?」


「オオカミが大まかな流れを既に完成させたのです」

「合わせて役者を探します」


 はやッ!?さすがはオオカミさん、昨日の様子を見るに実は俺の発情の件も気付いてからかっていた可能性すらある、俺よりもずっと頭がいいんだあの人は。


 で内容は資料に合わせて設定を作ってどんなショーにするか… って感じか。


 ではまず始めに。


 司会のお姉さん、まぁこの場合マーゲイさんがやるんだろうか?


 「PPPの出番までしばらくお待ちいただくのでショーを用意しました~!」


 的なことを言ってもらう、するとまず悪役が現れてこう言うのだ。


「ジャパリマンはすべて我々のものだ~!」←親玉 


「貴様ら分けてほしければ我々の為に働けぇ!」「ラッキービーストからジャパリマンを奪えー!ひとつ残らずだ~!」←下っ端


 この段階で既に役者が二人か三人必要だ、それから客席に向かい悪役の皆さんが。


「おまえらのなかに反抗的なやつがいるなー?おい!捕まえてここにつれてこい!」←親玉


 ボスに従い下っ端が客席からノリのいいフレンズを連れてくる… もしいない場合は予め仕込んでおいた関係者を連れてくる、例えば博士とかだ。


 そして司会のお姉さんも捕まりながらこう言う。


「どうしましょう!?悪党をやっつけてくれるヒーローはいないの!?… そうだ、みんなで呼んでみましょう!客席の皆さんも一緒にお願いします!助けてヒーロー!せーの!」


「「助けてヒーロー!」」


 定番の「声が小さい!」をやってからやっとヒーローの登場… ヒーロー… 俺だね?


「うぉー!私がヒーローだ~!」


 まず下っ端と戦い倒していく、そして。


「おまえで終わりだ!覚悟!」


 VS親玉が始まるが負けそうなほど苦戦する、すると司会のお姉さんが客席に言うのだ。


「大変!ヒーローがやられちゃう!みんなで応援しましょう!がんばれヒーロー!せーの!」


「「がんばれヒーロー!」」


 ここでまた定番の声が小さいをやりヒーローが… 俺のことね?強くなって倒す。


「うぉー!力が沸いたー!パーンチ!いや、フレンズキーック!」


「負けた~!覚えてろよー!」←親玉


 ここで、皆さんありがとうございました!続きましてPPP登場ですどーぞ!


 こういう感じか、そう上手くいくかわからないが。


「この流れってことは俺の他に最低二人、いや三人はほしいね?」


「ならば決まっているのです」

「へいげんにいきますよ?」


 やっぱり、演技派というなら姉さんがいいよね?頼みやすいし、きっと断らない。


「ついでに城の連中をすべて悪役としてスカウトするのです」

「あいつらは態度がオラついているので適任なのです」


「ってことは悪役が四人だね?まぁ姉さんのとこなら俺もやりやすいよ、話も聞いてくれるし」


 俺は早速返ってきたバギーを使うことにした、当然飛んで運んでもらった方が早いが敢えてそうしたのだ。


 たまには長孝行してあげようと思った、なんだかんだ二人は保護者で世話になりっぱなしだもの。


 そんな訳で荷台に二人を乗せて走る。


 ただ走行中はまぁ揺れる、後ろから「ぐぇ!」とかいろいろ聞こえたけど、まぁそれはそれとしてへいげんちほーに到着した。


「どうだった?バギーは」


「揺れますね…」

「やはり我々が飛んだほうが早いし快適なのです」


 まぁそりゃそうなんだけどさ… いつも運んでもらってるからたまには運んであげたいじゃない?


 とにかくお城に到着、早速いつもの二人が俺達を出迎えてくれた。


「二人ともおはよー」


「どーもです!おとーとさん!」

「博士たちまで?今日はどうしたんだい?」


「ライオンに会わせるのです」

「大事な用があるのです」


「もっと丁寧に頼もうよこっちがお願いするんだから…」

  

 そんな長二人のでかい態度を気に止めることなく二人は快く奥へ案内してくれた、優しい。


「大将、弟さんと博士達が来ました…」


「入れ」リーダーボイス


 姉さんの威厳たっぷりリーダーボイスだ、案内されたときは大抵こうして低めの声で対応する… なぜ?クセだそうだ。


「聞きましたか助手?」

「はい、この声はまさに悪の親玉なのです」


「失礼だよそれ…」


 襖を開けて中に入ると姉さんがいつものようにどっしりと座り込んでいた。

 「お前達は下がれ」とオーロックス&アラビアオリックスのコンビがその場を後にするといつものように姉さんは柔らかい声でニコニコしながら言うのだ。


「そこに座れ…」リーダーボイス


 あ、あれ…?いつもの「ファ~」ってやつは?機嫌悪いのかな?ここは気さくに挨拶して様子を伺おう。


「おはよう姉さん、いい天気だね?」


「フム… やはりそうか…」


 え… なにがやはりなんです?怖い怖い、どうしたんだろう姉さん?俺なにかしたっけか?今回は結構頻繁に顔も出してるはず。


「ライオン、神妙な顔をしてますね?」

「なにかあったのですか?」


「いやなに… シロ?それはお前の物で間違いないな?」


 と姉さんは俺を指差している… “それ”とは?手元にはなにも無い。


「それ… え?どれ?」


「その毛皮… いや服か?淡い青色をしたその服のことだ」


 あぁ… 今着てるシャツのことね?お気に入りなんだよねこれ、いつも着てます。


「うん、結構いつも着てるしここにお世話になってた時も着てたでしょ?」


「あぁよく覚えている… だから今確信した、少し前にかばんがバスで通りかかった時にそれを着ていたことにな…」


 ズドーンバリバリ!

 俺の心に雷が落ちてきた。


「…」汗ダラダラ


 や、やべーよぉ… 姉さんやべーよぉ…。


 姉はそのまま俺が何も言わず汗だくになり目もキョロキョロ泳ぐ様を見ると返事など待たずに話を続けた。


「少し遠かったので直接話はしなかったが、皆で手を振ると振り返してくれてな?その時にかばんがいつもと違う服を着ていることに気付いた、色も全然違うし明からにかばんの体には合ってない大きな物に見えたから違和感を感じていたんだ… 自分の服はどうしたんだろうなぁ?バスは図書館の方から来たようだった、そしてここ数日お前はそれを着ていなかったな?」


「そそそそうだね…」


「だが今は着てるな?」


「はい…」


 姉は頭が良い、とてもとても頭が良い。

 この問い詰め方は俺が既にイケナイことしたんだとわかってる時の問い詰め方だ。


「じゃあ聞こう… かばんとなにがあった?お前、何をした?」←名推理


 アィェェェェエ!?!?!?


 なんでぇ!?お姉ちゃんなんで!?な、なんで知ってるのぉ!?

 でも誤解ですよ姉さん?俺ちゃんと我慢しました!抱き締めて服破り捨てたとこまでしかいってませんよ?←既にやばい


 それにほら?体も暗かったから隅々まで見えた訳ではないしさ?一線は越えてないんです、これ本当!


 シャツの件はほんのジェントルマン精神でして… ほら?服を失った女の子をそのまま放ってはおけないだろう?そんな大変丁度よいタイミングで俺はシャツを脱ぎ捨てていたんだよ?だから俺考えた。


 そぉだぁ… かばんちゃんに着せてあげよう!ってさ?この間0.5秒ほどの決断の早さだった。


 だからそんな怖い顔しないでお願い!


「シロ、これはダメですね…」

「姉弟で隠し事は無理なのです、お前の口から正直に言うのです」


「シロぉ~?姉ちゃん怒らないから正直に言ってみな?」オネエチャンボイス


 わぁ柔らかい表情と声…。

 いきなり声変えたら逆に怖いよ。


 仕方ない、他ならぬ姉さんだから恥を忍んで答えてやろうではないか、このまま強姦罪をかけられては困るし。



 俺は嬉し恥ずかし初情の件をコソッと姉に話した… もちろん手は出してません、この腕を犠牲にしてやったのさと傷跡を見せて伝えた。


「あぁ~なるほどそんなことがあったんだねぇ?」


 さすが、姉さんはいつだって俺の味方なので話が分かる… 姉さん素敵です。


「はぁ… 誰にも言わないでよ?師匠とか本当にやめてね?」


「よしよし、わかったよ~?お前も年頃だもんね?でも駄目じゃないかそういうことは私に言わないと!」


「いや言えないよ!姉さんだもの余計に言いにくいよ!いきなりだったし!」


「私なら相手してやれただろー!」


「「「えぇー!?」」」


 お、お姉ちゃん急に何言い出すの!?姉弟でそういうことしたらだめなんだよー!?


「お前に遅れをとる姉ちゃんじゃないぞ!そういうときは思いきり体を動かすんだよ!最悪気絶させればいいんだから!」


「あ、あぁ相手ってそういうことね…」


 な、なぁんだ… お恥ずかしいとこをお見せしてしまったわ?そうだ姉さんなら余裕で俺のこと捩じ伏せられる。


「なんだ?フッフッ…“そっち”の相手ならいつでもいいんだぞ?お前がいざというとき恥をかかないように私が教えてやるから今夜はここに泊m」


「やめてよ!?この話終わり!」



 脱線したが俺たちは本題に入る。


「ヒーローショー?なんだいそれ?」


「正義が悪を倒す」

「そんな演劇のようなものです」


「うん、姉さん演技派らしいし、みんなでどうかな?って… 悪役だけど」


 姉さんと言えど悪役、即ちぶっ飛ばされる役やってよと頼むのは少し忍びない感じはある… が姉はその点に関してはどうでもよいらしく。


「悪役っつってもさぁ~あ?どんな感じでやればいいわけ?」


 やることに異論はないようだ。


「いつもの威厳のある感じでやればいいのです」

「まさに悪の帝王の貫禄なのです」


「褒められてんのかわかんないねぇ?それ?」


 姉さんは基本ダラダラするのが好きな人なのでめんどくさそうにしているが…。


「ま、シロの頼みなら断れないな!みんなにも言っとくよ!いつやるの~?」


 このように俺の頼みごとを頭ごなしに断ったりはしない、非常に快く了承してくれる。


「ありがとう姉さん!」


「マーゲイにはこちらの準備次第と言ってあります」

「さっさと完成させて御披露目してやるのです」





 そんな勢いだけの状態だが、早速練習が始まった。


 と言うわけでオオカミさんに来てもらいセリフや殺陣など… いろいろと合わせていくことになる。


 配役はこう。


主役 シロ

親玉 ライオン 

下っ端 オーロックス オリックス ツキノワ


 まぁ… いつも通りだね?


「それじゃ、配役は決まったね?私の言う通りに話を進めてくれ、筋書き通りならセリフや動きはアドリブを加えて構わないよ?」


 このようにして始まったはいいが、俺も最初セリフとか言うの恥ずかしくてね?「もっと声張ろうよ!君もライオンだろ!」って怒られちゃったよ… 棒読みになるし。


 でもやはりと言うべきか… 姉さんだけは完璧だった。


「こんなんでいいのかい?お安い御用だよー!」


「いやぁ流石だね… さぁみんなも!君らの大将に負けないように頑張ってくれ!シロ君!動きが固いよ!」


 オオカミさんは妥協を許さなかった。


 でも確かに、お遊戯会とは違うのだ、やるからにはクオリティを上げていくべきなのは俺もそう思う。


 しかしまぁ、当然皆が皆同じくらいこころざしを高く持っている訳ではない。


「おとーとさん、大変っすね…?ヒーローショーやべぇよ、つれぇよ…」


「ご、ごめんね?でも大丈夫だよ!もっと楽にしよう!素の感じでいけって博士たちも言ってるから!」


「でも私達が悪役だなんて… 悪いことしてやろうとは思ってないし、なぁツキノワ?」


「まぁねぇ~?迷惑かけたいわけじゃないしねぇ~?」


 ごもっともです… 無理言ってすんませんでした!くそ!俺が発情さえしなければこんなことには!


 それでも練習は続き、何だかんだ言いながら俺たちは続けるうちにだんだんと役が様になっていった。


 そうして慣れてきたころにはテンションが上がり割りと好き放題できるようにもなった、アドリブ祭りでもオオカミさんは止めたりせず。


「いいねぇ?らしくなってきたねぇ?そうそうそれだよ!いい表情いただきだぁ!」カキカキスラスラ


 ってむしろ興奮してスケッチが止まらないようだった、インスピレーション沸きまくってるんだなきっと。

 本人が楽しいなら俺はそれでいいと思うよ、かく言う俺も楽しくなってきたのだから。


「いや~でも、こういうのってぇ?衣装?ってのがいるんでしょ?」


「うん、それっぽい格好しないとただ俺たちが変なセリフ言ってるだけだしね?」


「慣れてくるとそういうのもちゃんとしたいねぇ?雰囲気って大事だよ?」


 確かに姉さんの言う通りだ、本番前にちゃんと通しでやってみたいのはある、衣装ってそういえばどうするのかな?


「そう来ると思いすでに用意してあるのですよ」

「まずはシロ、これを被るのです」


 スッと現れた二人が手渡してきたのは猫耳を出せるようになってるマスク?ヘルメット?のような物だ、色は白っぽいシルバー。

 もしかしてわざわざ俺に合わせてくれたのかな?それとも作ったのかな?まぁ細かいことはいいとして…。


「へーんしん!」スポン


\おぉー…/パチパチパチ


 野生解放で耳を出し、俺は完全なマスクドフレンズとなった。


 おぉなんだ?なんか俺… ヒーローっぽいじゃん!よーっし!


「いいなぁそれ!私たちのはないの~?」


「お前達は仮面ではないのです」

「代わりに装飾品と悪っぽい衣装を用意しているのです」


 俺がヒーローになりきってる間、どこからともなく調達された悪な衣装達が姉達に配られていく。


「へぇ~?真っ黒だねぇ?」


「悪といえば黒なのですよ」

「世界を闇に陥れるのです」


「みんな着替えるよ~?」ヌギヌギ


「あーもう!俺もいるんだからそういうのやめてよ!///」


 そうしえ各々衣装に着替えるとよりいっそうヒーロー感と悪の組織感がでてやる気が十倍増しとなった。


 オオカミさんもそれを見て目を輝かせている。


「素晴らしい… 今度漫画のネタに使わせてもらっていいかな?」


 それはもうどーぞどーぞ?タイリクオオカミ先生あってこそのショーでございますから?我々新作も楽しみにしております。


 そこに突如現れた人物がいた。


「ライオン!いざ勝負だ!」


 我が師匠、ヘラジカである。


「おぉ!?なんだその格好は?強そうな格好だなぁ?」


「私達は悪の組織ブラックガオガオ軍団!そこのヘラジカァ!お前のジャパリマンも我々が徴収する!」←なりきり中


「なにぃ!?なぜ私のジャパリマンがとられてしまうんだ!?意味がわからん!?」


 衣装で悪の組織のボスになりきった姉さんが師匠を巻き込んでアドリブ演技を始めてしまう、仮面フレンズはすでに始まっているんだぜ?


「きゃー!ブラックガオガオ軍団なのですー!?」「パーク中のジャパリマンがとられてしまうのですー!?」←ノリのいい観客


「なんなんだ?そのブラックなんとかというのは?なぜジャパリマンをとるんだ?」


 博士たちも姉さんのアドリブに乗り始めさらにストーリーが展開されてしまう事態に、さすがの師匠も意味がわからない。


「お前達!あの鳥どもの隠し持ってるジャパリマンも奪ってきな!ひとつ残らずだ!」


「オラオラ!ジャパリマンをよこせば怪我はしないぜ!」

「隠してるやつは… わかってるだろうなぁ?」

「さっさと出すのよ~!ほらほら~!」


「きゃ~!誰か助けてほしいのです~!」

「もうダメなのですよ~!」


「よ、よくわからんが!人のものをとるのはよくないぞ!」


 悪の組織が罪なきフレンズに襲いかかり、もうダメかと思われたその時だった!


「待てぃッ!」シュバ 


「なんだ!誰だ貴様は!?」


 勇敢にも立ち向かう白い影がひとつ…。


「ん?シロか?なんだその被り物は?」


「しーなのですよヘラジカ?」

「今いいとこなのです!」


 颯爽と現れ華麗に着地を決めた仮面の男、敵を前に名乗りをあげる。


「あどけない野生の少女に味方する男… 仮面フレンズ!ホワァイッ!(ホワイト)」シュババ!キメッ! ←よくわからないポーズ


「仮面フレンズなのです!」「ヒーローが助けに来てくれたのです!」キャピキャピ


「おぉ…すごい気合いだなぁ… よくわからんが私も加勢しよう!」


 師匠は博士たちに全力で止められたが、俺や姉さん達は全力のアドリブヒーローショーを繰り広げていた。←楽しい

 こういうの拗らせてるって言うらしいんだが、この際そんなのは楽しければいいじゃないか。


「一人でなにができると言うのだ!お前達!やっちまいな!」


「ブラックガオガオ軍団… 許せんッ!」


 練習は大変捗った。

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