第44話 すれ違いいろいろ

「それじゃ昆布で出汁を取ってる間に麺を作るよー?準備いいかなー?」


「ハイなのだ!」「はいよ~」


 姉さんのご機嫌取りから数日、今度は二人で仲良く現れたアラフェネちゃんと本格派うどん作りに励んでおります。

 しかし姉さんには参ったよ、帰るころにはすっかり暗くなってしまった。

 帰ると後ろから音もなく飛んできた二人に長奥義両腕ひしぎ十字をかけられてしまう始末、しかもそのあと「夜食を作るのです」って言われてもう過酷な労働環境だった…。


 でも今日は人数がいるから、うどんを打つ重労働もその分楽になって助かる、数の力は偉大なり。



「はい出来上がり~」


「わーいなのだ!」


「ねぇシロさ~ん、打ってる時のあれなぁにぃ?一時のなんちゃら~って?」


「美味しいうどんを作るための魔法の呪文さ!」キラッ☆


「そうなんだぁ?ふーん魔法ねぇ?」


 うどんしか教えてないけどアライさんが最近俺の弟子みたいになってきた。

 でも俺自身弟子を取るような腕ではない、せいぜいお母さんが料理を教える程度の物ではないだろうかと思ってる。

 だってまだまだ俺も学ぶことが多い、弟子ができるなんてそんな御大層な身分ではないし、というか独学なのでこんなことを何も知らない子に教えるのは複雑な気分である、ただ成長を見るのは楽しい、上達を見てると感慨深い気持ちになる。

 

「よし、スープもいい感じだね?じゃあ麺を茹でてる間に具材を切って… あ、そうだ!月見うどんにしてみようか?」


「「つきみうどん?」」


 いつも同じではつまらないだろう、少しずつ変化をいれるのが面白みの一つでもある。


 玉子入れるだけなんだけどさ。


「普通のうどんに卵が乗ってるのを月見うどんって言うんだよ?ほら、卵って中身がまんまるで黄色いでしょ?」


「そういえばそうなのだ!」


「シロさんが考えたの~?」


「アハハまさか!昔の人が月みたいだからってそう名付けたんじゃないかな?」


 俺も詳細は知らないね…。

 ってほら?先生ぶってる俺も学ぶことまだまだある、こういうところがまだ弟子を取るなど烏滸がましいところなんだ。


 

 それから、具材と言ってもネギくらいしかないが三人でトントンとやりはじめる、ネギ月見うどんになるだろうね今日は、ネギたっぷり入れるの好きなんだ実は。


「二人とも?切るときはゆっくりでいいからね?」トントントントン!


「えぇ… シロさんなんで見ないで切れるの~?」


「努力の結晶さ!」トントントントン!


 ふはは!見たか我が実力を!良い子は真似すんなよ!


「しかも早いのだ!?アライさんもスピードアップするのだ!」トントントントン!


「アライさ~ん気長にやろうよ~?」


「そうだよ?無理して指でも切ったら大h」「痛いのだぁーッ!?!?」


 ほら言わんこっちゃない!


「大変だ!救急箱持ってくるからフェネックちゃん水で洗ってあげて?」


「アライさ~ん気を付けてよ~?」


「うぅ… アライさんも早くシロさんみたいになりたかったのだ…」



 指先を包帯でぐるっと巻いておいた、まぁフレンズさんなのでこれくらい一晩あれば完治するだろう、ツチノコちゃんの時もわりとすぐだった。


「ごめんなさいなのだ…」


「自分のペースをよく知ることから始めようね?フェネックちゃんの言葉はちゃんと聞いたほうがいいよ?アライさんのこと一番よく知ってるのはフェネックちゃんだからね」


「わかったのだ、フェネックありがとうなのだ」


「アライさんはやればできる子だと思うよ~?だけど~…」


 そう付け加えてフェネックちゃんは先程アライさんが切っていたネギをつまんで持ち上げた、すると。


「やってしまったね~?」プラーン


「うぇぇ~!?」


 切りきれずに繋がってるね、あるある。


「アッハッハ!俺もよくやったよそれ!」


「シロさんも失敗するんだねぇ?」


「もちろん始めは指も切るし時間もかかったよ?博士達にも味が濃いのです!とか具が大きすぎです!とか、他にも辛すぎるのです薄いのです焦げてるのですって散々な言われようだったよ?初めからできるヒトの方がすくないんだよ」


 そう、毎日飽きもせずよく頑張ったものだ、今では調味料も目検討で適量がわかるし、先程やって見せた通り少し目を離したくらいでは包丁も支障がないのです。


「だからアライさんも焦らないでゆっくり慣れていけばできるようになるよ?結構器用だしね?」


 落ち込んでいるようなので頭を撫でて諭すように伝えてみた、アライさんみたいな子は失敗を恐れずに挑戦していくほうがいいだろうし、とりあえずやってみるってのは悪くないやり方だと思うんだ、けどペースは考えた方がいい。


「本当かぁ!?わかったのだ!アライさんもいつか立派なりょーりにんになるのだ!」


「良かったねぇアライさぁん!」


「さ、続きやるよ~?」


「ハイなのだ!」「はいよ~」


 和むね~?なんか学校の先生になった気分だよ、というかアライさん料理人になりたいのか?

 

 名乗ってはいるけど、俺は料理人として相応しいのかな…?





「本日のメニュー、ネギ月見うどんでございます」


「ネギが多くて」

「うどんが隠れてて」

「玉子が乗ってて」

「まるでこのしんりんちほーの夜に浮かぶ満月をイメージした感じがする」

「そんな美しさを持ち合わせたのが」

「ネギ月見うどん…」

「「ですね?」」


「これ好きなのだ!」


「あぁ~これいいねぇ」


「シロもそう思います」


 というわけで。


「「いただきますッ!」」パンッ!


 例の如くパンッ!をやってから箸を進める俺たち5人、薄々わかっていたことだが意外にもアライさんは箸を使うのがうまいようだ、逆にフェネックちゃんが難儀しているのはこれも意外なところではある。


「アライさん本当に手先が器用だねぇ?練習とかしたの~?」


「教えてもらったら普通にできたのだ!」


「普通にすごいよアライさぁん!」


「やりますね?」

「褒めてやるのです」


 なんで?って聞いても本人は「アライさんだからなのだ!」としか答えないし博士たちもフェネックちゃんも「意外ッ!」みたいな反応だから聞いても無駄そうだ、真相は闇の中だな… こんなときラッキーがいたら教えてくれるんだけど。


 どこ行ったのかな…?あれから見ていない。


「フレンズによって得て不得手があるんだね?なんでこんなに器用なんだろ?」


「えっへんなのだ!」


「アライグマハ 手先ガ器用デ 指ヲ使ッテ獲物ヲ取ルヨ 前足デ物ヲ持チ 立チ上ガッテ走ルコトモアルンダ」


 その時声がした、フレンズの声ではないその妙に可愛らしさのある機械音声はまさか?


「ボスなのだ!」


「急に来て喋るからビックリしたな~いつからいたのー?」


「あぁラッキー… 本当にラッキーなの?」


 ラッキービースト… パークの各地でフレンズたちが住みやすいようにいろんな仕事を請け負っている、何体いるかは不明、それでも俺にはわかるんだ…。


 その数多いラッキーの一体の前に俺はしゃがみこみ、その姿を目に焼き付けた。


 間違いない。


「シロ?どうしたのです?」

「ラッキービーストはそこまで珍しいものではないでしょう?」


「これは俺といたラッキーだよ!一緒に落ちて助けてもらった時いつのまにかいなくなってたんだ!」


「シロ 元気ニナッテ嬉シイヨ」


「俺もだよ!どこ行ってたんだよ!心配したよ!」


「自己修復機能ガ追イ付ツカナイカラ 他ノラッキービーストニ修理シテモラッタンダ」


「そっか!もうなんともないんだね?」


 俺が崖から落ちた時だ、一緒に落ちて怪我をして… このラッキーもしゃべることすらままならない状態となっていた、故に通信は使えず俺は堪え忍ぶしかなかった。

 なんだかよくわからない機械音を鳴らして動かなくなってしまったラッキーを抱えたまま死の淵をさ迷ってい… で助けられて。


 目を覚ますとラッキーはいなかった、あとでみんなに聞いたけど見てないと言われたし、歩けるのかどうかすら怪しいラッキーがどこへ行ったのかと思ったけどそうか、ラッキー自身も傷を癒していたのか。


「会いたかったよー!よっしゃラッキー!」


「記憶データノバックアップト 再起動ニ時間ガ掛カッタンダ ゴメンネ」


 俺はラッキーを持ち上げて小躍り気味に喜んだ、また一緒にここで働こうぜラッキー?


「しかしどうやって見分けたのです?」

「他のラッキービーストと変わらないのです」


「何か目印でもあるの~?」


「あ、もしかしてこれなのだ?」


 アライさんがラッキーの尻尾の付け根に巻かれている赤い布切れを指差した。


 そう、ラッキービーストは個体別に記憶を持ってるのでよく世話になるこのラッキーは見たらわかるようにしていた。

 そうしてラッキービーストを見るたびにこの布を確認していたがどれも知らないラッキーで半ば諦めていたころに彼?は帰ってきてくれた。


 結果かばんちゃんと話すことで解決はしてるが、俺が悩んでいた時ラッキーなら良し悪しが的確なアドバイスをくれたかもしれない、あるいは作業的な内容しか話さないのかもしれないけど、それでも参考にはなったはずだ。


「とにかくおかえりラッキー?またいろいろ教えてね?」


「ワカッタヨ シロ 何ガ知リタイ?」


「今はいいよ?ゆっくりしよう」


「ワカッタヨ」



 その晩俺は横になって考えた。


 ラッキーの修理が可能なら、バギーを直すことも可能なんじゃないか?


 ただしバギーは山に放置されている、回収にはまた山に登る必要があるということだ。


 行くか?もう一度サンドスター火山へ…。





 翌朝、早速提案してみたのだが…。



「ダメです」

「許可できません」


「どうして?」


 速答だった、昨晩の思い付きのバギーの回収は許可できないと言うのだ、しかしなぜ?


「危ないのです」

「どういう目にあったのか忘れた訳ではないでしょう?」


「たまたまだよ?今度は一人では行かないでヒグマさんたちにも着いてきてもらって…」


「「ダメなのです!」」


「…」


 声を荒げてそう言い放つ二人に驚いて思わず言葉を失ってしまった、こんなことは滅多に無いことだ、普段は淡々と話しそれほど感情も顔に出さない二人が怒鳴ったのだから。


「あのバギーというのがなんだと言うのですか!」

「それほど大事にしていたようにも思えないのです」


「だって、単に便利じゃないか?歩いたら1日かかる距離も数時間で着くし」


「そんなの我々が連れてってやるのです!」

「あんなポンコツよりも我々が飛んだほうが遥かに早いのです」


「そうだけど、長が何度も留守にするわけにいかないだろうし、それに二人とも疲れるでしょ?申し訳ないよ」


「別に構いやしないのです」

「我々は賢いので」


 なんだ?やけにこだわるじゃないか?そんなに俺を山に入れたくないのかな?神聖なサンドスター火山… 入るには許可がいる… あ、そういうことか…。


「どうしてもダメなんだね?」


「ダメです」

「聞き分けるのです」


「俺が… よそ者だから…?」


 自分で言っといてグサッとくる言葉だった。

 みんなと仲良くなって、受け入れてもらって、料理で二人を唸らせても… 俺が外から来たことに変わりはない。


 二人は長だ、神聖なサンドスター火山にそう何度も入らせるわけにはいかないんだろう、わかってるさ。

 あそこには四神があってサンドスターロウを封じている、それに触ったりしたら効果を発揮しなくなるかもしれない、早い話し何をするかわからない俺には信用がないのだ。


「あの時山にはセルリアンが湧いてた、何かした覚えはないけど、きっと俺が何かしたんだ… そういうことでしょ?」


「ちがうのです!」

「考えすぎです!我々はただ…」


「いや、いいよ… 神聖な山だもの、無闇に入るもんじゃないよね?諦めるよ…」


「…わかればいいのです」

「ですがシロ、聞くのです」


「いいって…!朝御飯作るから、待ってて…?」


 少しムキになってたかもしれない、さっきの理由だってハッキリ二人に言われた訳ではない、でもあそこまで理由もなく止め続けるのを見るとどうしても入れたくない相応の理由があるものだって思う、


 料理中に余計なことを考えるものではない、ボーッとしてるとミスをするんだ。


 落ちた時みたいに…。


「よそ者… か」トントントントン


 痛! クソ… 指切った。




 

「参りましたね助手?」


「はい、難しい年頃なのです」


 シロ同様に、長二人もモヤモヤとするものがあった。

 無論彼がよそ者だとかそんなことを思っている訳ではないし思ったこともない、二人が考えていたのはもっと単純なことなのだ。


「我々はただ… 心配なだけなのです」


「あのような怪我をされてはあまり行かせたくなくなるのも当然です」


 不安だったのだ、ようやく治った怪我のことを考えると、今度は帰ってくる保障がないと恐れている。


 敢えて言うのなら。

 

 シロは人間である、フレンズではない。


 故にフレンズほど体が丈夫ではなく、怪我をしやすく治りも遅い。

 ただ、フレンズの特性を受け継いだ彼は普通の人間よりはフレンズに近い、それだけのことである。


 だから、そんな彼をよく知るからこそ二人は心配だった。


 危険な目には逢わせられない、いくら彼がホワイトライオンという強いフレンズの血を引いていても。


「料理が食べれないとか以前に、あまり痛々しい姿を見たくないのです」


「同感です… おや?博士、シロが…」





 「イタタ… はぁ、人に教えといて自分が怪我してるようじゃ話にならないなぁ」


 少し気まずいが中に入り救急箱を探していた、そんな俺の様子を見た二人が俺のそばに降りた。


「シロ、どうしたのです?」


「博士、いやちょっと切っちゃって…」


「何をやっているのです、さぁ見せるのです!」


「これくらい自分で… えぇ!?」


 博士ほおもむろに俺の手を取るとその小さな口に俺の怪我した指を…。


「…」チュパ


「ん…ちょッ!何を!?」


「これでよしです」プハ


「博士、包帯です」グルグル


 そう、おもむろに俺の指をくわえた博士と包帯をそこまでやりますかというくらい巻く助手、急なことに驚く俺。


「博士、それどこで覚えたの?」


「本で読んだことは知識として、残ってるのです」

「我々は賢いので」


「水で洗えばいいんだよこういうのは… まったくもう」


 と口では言ったが、つい笑みが溢れた。

 確か、母が同じことになると父がこうしていたような記憶がうっすらとある。


 子供ながらにそれはどーなの?って思った。


「我々はただあまり心配かけないでほしいだけなのです」

「お前は出掛けるとしょっちゅう危ない目にあうのです、ここにいてもこの始末ではないですか?」


「うん… ごめん…」


 この時に、なんだ心配されてただけかって思って… 自分の言ったことは失言だったなと反省した。


 今言ったごめんはそれも含めたごめんだ。


 まぁ、他のゲートに行けばわざわざ直さなくてもいいバギーがあるかもしれないし、いつか探しにいこうじゃないか、それまでは二人が言ったようにその羽に頼らせてもらうさ?




 

 この時。


 どうやら我々の想いが伝わったようでよかったです、博士もシロもよく笑っているのです。


 助手は和やかに微笑みそう思っていた。



 がその時!助手に電流走る!



 シロのあの笑顔… そして博士に指をくわえられた時のあの恍惚とした表情… いろいろ文句を言いながらも我々のために何かしら努力をしてくれるあの姿勢…。


 まさかッ!?



 助手は思ったのだ、シロの想い人… それは?



 は、博士だったのですか!?←違います



 盲点だった… と助手は己の頭脳と観察眼を卑下した、普段一緒に住んでる三人なので家族として意識したことはあっても異性としてハッキリ意識したことはなかった。


 様子を見るに博士も助手と同意見だろう。


 しかしシロはどうか?シロは年頃の男の子である、そんな彼が女性と一つ屋根の下で暮らすとなるとそれは…?



 しかもあまり近いので失念していました、博士は…。


 可愛い!それに白いのです!



 助手!暴走!!


 ど、どうすれば?博士にも聞けない、まさかシロにも聞けない、今度かばんにでも聞きましょうそうしましょう、私は賢いので。





 そんな図書館の様子を遠くから眺める者がいた。


「フェネック!聞いていたのだ?」


「聞いてたよ~バギーってあれでしょ~?シロさんの持ってた小さいバスてきなやつだったよねぇ?」


 それはコンビ、アラフェネである。


「そうなのだ!でもシロさんは山に登ることを禁じられたのだ!うどんのお礼にアライさんが取ってきてあげるのだ!」


 二人は今日もいつも通りシロに料理を習いに来ていた、そしてたまたまバギーの話を耳にしてしまった。


 そしてその素直さはあらぬ方向へ向けられる。


「でもアラ~イさ~ん?あんなの運べるのかなぁ~?」


「仲間を集めるのだ!」


「シロさんの為ならドンとこいだねぇ?アライさんに付き合うよ~」



 二人はシロに顔を見せぬまま図書館を後にした。

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