第41話 なやみごと

 本格的にうどんを作る仮定で出汁について考えてるとあることに気付いてしまった。


 出汁… 食材を煮込み出た汁のこと、だし汁とも言う。


 一般的に代表なのは昆布、かつお、それから牛骨とか豚骨etc…。


 わかってて目を逸らしていたが動物が多いんだ、昆布とかならまだいいんだけど、しかし動物と言えば…。


「鰹ね…」


 気付いたこととは「魚のフレンズ」である、俺が知ってる限り聞いたことがない。

 

 水棲哺乳類のフレンズ化は聞いたことがあるけど魚は知らない、資料にも残ってないというのがその存在の有無を物語っている気がする。


 だから魚料理ならと考えてしまうのだけど、生き物の命を奪い糧とする… フレンズに魚がいないからと言ってそれをやってもいいのか?


 俺のこの悩みは既に哲学だ、じゃあ植物はいいのか?って話だし、鶏卵を大量に使っている俺はもう肉を食わせるのと同義なことをしてると言っていいんじゃないのか?

 だからといって鶏肉を博士達やトキちゃん達に食わせられるのか?牛肉をオーロックスさんやフリシアンさんや他の子に食わせられるのか?鳥同士ならそういうこともあるのかもしれない、事実博士達フクロウは肉食だ。

 でもそもそも草食動物だった子達に肉?許されるのか?そんなことが…。


 それは人のフレンズのかばんちゃんに人肉を食わせてるのと同じなんじゃ… とそう考えてしまう。

 フレンズになることで人間の姿になることが仇となったか、大体今の俺には野生動物を捕まえて絞めるような度胸がない…。


 わかってんだよこんなの甘えに過ぎないって、生きる上で生き物の命を糧とすることが自然の摂理なんだから。


 とりあえず出汁は昆布からでもとれるけど… 博士達も「いろんな出汁を試すのです」って出汁について調べ始めそうだし、また本を開いて「これが食べたいのです」とか言ってステーキでも見せられた日には詰みだ、正直ここまで料理が浸透したら今更な話だが。

 

「はぁ…」


 思わず溜め息がでた、参っちゃうねほんと… 悩ましいよ。







「博士、やはりシロは様子が変なのです」


「アミメキリンではないですが… ひとつ推理といきましょう助手?」


「はい博士、我々の知識によると… ヒトがあぁしてあからさまに落ち込んでたりわざとらしく溜め息をついてしまう時、それは決まってひとつの原因があるのです」


 長の二人は、お互いの考えていることが分かっているかのような阿吽の呼吸で推理をまとめていた、そして少し溜めると二人は同時にその結論を口に出すのだ。


「「恋ですね!」」


 この時、大きな勘違いがシロを襲う。


「まぁ、大体目星は付いているのです」


「ですね博士、ヤツですね?」


「そうです助手」


「PPP ですね」「ツチノ…え?」


 なぜこういったことになったのか?二人には二人の考えがあるのだ、しかしながら助手と博士では答えが別れた。

 先日イチャイチャとカレー作りをしてたことから助手はツチノコが気になって仕方ないに違いないと踏んでいたのだ、事実シロは彼女の去り際とても名残惜しそうにしていた。

 

 しかし、長アフリカオオコノハズクはそんな仮定は投げ捨ててシロはPPPに夢中だと言うのだ。


「ヒトのオスはアイドルのように可愛い生き物に目がないらしいのです」


「間違いありませんね」(なるほど、さすがです博士…)


 さらに大きな勘違いがシロを襲う。

 

「確かめる必要がありますね?」


「はい博士、ヘタレのアイツには我々が背中を押してやる必要があるのです」


 長達は、お節介ながら彼の恋の為一肌脱ぐことを決意した。←ただし勘違い






 

「シロ、話があるのです」


「んぁ?…なに?お昼ならさっき食べたでしょ?」


 ウトウトしてきたころで博士達に呼ばれたので目が覚めた、なんの話かな?


「いいですか助手?さりげなくですよ?」コソコソ

「はい博士、さりげなく真実に近づきましょう」コソコソ 


「ねぇ、どうしたのさ?」


 なにコソコソしてんだろ… またワガママ言おうとしてんのかな?タイムリーにも肉の話はしないでくれよ頼むから?


「突然ですがシロ、ペンギンは好きですか?」直球 

「!?」


「えぇ…」


 本当に突然だな… 助手が珍しくうろたえてるけど、この質問になんの意図が?ペンギンの肉が食いたいとか言うまいね?


「ペンギンって… PPPのこと聞いてる?まぁ嫌いじゃないよ?スゴいよね?アイドルなんて生で初めて見たよ」


 まぁフレンズのアイドルと人間界のアイドルを同じ括りにしていいものかは悩みどころではあるけども…。


「そうでしょうそうでしょう… メンバーなら誰のファンなのです?」


「急に言われてもなぁ… みんな違ってみんないいと思うよ?個人的に交流があったのはフルルだけど」


「ほぅ?そうですか…」ニヤリ


 なんなんだ急に… なんだそのどや顔は。


「聞きましたか助手?」コソコソ


「はい博士、フルルですね?」コソコソ


「ここはひとつ場を作ってやるのです」コソコソ


 またかよ、さっきから二人で何をコソコソ話してるのだろうか?PPPがどうかしたのかな?もしかしてライブ会場に料理を出せとかかな?それだとさすがに助っ人が欲しいなぁパーティーの時並みに大変になりそうだ、コイツは骨が折れそうだ。


「ではシロ命令です、PPPに差し入れを作って持っていくのです」


「え?なんで急に?」


「みんなを楽しませるのは大変な仕事なのです」

「そうです、だから我々長としてたまには気を使ってやりたいのですよ」


「そうなんだ?いや近いからいいけど、珍しいねそんなこと言うなんて?」


「我々長なので」「当然の気づかいですよ」


 そうかな?違和感ありありなんだけど?なんで急にPPP?まぁやれと言うならやるさ、イエスボス!

 パーティーの時プリンセスちゃんを怖がらせちゃったし、ホットケーキでも作っていこうか?





「よし、こんなもんかな」


 ホットケーキを人数分の倍作っておいてマーゲイさんやゲストがいたりしたときにも対応できるようにしておく、味付けにジャムを数種類とハチミツを持ち込むことにした。


「では、うまくやるのですよ!」

「お前なら大丈夫ですよ!」


「なんの話をしてるのさ?あと送ってくれないんだね?」


「野暮なのですよ」

「ええ、野暮というものです」


 なんなんだよ今日の二人?ホットケーキを作ってる時もどこかへ行っていたみたいだけど?全然なに考えてるのかわからないらなにが野暮なんだ?


 と、それとはまったく関係ないんだが。


 かばんちゃんに例の件を聞いてほしかったな、相談できそうな人と言えばかばんちゃんくらいだ… そうだ、一応留守中に来たときのために手紙でも残しておこうか。


「これでよし… っと、ねぇ?もしかばんちゃんが来たらこれを渡してくれる?」


「おやこれは?」

「手紙というやつですね?」


「そうだよ、大事なことが書いてあるから来るようなら必ず渡して?あと絶対に中は読まないように、長だものそれくらい朝飯前だよね?」


「バカにしていませんか?」

「我々に任せてよろしくやってくるのです」


 よろしくやれって… んー?さっきから妙に言い回しが気になるな?まぁいいや。


「いってきまーす、今日中に戻るねー?」


「「気を付けるのですよ」」





 シロがPPPの元へ向かった後、二人は彼の行動を不思議に思っていた… 手紙?かばんに?なぜ?と。


「大事なこと… とはなんでしょうか?博士?」


「助手、ヒトのオスがヒトのメスに大事なことを書いた手紙を渡す時などひとつしかないのです!」


「は、博士!まさか!?」


「そうです助手…」


「「ラブレターですね!」」


 長、暴走! 



 ♪セルリアンのテーマ♪


 博士は困惑していた、自分の推理は正しかったはず… 俗世から離れてこちらに来たシロは間違いなくアイドル好きなオスだと思っていたし、現にペンギンのことを聞いたらすぐにPPPの話に変わったので「あぁこれはPPP 大好きですね」と思い込んでいた。

 

 ファンのみんなを平等に愛してこそアイドル、誰か一人に選り好みはないはずである。

 なのにシロはフルルと特別な交流がある、可愛いアイドルが仲の良い友達だなんてこれは既にお互い恋してるけどアイドルとファンという間柄なだけにどうしようもないと悩んでいるに決まっていると思っていたのだ。


 しかし、シロから手渡されたのはかばんへのラブレター!(勘違い)


 ラブレターとは愛しい相手に文字を使って想いを伝える手段、直接言うのが恥ずかしかったり、口には中々だせない言葉もこれなら伝えることができるとヒトの世界では古来より伝わる方法である、古記事にもそうかかれている。


 そんなラブレターをかばんに?二人は困惑したが、すぐに合点がいった。


「博士、よく考えたらヒト同士通じる物があったのでは?思い返すとかばんの前ではあからさまに目を逸らしたり照れくさそうにしてたのです」


「決めつけるのは少し早いかもしれませんが… 十分にありうることですね、中身を見ないことにはなんとも言えないのですが」


「しかし博士、それは…」


「分かっているのです、それに見たところで我々には全て読みきれないでしょう、かばんに渡した時にどんな内容かそれとなく聞いてみるのです」


 





「着いた着いた、みずべちほーの特設ステージ」


 近いと言っても歩くとやっぱり疲れる、荷物もあると大変だ、今度バギーをなんとか直したいところ。


 ところでアポはとってあるのかな?すんなり入れてくれるといいけど。


「おはようございまーす、図書館のシロでーす!」


「お待ちしておりました~!どうぞどうぞ中へ!」


 マーゲイさんだ、ビックリした…。

 まるで来るのを待ち構えてたみたいな開き方だった。

 っていうかしっかりアポとってあるのか、いつから計画されてたのか知らないけどそれなら早めに言ってほしかったな… 何も急に言うことないのに。


 中へ通されると丁度休憩にでも入っていたのかPPPの皆さんがならんで座ってらした、オヤツタイムには丁度良い。


「おじゃましまーす、博士に言われて差し入れを持ってきたよー?」


「あ、シロ~元気~?」


「うんおかげさまでね~?フルルはいつも通りだね?」


「お久しぶりねシロ!この前は怪我したって聞いて心配してたけど、その分だと平気そうね?」


「あぁプリンセスちゃん、ご心配お掛けしました… あとパーティーの時はごめんね?ビックリしたでしょ?」


「したわ!名演技だったじゃない!すごいわ!」


 あ、姉さんのおかげでそういうことになってるんだった、ややこしいからこのままにしておこうか、なんか本人も楽しそうだし。


「しっかしあんな大怪我しても今じゃケロっとしてるなんてロックなやつだなぁ!」


「でも本当によかったですよ、あ?いい匂いですね?何を持ってきたんですか?」


「イワビーちゃんにジェーンちゃんもありがとう、ホットケーキだよ…って言ってもわからないか?気に入ってくれるといいけど…」


 ん…?


 黙って動かないと思っていたが… コウテイちゃん、様子がおかしくないか?


「コウテイちゃん?具合でも悪い?」


「…」


 し、死んでいる!?


 ではなく気絶だ、聞いたことがある、プレッシャーや緊張がピークに達すると彼女はこうなると… しかし休憩中では?なにもしていないのになぜ?


「あ、あれー?どうしたんですか?コウテイさーん?練習で疲れたのかなー?」


「起きてコウテイ!シロが差し入れを持ってきてくれたわよ!美味しそうよ!」


「っ!?あぁごめん… うんいい匂いだ、楽しみだよ」


 社交辞令っぽい!


 なんだ… 博士達といい、コウテイちゃんといい。

 なんかこう、違和感が半端じゃない!これからなにが起きるというんだ!怖い!さっさと置いて帰ろう!


 なので皿をだしササっとホットケーキを並べてジャムの説明をする。


「お好みのジャムをかけて食べてね?いろんな味を楽しめるから」


「「いただきまーす!」」


 とりあえず今のところなんでもないが、何も起きてくれるなよ?


「いいですねぇ!シロさんはやはり料理上手ですから、一緒にいたら毎日いろんな美味しい物が食べられるわ!ねぇフルルさん?」


「そうだねー」モグモグ


「フルルったら毎日ジャパリマン食べてるんだからたまにはシロに頼んで別のものも食べさせてもらいなさいよ!」


「そうだねー」モグモグ


「しんりんちほーもそう遠くないし、今度はまたこちらから行きますね?フルルさんもその方がいいですよね?」


「そうだねー」モグモグ


「それにシロは強いからな!シロの側にいれば守ってもらえるぜフルル!」


「そうだねー」モグモグ


「ふ、二人ともお似合いなんじゃないかなぁ…」


「そうだねー」モグモグ


 なんだこれ!?

 

 なんだこのフルルに対する猛烈な俺プッシュは!みんなしれっとやって見せるが違和感ありまくりだよ!俺をどうしたいんだよ!

 あとフルルは絶対聞いてない!「そうだねー」しか言ってない!しかもコウテイちゃんだけ辛そうだ!せめて演技しろ!


「そうね!お似合いよね!どうかしらシロ?」


「そうだね、ちょっと聞いて?」


「フルルも普段はこんなだけどやるときはやるんだぜ!」


「うん、ごめんちょっといいかな?」


「ご飯の時は結構動きますよね!きっとシロさんの料理を手伝ってくれますよ?」


「よかった、一旦止めて?」


「あ!フルルは意外と物知りだぞ!」


「そうなんだ、わかったあのさぁ…」


「なんと言ってもこの天然さがいいですよねぇ!うぇひひ!食べてる姿もかわいいんですよぉー!うひ!うへへ!最k」


「ちょっと一回黙ろうかみんなッ!」野生解放


「「ひぃっ!?」」


 少しムカついたぞ、トサカにきた… いや猫耳にきたぜ。


 申し訳ないが大きな声を出させてもらった、でないと収拾つかないし話もさせてもらえない。


「ではPPPの皆さん並びにそのマネージャーさん、これはどういうことか説明をお願いします」


「これ… とは?なななななんのことかわかりませんねぇ?」


「も、もう!急にビックリしたじゃない!」


「そ、そうだぜ!」

「か、顔が怖いですよ?」

「…」失神


 しらばっくれてんな?コウテイちゃんの失神が全てをものがたってんだぜー?白状しろよなー?


「わかった聞き方を変えようか、博士達に何か吹き込まれてるね?何を言われたのかな?」優しい声


「「…」」


 ほぅ、皆さんだんまりかね?


「ガァルルル!」


「ひぃ!?フルルさんとくっつくのを手助けしろって言われました~!」


「ちょっとジェーン!」

「ジェーンおまえ!」


 おかしいと思ったらやっぱり博士達が一枚噛んでいたか、おのれカレーの鳥め!

 なんで俺がフルルとくっつくことになってるんだ!どういうことか、全然わからん!


 なので詳しく聞いたところ…。


 ほんの少し前に急に博士達が尋ねてきたそうだ、ホットケーキを作ってる時だろう。


 二人はどうやら。


「どうやらシロはフルルにホの字なのです」

「ふぉーりんらぶなのです」


 などと言い放ち、これから差し入れを持ってくるから二人がくっつくように協力しろと頼んできたそうだ。


 当のフルルも… 


「フルル、お前シロは好きですか?」


「好きだよー」


 と答えたもんだから皆さん大慌て、フルルは何に対しても「like 」で答えるだろうに真に受けちゃってもう。

 しかし皆さんもこれは両想いなのでなんとかしてやろうと決心したそうだ。


「あぁもうなんでこんな勘違いを… というかアイドルなのに一人の人と恋仲になるとファンが離れるとか心配しないわけ?」


「どうして?アイドルとか関係なく友達がそう言ってたらやっぱり幸せになってほしいと思うじゃない?」


「シロなら問題なさそうだしな!」


「私もマネージャーとして、メンバーの幸せは第一に考えてますから!」


 ふむ、ヒトの世界とは感覚が違うな?恋愛禁止の方々が多いのに。


 まぁお金が絡んでる訳ではないし、フレンズらしい答えといえばそうだ。


「まったく、俺もフルルのことは好きだけどそれは友達としてだよ?会ったのはジャパリパークに来て間もない頃だったし」


「「「ごめんなさい…」」」


 わかればよろしい、やれやれ急に変なこと頼まれておかしいと思ったよ…。


「シロ~?おかわりあるー?」


「あぁいいよ、ジャムはどれがいいかな?」


「そのグレープ色のやつがいいな~」


「ブルーベリーだね?はいどうぞ」


「わぁ~おいしそー」


 恋人か… フルルといたらどんな日々が待ってるかな~?毎日のんびり?それともアイドルはご多忙かな?


 とにかくフルルは本命とは違うね。


 可愛いけど。




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