第26話 きょうどうさぎょう

「初めまして!わたしはサーバルキャットのサーバルだよ!シロちゃんはりょーりが上手なフレンズなんだね!」


 彼女がサーバル、かばんさんの旅の同行者… 言わば相棒。

 ところで俺はフレンズと言われるとまた別物な気がする、だがあまりツッこむ余裕がないのでそのまま返すことにする。


「うん、よろしくねサーバルちゃん?でも俺なんてまだまだだよ?もっと美味しいものを作れる人もいるし、もっといろんなものを作れる人もいるからね」


「えぇー!?でもわたしこんなに沢山のおいしいもの作れるフレンズは初めて見たよ~!十分スゴいよ!」


 そう?ゼロからカレーを作るかばんちゃんの方がすごい気がするんだけど… でもそうか、パーク内だけで見れば確かにいろいろ作れる方なのか、ここまで来るのにたくさん頭を使ったな… 慣れない読書なんてしてさ?まぁいい、それはそれとして。


「サーバルちゃんもたくさん食べてってね?まだ作るから!」


「うみゃー!頂きまーす!さ、かばんちゃんも食べよー!」


「うん!じゃあシロさん、頂きます!」


「あ、うんどーぞ!」


 なんかダメだな、やっぱりかばんちゃんと話すときに言葉につまる、萎縮してしまうとも違うのだが、語彙力がガクッと減るというのか?その純真無垢でまっすぐな彼女の目でじっと見られるとすぐに逸らしてしまう

 仲良くしたいけどこう上手く話せないと嫌われてしまうんじゃ?パークの英雄と反りが合わないのはまずいだろう。


 とそこにフレンズが二人


「これを作ったのはお前… いや!あなたなのか!?」


 この元気な子はさっきから“アライさん”と自称するバスから落ちた子だ。


「アライさぁ~ん?まず自己紹介しないと失礼だよー?」


 こっちの子は頭の良さそうな子だ、サーバルちゃんもだがこのアライさんとやらもかなり天真爛漫みたいだから考えるのが得意そうな子が横につくとバランスが取れてコンビだったりする。

 サーバルちゃんにかばんちゃん、こちらのアライさん?には…。


「そうなのだ!アライさんなのだ!よろしくなのだ!」


「フェネックだよー?美味しい料理どーもありがとー?」


 なるほど、君がフェネックちゃんか。


「よろしく?俺はシロ、ご覧の通り図書館で料理人をやってるよ」


「とっても美味しいのだ!特にこの平べったいのがアライさん気に入ったのだ!」


 どうやら彼女はピザが気に入ったようだ、いいよねピザ?俺も好きだよ、ジャンクフードほどよくハマる。


「あ、丁度焼きたてが出せるよ?」


「よかったねぇアライさぁん!」


「熱いから気を付けてねー?」


「ハイなのだー!」


 ピザを小皿に二人分切ってやり手渡した、嬉しそうに去っていくアライさんとそれを楽しそうに見つめるフェネックちゃん、なんだかまるで姉妹のようだ。

 この二人もかばんちゃんに着いていったんだもんな?賑やかになりそうだがどんな旅だったんだろうか?


「アッッ!?!?熱いのだぁッ!?」


「気を付けてよ~」


 あ~あ、今言ったばかりなんだけど…。





 しかし人数が増えた、かばんちゃん効果だろうか?この状況でこれはさすがにまずいかもしれない、つ… 疲れた!ぶっちゃけ早朝からノンストップはキツい。


 少し休めたのはいいのだが返ってそれが疲れを認識させたようだ。

 さっきは皿を落とすとこだった、これが料理の乗った皿ならアウトだった、食料は無駄にできないぞ?集中だ。

 そうとにかく集中、なので適度になにか食べなくてはと思いたまーにピザをかじる俺、がんばれよ俺偉いぞ。





「シロ、久しぶりね!」


「遊びに来たよ?」


「ギンギツネさんキタキツネちゃん!しばらくだね?元気だった?」


「もちろんよ!」


 お宿はいいのかな?雪山からキツネコンビがかばんちゃん御一行のバスに同乗して来てくれた。


「シロ全然遊びに来ないから対戦相手がいなくてつまらないよ…」


「無理言っちゃだめよ!」


「アハハ… ごめんね?」


 どうやら二人とも変わりないようだ。

 

 そういえばあることに気づいたのだけど、前にギンギツネさんが言ってた雪山のモンスターって野生解放した俺じゃないだろうか?俺これから自分の正体ぶっちゃけるんだけど後で謝った方がいいかな?



 …



「シロ~」


「あ、フルル!久しぶりだね!」


「あれから無事だったんだね?よかった~」


「おかげさまでねー?」


 お次はフルルだ、後ろには四人ペンギンのフレンズ… それと眼鏡をかけた猫科フレンズが一人。


「初めまして!フルルから聞いてるわ!ロイヤルペンギンのプリンセスよ!」


「イワトビペンギンのイワビーだぜ!」


「ジェンツーペンギンのジェーンです!」


「コウテイペンギンのコウテイだ」


「あ、もしかして君たちは!」


「その通り!私たち!五人揃って…!」


「「PPP!」」


 おぉ~… 自己紹介からしれっとポーズを決めて本当にアイドルって感じだ、どの子も個性的だけどまさにアイドル並みの魅力を感じる。

 っていうかやっぱりフルルってアイドルだったんだ… 急に恐れ多くなってきた。


「そして私、マネージャーのマーゲイです!今回はお呼びいただきありがとうございます!つきましては、ライブもさせていただきたいのですがよろしいですか?」


「あ、どうもご丁寧に… ライブどうぞやっちゃってください!実は一度見たかったなー?なんて思ってて!」


「わっかりました!では準備をさせていただきます!もうPPPは最高ですぉ?グヘヘ!」


 グヘヘって… 押しの強い子だな、鼻血出てますよ?


「ま、まぁ了解だよ… アイドルに俺の料理を食べてもらうなんて光栄です、みんなもどうぞ好きなだけ食べて?」


「おいしー」


「ってフルルもう食ってんのかよ!」


 さすがフルル、食に対して余念がない。




 

 後から来た皆さんも各々楽しんでくださっているようだ、でもまーだ満足できてない子がいるみたいだね?さすがに少しは落ちついだけど…。


「おい!大丈夫か?」


「あ、ツチノコちゃん、それにスナナコちゃんも… うん、大丈夫だよ?」


「また見栄張ってるだろ?少しも休めてないの知ってるんだぞ?」


「ペースも落ちてますねぇ?なにか手伝いますかぁ?」


「ありがとう二人とも、でも火を使うから俺がやるよ?」


 よく気がつくな二人とも、いや昨日も遅くまで仕込みやってたし今朝も準備で早起きしたから顔にもでるか?少しくらい休めるでしょと甘く見ていたら本当に少ししか休めないと来たもんだ、しかもたまたまかばんちゃんが帰って来たから休めただけの話。


「チッ… 少しは休めないのか?」


「手を止める訳にもいかないんだよねぇ、人数が人数だけにまだみんな満足いってないみたいだから」


「ボクは満足したのですが…」


 ここからは男の意地だな、見てろよな?倒れるまで作ってやるぞ。


 俺がそう思っていると側に誰か来たのに気づいた、ツチノコちゃん?と思ったが彼女は目の前にいるので違う、来たのは…。


「やっぱり、無理してたんですね?」


「え…?」


「おぉ~」


「かばん!」


 ツチノコちゃんにスナネコちゃんも彼女こ登場には驚いた、その相手はあのかばんちゃんだ。


 俺もその姿に思わず驚いて体をビクッと震わせた。


「シロさん最初に話したときも言葉に詰まってましたし、みんなと話していると楽しそうに笑うけど一人になるとすぐに表情が… もしかしてずっと休みなく料理してるんじゃないか?って思ったんです」


「あはは… やっぱりわかる?」


「かばんちゃんってすごいんだよ!誰かが困ってたらすぐわかるの!それでみんな助けちゃうんだよ!」


 サーバルちゃんもついてきたみたいだ、それにしてもかばんちゃん…。


「ずっと見ててくれたの?」


「へっ!?ぃや何となくそう思って気になってたから… ごめんなさい…」


「あ、いやいいんだよ?ごめんね?気を使わせて、その… 気にしてくれてるんだな~?なんて思って」


「僕もその何て言いますか、同じヒトだから… えっと… 気にかかって…」

 

 帽子のツバで顔を隠し声がゴニョゴニョと小さくなっていく、ツバには欠けたような穴がありそこからチラチラと目が見える


 俺も彼女のことは気になっていた、パークに来てからずっとその偉大さを感じ取っていた尊敬すべき人物だもの。

 もっと大人っぽいのかなー?なんて思ってたのだけど… それはさておき、せっかく帰ってきて気を使わせるなんてダメだ、気合いいれてけよ俺!


 緊張してる場合か!


「かばんちゃんとシロちゃん顔が真っ赤だよ?熱でもあるのー?大丈夫?」


「「だ、大丈夫!」」「「あ!?」」


「二人は息がピッタリですね~?初対面なのにぃ」


「…」ムス


「どうしたのですか?ツチノコぉ?」


「な、なんでもない!それよりかばん!お前なら手伝えるんじゃないか?」


「あ、はい!そのつもりできたんです!」


 そう言うとかばんちゃんはおもむろに背中のカバンから… かばんちゃんのカバン?ハハハッ!はぁ、疲れてるね…。


 かばんちゃんはカバンからエプロンを取りだし身につけた。

 

 その姿に、また頭には声が響く。

 

 “ママりょーりできるのー?


 できますよ~?ママは火だって怖くないんだから!”


 あれ、まただ…。


 なんだこれは?なんだかだんだん記憶が鮮明になっていく?


「シロさん、お手伝いさせてください!」


「…え?いやそんな、かばんちゃんも長旅で疲れてるでしょ?」


「シロさんほどじゃないと思いますけど…」


 確かに… しかしここでお客さんに手伝わせるのはどうかな?彼女の帰還パーティーでもあるんだし。


「折れたほうが楽だぞシロ」


 そう言って現れたのはヒグマさん、ハンターの面々が揃っておいでのようだ。


「そいつはそう見えて頑固だからな」


「ヒグマさんもシロさんが心配で来たんですよ?」


「おいキンシコウ…」


「こんなに沢山のフレンズみんなの食事を一人で用意するなんて無茶ですよシロさん?」


 ヒグマさんに続きキンシコウさんにリカオンちゃんが言葉を掛けてくれる。


「うーん… やってみるリカオンちゃん?」


「もう!自分は料理なんてできません!だからオーダーキツいですって!」


 その通り、リカオンちゃんの言う通りオーダーゲボキツなのは当事者の俺がよく知っているのである。


 でも大丈夫、できるって思ってたんだ。


 もしかしたら俺も無意識の間に噂に聞くかばんちゃんみたいにみんなから頼られたかったのかもしれない。

 俺は彼女みたいになんでもできるわけではないが、なにかみんなの役に立つ男としてパークで自分の存在意義を確かめたかったのかもしれない… いやそうだ。


 俺は居場所がほしかったんだ。


 だけど見栄を張っていてはそれも逆効果だろう。


「よーしわかった!かばんちゃん!」


「はい!」


「それからヒグマさんも!」 


「わかった!」


「やるぞぉーっ!」「「おー!」」



 ヒトとヒトが出会い、腕を高く上げ皆と心を一つにして料理に励む。


 その姿はまるで…。


「なんかヘラジカみたいだなあいつら」


「呼びますかぁ?」


「やめろッ!?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます