第25話 帰ってきたヒト
「あー… もしもし?」
『あ、はい!なんですか?』
丁寧な口調の子が返事を返してきた、これは誰だろう?
「図書館のラッキービーストから通信で話しかけてるんだけど… そこは今どこかな?」
『はい!えーっと… 今みずべちほーからまっすぐ図書館に向かってるとこです!』
なんだすぐ近くじゃないか、というか俺はオオカミさんたちの安否を確認したかったのになぜ見ず知らずの子と話しているんだろうか?
『なにこれなにこれ~!どうなってるのー?』
『つーしん?って言うので遠くの人と話せるみたいだよ?』
『遠くの人と?すっごーい!面白そー!』
別の声がする、なんだか元気な子だ… ってそれはいいから!オオカミさんは?
『うみゃー!喋りたぁーい!もしもーし?わたしはサー… 「ごめん!お楽しみのところ悪いんだけどそこにタイリクオオカミさんや他のフレンズはいるかな?」
向こうはなにか話している途中だったが、急を要するので言葉を遮り本題に入る。
サー… なんだろうか?でもちょっと気になったりする。
『オオカミさんですか?でしたらこちらに』
『ん?私かい?』
声がした!良かった無事のようだ!
というか、あまり緊張感のある感じじゃないからたぶんセルリアンとかじゃなく特別に何か用事があったのかもしれない。
「オオカミさん!大丈夫!?」
『その声はシロ君かい?心配かけたかな?遅れてしまってすまないね?大丈夫、みんないるよ?キリンもアリツさんも雪山のキツネさんたちもね』『なんとPPPもいるのだー!』
どうやらみんな無事らしい。
何やら後ろからテンション高めの声が聞こえたが、少し離れてとぎれとぎれに『…イさぁーん?割り込んじゃだめだよ~?』という感じでゆったりとした声が聞こえた、誰かが気を使って止めに入ったようだ。
やはり知らない子が確認できるだけで四人、四人の会ったことのないフレンズ。
そうか、もしかしてPPPかな?俺はフルルとしか話したことがない、きっと他のメンバーだ。
『懐かしい顔を見たものだから少し立て込んでしまってね、すぐに着くよ』
「うん、何でもないならいいんだ、よかった… でももうみんな集まってるから早くしないと料理がなくなっちゃうよ?」
『おや、それは大変だ!予定より少し人数が増えるんだけど平気かな?』
「それは気にしないで大丈夫、材料と体力が続く限り作るよ!まぁ見てなって?」
『フフ、頼もしいね?到着したときの君やみんなの顔を見るのが楽しみだよ、それじゃあ後でね?』
「…?あ、はーい後で」
安否を確認できたからなのか、通信は終わった。
まぁ… あのPPPがくるんだもんな、みんなビックリするだろう。(よく知らんけど)
まったく本当に人を脅かすのが好きな人だなオオカミさんは。
「ドウダッタ?」
「ありがとう、助かったよ?じゃこっちもなんとかしようか?」
「…」
おいこらラッキー「任セテ」はどうした?
そこには次のピザを待ちかねるフレンズたちが目をキラキラさせて厨房に押し寄せる景色が広がっていた
一度に何枚も焼けないのがやっかいだなぁ… あと焼くだけのやつは数枚ストックされてはいるが。
仕方ない、あれをやるか…。
「ピザはまだ焼けないので別のものを作りまーす!」
「「わーい!」」
まず大きめの中華鍋で多目に炒飯を作る、それをおおざらに乗せて形を整える
「ほう炒飯ですか?まずは一口…」
「ダメ!お手付き禁止! …助手もダメ!」
「「チッ」」
「みんなもまだ食べないでねー?」
「「はーい!」」
何が「チッ」だ露骨に嫌そうな態度取るなよお子ちゃまめ。
それは置いといて、次に出し惜しみせずに卵を数個使い特大ふわとろオムレツを作ります… このふわとろのやつにするのが最高に難しかったが今の俺ならできる、どうだすげーだろ。
そして、そんなフワトロオムレツを炒飯に乗せることにより誕生するのが。
「ほほう?炒飯をオムライスにしたですか?」
「やりますね?早く食わせろなのです」
「まぁ見てて?はいみんなちゅうもーく!」
視線を集めたところで俺は炒飯に乗せたふわとろオムレツを半分に開く、するとだ。
トロぉ… 開かれたオムレツは金色の輝きを放つ。←大袈裟
「はい!ふわとろオム炒飯おまち!」
「「すっごーい!?」」
「私食べる食べる!」「あたしもー!」「私にもくだサーイ!」
「押さないでねー?順番だよー?」
そしてピザが頃合いだ!グッドタイミング!フゥー!
しかしみんなよく食べるなぁ?もしかして食べれてない子とかいないかな?ん…?っとあれはたしか?
団体から少し離れた一人のフレンズ、あれはたしかヘラジカさんのとこのヤマアラシちゃんか… あ、もしかして針があるから人の多いとこは遠慮してるのかな?
「おぉ!うまいじゃないかぁ!シロ!もっとだ!」ガツガツバクバク
一方主様は独走状態か… こら部下を見ろ部下を。
彼女には余計なお世話かも知れないが俺は料理を小分けに1つ作りラッキーに持たせることにした。
「ラッキー?あそこにヤマアラシちゃんがいるでしょ?持ってってあげて?」
「任セテ」
ラッキーが彼女の側にいくと彼女も気付いてお皿を受け取った、ハッとしてこちらに視線を送ってきたので小さく手を振っておくと、向こうもニコッと笑い小さく会釈を返してきた… お節介ではなかっただろうか?でも分け合わないとね。
「それから、んー?とあの子は…」
「アレハ ミナミコアリクイ ダネ」
あぁ~じゃんぐるちほーにいたっけか?話してないけどバギーで通ったとき仁王立ちでガクブルしてた気がする。
あの子も大勢いて入れないのかな?なんかちっちゃくてかわいいなぁ… いや、変な意味でなくてっていうかもっとダイナマイトな方が好ゲフンゲフン。
俺はまたもお節介ながらオムライスとピザとナポリタンのバラエティな一皿を作りラッキーに届けさせた… さて反応は?
おや両手を広げて?例の威嚇のポーズだったかな?
距離があるので、俺は「どうぞ食べて?」とジェスチャーで伝えるとオドオドしながら理に手をつけ始めた。
ん?フォークとスプーン使えるのか?誰かのを見て覚えたんだなきっと、利口な子だ。
彼女もまたニコニコと会釈をしてくれた。
…
やがて。
皆様方が俺が必死こいてだす即興料理を待って厨房に固まっているときだ、突如このしんりんちほーになにか入ってきたのだ。
それには見覚えがあった。
そうだあれはバス!ジャパリバスとかいうのじゃないのか?動いている!?しかしそんなはずは…。
運転席には帽子を被った黒髪の子が座っていて、天井にあるバスの耳?のとこにジャガーちゃんっぽい配色の子がいる… 後ろにはフレンズがびっしり座っているようだ。
「まさか!?バスなのです!?」
「博士!あれはもしや?いや間違いありません!」
博士たちもなにやら動揺を隠せない様子だ… みんなもそれに気付き驚きの表情を見せる、そしていっせいに同じ言葉を叫んだ。
「「かばん!?」」
かばん?かばんって?なんだって!?まさかあれが噂の!?
「うみゃみゃみゃー!みんなーただいまー!」
「フレンズさんがこんなに… 賑やかだねサーバルちゃん?」
屋根の子は猫科、帽子の子がかばんさんとするならば、あの子はひょっとしてその旅に着いていったという?
「アライさんも帰ってきたのだー!」
「アライさぁ~ん?屋根に立つと危ないよぉ?」
「ぐぁあ!?」落下
「だからいったのにぃ~ よ~いしょっと」途中下車
「うぅ、痛いのだフェネック…」
「気を付けてよー…」
あの落ちた子とそれを追った子は…。
一斉にフレンズたちが厨房からバスへ集まっていく、は!?今が好機!少し休もう!でも俺も見に行きたい!でも火から目を離すわけには!
とりあえずいい感じに焼けたピザを取りだし、一切れ頂きながら傍観者気取ってみた… でもまぁ、人混みで見えないね?
遅めの食事を頂きながらそれを眺める。
「お前たちよく帰ってきたのです!」
「無事で何よりなのです!」
「ありがとうございます!みなさんも元気そうで!」
博士達があんな顔するなんて余程予想外の出来事だったんだな、オオカミさんはこれを楽しみにしてたのか、いい顔見れたかな?
「ねぇねぇかばんちゃん!なんだかいい匂いがするよ!」
「丁度今皆に料理を振る舞ってパーティーをしていたのです」
「もしかして!アライさんたちの帰還パーティーか!?」
「でもさぁー?帰ってくるの知らないはずだよねー?」
「たまたまです」
「たまたまなのです」
しかし向こうは賑やかだな… 一瞬で客を持ってかれたよ、いや参った参った。
でも帰還パーティーか、いいじゃないか?お近づきのしるしにこの体が持つ限り料理を作ってやろうじゃないか任せろ。←ヤケクソ
「料理を?ヒグマさんが作ったんですか?」
「おいおいかばん、私はここにいるだろ?」
「それじゃあ誰が…」
「博士たちが作ったんじゃない?だって賢い長だもん!」
「その通り…といってやりたいですが違うのです」
「これは最近パークにきたヒトのオスが作っています」
「ヒトの… オス?ヒトがいるんですか!?ここに!?」
束の間の休息を過ごしフレンズ達を傍観していると、バスの方からかばんを背負って帽子を被った… 女の子?で間違いないな?女の子がオオカミさんにエスコートされて歩いてくる、隣にはさっきのジャガーちゃんっぽい子がいる… 俺は彼女が近づくにつれてなんだか急に身なりが気になり始めた。
初対面は第一印象が大事だよ。
待て待て、まず食べるのやめようか… エプロン外そうかな?髪は?ほら寝癖とか。
そうしていると彼女たちはすぐに目の前に着いて俺に声を掛けた。
「待たせたねシロ君?この子が“かばん”だよ、前に話したの覚えてるかい?」
「はい!かばんです、シロさん… ですよね?初めまして」
「あ、えっと… はい、その… シロです、よろしくね?」
あ、あれ?なんか変だな、緊張してきた… 疲れてるのかな?なんだか目も合わせられないし。
困ったな、こんなときはお近づきの印に気の効いたジョークの一つでも言いたいとこだけど。
「これ、全部シロさんが作ったんですか?」
俺は小さく深呼吸して頭を整理させると気を取り直し彼女の質問に答えた。
「うん一応ね?でもさすがにこの量だと大変だからってツチノコちゃんとスナネコちゃんが手伝ってくれたから、実質みんなのおかげかな?」
「わぁすごい!こんなに沢山の料理初めて見ました!」
パァっと花の咲いたような笑顔で俺のことをすごいと褒めるかばんちゃんを見てると、なんだか胸の奥がくすぐったい。
同時に…。
“すごい!良くできたねー?”
まただ、また母さんの声が…。
「あれ?シロさん?」
「…!?あ、いや!?ありがとう!何て言うか… そうだ!おかえりなさい… だよね?よかったら食べて食べて!」
この子と話してると諭されてるような気になるというか… 褒められる時も、なんか認められたって気分になる… 説明が難しいけど、これはそう。
く、屈服?
や、違うだろう。
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