第22話 ケイドロ
“ケイドロ“とは。
警察と泥棒を模した鬼ゴッコのような遊びである。
警察役は泥棒を追い、捕まえる。
そんなシンプルな遊びで、泥棒を全員捕まえたら終わり。
ただし泥棒役は捕まった泥棒を解放することができる、そしたらまた捕まえ直しでなかなかに終わりが見えないことがある。
確かそんなルールだったはずだ、“陣取り”や“缶蹴り”と似ている。
正確なルールはわからない、地域によって解釈が変わるし呼び名も変わることがあるからだ。
そして、今回へいげんちほーで行うのはこのケイドロに似た遊びである。
…
チームヘラジカは警察、普段ライオンのいる部屋で待機。
チームライオンとチームシロは泥棒、城の外で待機。
「いつでもいいぞー!」
意気揚々とヘラジカが叫ぶ、それを見てシロはラッキービーストに合図を出すように頼んだ。
「じゃあラッキー、スタート頼むね」
「ワカッタヨ ソレジャアミンナ 準備ハイイカナ? ヨーイ…」
皆ゴールを目指そうと身構えている、こういう時はまるで焦らされているかのように合図が出るまでの時間が長く感じるものだ、楽しみであれば尚更のことそう。
「スタート」
ラッキーの一声、合図がでた。
ダッ!と走り出した両チームは城の中、ゴールを目指す。
さて先に着くのはどっちなのか、あるいは捕まってしまうのか?
どのチームも手を抜けない戦いである。
「みんないっくぞー!」
「大将早い!早いです!」
ここでライオンチームまっすぐ階段へ走り抜ける、自分達のホームであることを有利と考えたのか迷わず上を目指し始めた
そのまま階段を上がりきりゴールへ… と思ったがそこで先頭のライオン立ち止まる一体どうしたというのか?
「待て…」リーダーボイス
低く唸るような声を出し二人に静止を促したライオン。
本気の彼女にはわかるのだ、とても静かだが逆にそれが違和感となってこの状況を警戒をすることができる。
「いるんですか?」
「あ!カメレオンですね大将!」
どうやら姿が見えないがパンサーカメレオンがその階に待ち構えているようだ、周囲に溶け込み捕獲のチャンスを狙うカメレオンにライオンチーム身動きがとれない。
ならどうする?
「任せて大将!」
「ツキノワ、いけるかい?」
この時、ツキノワグマはいつぞやのリベンジがしたいと感じていた。
そう、かばんが来たときの戦いゴッコで姿を消した忍者カメレオンにマキビシで敗北したという雪辱、今こそまさに晴らすとき!彼女はそう考えていた。
姿が見えない… なろどうやって見付ければ?匂いや音はどう?見つけられるかも!
ツキノワグマは目を閉じ周囲に気を配りそして集中、嗅ぎなれない匂いや足音をたどりカメレオンの位置を割り出す。
「…は!オリックス!後ろ!」
「なにぃ!?」
不意に体を反転させながら前に出るアラビアオリックス、そして彼女のそんな姿に驚いたのか、その時なにもないところから声が…。
「ふぇぇ!?なぜ拙者の位置がわかったでござるかぁ!?」
「やっぱりいたわね!」
堪らず姿を見せたカメレオン、双方一旦距離をとりライオンがいつもの声で言う。
「いいぞツキノワぁ!って後ろ後ろ!」
リーダーライオン、目を丸くしてツキノワグマの後ろを指差す… なんとその先に。
「タッチ…」
「え?」
ハシビロコウだ、既にハシビロコウが低空飛行で通路を移動、ツキノワグマはカメレオンに気をとられて気付くことができず無念の敗退。
リベンジは果たしたが、またリベンジする必要ができてしまった。
「二段構えでござるよ」
「ま、また負けた…」
ツキノワグマ 逮捕
ライオンチーム残り二名
「一時たいきゃーく!」
「た、たいしょーまってぇ!」
ライオンチームはたまらず階段を降りる。
…
わぁー!わぁー!と上の階は騒がしい。
「早速一人捕まったみたいだね」
「自分の縄張りと思って油断したんだろ、ライオンにしてはらしくないな」
「ボクたちはまだいかないのですかぁ?」
一方その頃チームシロ、普通に歩いて城に入る。
「隠密行動で行こうよ、こっちはツチノコちゃんがいるし馬鹿正直に正面突破することない」
「無難だな、向こうも自分の能力をフル活用してくる… 目には目をだ」
「はい」
一方チームシロは頭を使っていく作戦だ、ツチノコの能力で姿を消すカメレオンの位置はわかる、気配を消して足音をたてないハシビロコウの位置もわかる、この城を使った遊びにおいてツチノコのピット器官は相当なアドバンテージである、ただしスナネコは聞いていない。
「じゃあ先頭頼むね?」
「ふん、さっさと終わらせるぞ!…ってスナネコ!どこ行った!」
スナネコ!消滅!
仕方ないので二人で作戦を実行することに、作戦会議をしている間に消えた彼女の身を案じる。
「どこ行ったのかなぁ?」
「そのうち出てくるのを待つしかないな?飽きっぽいあいつの事だ、どっかで昼寝でもしてるかもしれん」
先ほどバタバタと降りてきたチームライオンを見て反対側の階段を上がることにしたチームシロ、そして上がりきる前に早速ツチノコのピット気管に反応が…。
「いるな… この動き、恐らくハシビロコウだ」
「カメレオンちゃんは?」
「今のところ見当たらん」
ハシビロコウが巡回中、過ぎたところにすかさずゴールを目指す作戦だ。
階段の中間で様子を伺い、ついには彼女の姿が目視可能となった。
「よし、過ぎたら一気に行こう!」
「待て、なんか聞こえないか?」
そう、それは下の階から聞こえた… シロも下に注意を向けるとその時。
「オォォォォオ!!ライオンンンンン!」
「ひぇー!どいたどいたー!」
「「ゲゲッ!?」」
なんと、いつ降りたのか知らないがヘラジカがライオンを追い回しているのだ、そして事もあろうにライオンは追われたまままっすぐシロたちのいる階段へ向かってきたのだ。
「逃げるんだよぉーッ!?!?」
「姉さん!なんで連れてくんのさ!」
「めんごめんご~!一緒に逃げよう~!」
「オォォォォ!待てぇぇぇぇえっ!!」
逃げる三人に対し追う一人、しかしその騒ぎを聞きつけハシビロコウが視線を送る
このままでは埒が明かない!シロは思った、ここは三手に別れて各自なんとかする方向に持っていくしかないと。
「ツチノコちゃん!姉さん!ここで散るよ!追われた人はなんとかすること!」
「ったく無責任な作戦を!」
「でもそれっきゃないねぇ~!」
それぞれ別々に逃げるがヘラジカはまっすぐ追いかけてくる、追われているのは…。
「わぁ~!?こっちきた~!?」
シロである。
「じー…」
しかも前方にハシビロコウ、挟まれたシロは完全に万事休すである。
「シロ!観念しろ!」
「じー…」
打つ手無し、ならば諦めるのか?いやちがう。彼は主人公、お遊びと言えど簡単に諦めて捕らえられるような男ではないのだ。
「参ったな… よし、一瞬だけなら!」
まっすぐ正面にはハシビロコウ、後ろにはヘラジカ、そしてその距離はどんどん迫ってくる。
「でぇやぁぁぁあ!」
ヘラジカが彼に飛びかかる、しかし逃げようにもハシビロコウは目前、主人公危うし!がその時。
「ガァウッ!」
「ッ!?」「なにッ!?」
野生解放!その一瞬だけフレンズ化したシロはハシビロコウの目前でフレンズ特有の体躯を生かしクイックにターンした。
そしてその勢いで飛びかかるヘラジカの真下をくぐり抜けそのまま反対方向へ逃げた
「今のって… フレンズ?でもシロはヒトのハズじゃ?」
「なんなんだ今のは?そうかあれがアイツからでる強さの秘密なのか!やはり面白いじゃないかシロ!だが負けん!行くぞ!」
…
その頃…。
「大将… 無事だろうか?」
「タッチでござる」ポン
「あ!?あぁ…」
アラビアオリックス 逮捕
チームライオン残り一人
現在チームシロは逮捕なし、追い込まれたチームライオンはどうする?そしてスナネコはどこへ?
「くっ!カメレオンまで戻ってきたな!これじゃあ動けん!」
ツチノコ、現在二階で身動きとれず。
しかしその時階段から現れたフレンズの姿を見て彼女は驚愕した。
「フフフンフフーンフフン♪」
鼻歌を歌い意気揚々と歩く彼女、そうスナネコである。
「なにやってんだぁ~!?アイツ~!?」
ツチノコは「しまった!?」と慌てて口を押さえた、だが叫んだあとにそんなことをしても無駄だ、ハシビロコウとカメレオンが声に気付きこちらに目を向ける。
「なにか聞こえたでござる!」
「じー…」
「…!?!?!?」
息を殺し隠れるも見付かるのは時間の問題だ、だがこうして自分が注意を引いている間はスナネコが捕まることはない。
図らずも助けるかたちとなったことにツチノコは安心半分緊張半分といったところだろう、尤もスナネコがルール通りの動きをするとは思えないが。
そしてそうしている内にだんだんと二人が近づいてくる、ピット器官は使うまでもない。
さてどうしたものか?できれば自分だって捕まりたくはない、だが二人ともこちらにいる、今にも覗きこまれそう。
どうすればいいんだ!
その時だった。
「待てぇぇぇぇえ!」
「だぁーもう!せっかく逃げ切ったのにぃー!」
シロ、またヘラジカに追われる!
「あ、ヘラジカ様でござる!」
しめた!二人はシロに気をとられている、ツチノコはこれを好機と見てそろりと移動。
たまたまに過ぎないが彼女は逃げることに成功した、運は味方してるとニヤリと笑いながらその場を後にする
「助かったぜシロ… しかし」
いつのまにかうまいこと捕獲チームを避けているスナネコはどこに行ったのか?という疑問はあった。
だが姿がない以上考えても仕方がない、ツチノコはこの隙にゴールを目指すことにした。
一方…。
「あぁクソー!捕まった!ぜぇ…はぁ…」
「敵ながら天晴れだ!後でさっきのをもう一度見せてもらうぞ… さぁ次はライオンだ!行くぞー!!」
「はぁ… 疲れた」
シロ 逮捕
チームシロ 残り二名
…
「ひょえー!見つかっちゃったー!」
「ライオォォォン!勝負だぁー!!」
ヘラジカはその無限とも言われそうな体力で全力疾走、ライオンは足が早いがこのまま持久戦になれば勝ち目がないだろう。
だが彼女もイタズラに体力を消耗するだけで終わるつもりもない、そう考えたライオンは腹をくくりまっすぐゴールへ強行突破することを決意したのだ。
「ハシビロコウ!ライオンを止めろ!」
シロの時同様挟み撃ちとなるが。
「そらぁ!」
ライオン!器用に壁を使いハシビロコウをかわす!
「えっ!?」
「なんだと?流石はライオンだな!だが諦めんぞ!」
振り向くことなくまっすぐ自室へ、ゴールは目前だ!
「よーっし!いっちばんのり…!あ…」
「うォアハッ!?」
ここでゴール前まで来ていたツチノコと鉢合わせだ!さぁどうする!
「な、なに見てんだぁ!オレが先に来たんだー!」
「勝てばよかろうなのだぁーッ!!」リーダーボイス
両者襖に手をかける、勝つのはどっちか!
しかし!
「確保でござるよ」ポンポン
「「え?」」
おーっと両者カメレオンの存在に気付かずに確保だ!
「しまった!?近くにいるのはわかっていたのにぃ!」
「ふぁ~とうとう捕まったかぁ… 残念」
ツチノコとライオン 逮捕
…
「どうやら今回は私たちが完全勝利のようだな」
「今回の戦いは拙者の能力が最大限に発揮されて満足でござるよ!」
「…」コクリ
「よし!では堂々と勝利の名乗りをあげようじゃないか!」
チームヘラジカは勝利が確定してご機嫌だった。
そのまま三人は意気揚々とゴールへの襖を開き名乗りをあげようとした。
がその時そこには!
「やぁやぁ!私は…ふぁっ!?」
ゴロゴロとボールを転がして遊ぶその姿はまさに…。
「お?」
スナネコ!すでにゴール!
よって勝者は!
「優勝ハ チームシロ ダヨ」
「「やったー!」」
「満足ぅ…」
…
ケイドロが終わるとすでに日は落ち始める頃だった、昼過ぎになりみんなでジャパリマンを食べながら楽しく笑いあった。
文句を言ってた俺だけど、なんだかんだ楽しんでいたので充実した時間だったのだと思う。
「いやぁ、いい戦いだったぞシロ?」
「ヘラジカさんタフすぎだよ」
「新しい遊びも増えて楽しかったねぇ~、また来るんだよシロ!」
満足してもらえたようなので俺個人としては大成功だ、なんでこうなったんだっけ?忘れてしまった。
とにかく楽しんでもらえてよかった。
「ところでぇ?なんで三人して図書館帰ってたの?」
とライオン姉さん、そうそう三人で… は!?そうだ!パーティーの準備だよ!忘れんなよこのスカタン!
「しまった!つい時間を忘れて!みんな明後日図書館でパーティーだから!来てね!」
「「「パーティー?」」」
「そう!料理をたくさん作っとくから!是非食べて!」
「「「行く行く~!!」」」
俺たちはそれだけ言い残し図書館へ急ぐ、飛ばせ… ゴールはすぐそこだ!
「まったく急いでるのを忘れるなよ!」
「ツチノコも楽しそうにしてたではないですかぁ?」
「~///!?!?ほっとけ!」
ひぇ~!?それにしてもこのあとすぐ準備かぁ… ハードだなぁ…。
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