第18話 のりもの
翌日のこと。
しんりんちほーのジャパリ図書館からサバンナちほーへ向かっています。博士達に掴まり空を渡ってひとっ飛び、ショートカットの為か火山のすぐそばを通過したようだ。
間近でみるとこのサンドスター火山ってのは本当に未知だ、俺は生まれた頃からこんなだからあまり違和感を覚えなかったけど、よく考えたらありゃ異常だよ… 触れると女の子になるって?オスもメスも関係なしにだよ?なんなのその現象?
でも聞いたことがある、人間だけはサンドスターの影響は受けにくいそうだ。
父さんも触れたことがあると言ってた、晴れやかな気分になったけど肉体に影響はなかったって。だから認知症の治療薬とか抗うつ剤とかに使えるんじゃないか?なんて言われていたが、効果には個人差もあるしいかんせん未知過ぎて実用段階までいかず。
調べても調べても謎が増えるばかり… やがてサンドスターローとかいうのが大量に出てきて大混乱。
そしてパークは閉鎖… 危険なので全国的に立ち入り禁止となった、なんでも厄介なセルリアンが大量発生して爆撃機まで出動したんだって?
こんな
空路を使うと一直線、やがて俺はサバンナの草原に降ろされた。
「ありがとう二人とも、なるべく早く戻るよ?」
「フレンズが何人来るかわかりません、食材集めくらいはしといてやるですよ」
「シロ、もしなにかあったらまたいつかの時のようにラッキービーストで呼び出すのですよ?」
ハハハ… お母さんじゃないんだからなにもそんなに心配しなくても、お母さんか… 母さんもこんな風に言うのかな?
なんて考えても仕方ない仕事を済ませないとな。
「わかったよ、じゃあトキちゃんにもちゃんと伝えといてね?」
「わかっているですよ、我々は長なので」「賢いので」
そう言うと二人は音もなく飛び上がすぐに飛び去ってしまった。
ここまでくるのに飛んできてから一時間も掛かってないんだけど、歩くとどーもやっぱり数日かかるんだよねぇ?本音を言えば一日で戻りたいとこだけどそうはいかないだろう。
でも今回は地図だけじゃない、頼もしい旅のお供がいる。
「さて、ほーら出ておいでラッキー?」
「ココハ サバンナチホーダネ シロ、何ガ見タイ?」
はぁいラッキーちゃんカバンの中でイイ子イイ子してまちたね~?
ご存知ラッキービーストだ、いろいろ道案内も兼ねて連れてきておいたのだ。
さて最初に向かうのは…。
「カバさんのいる水辺があるんだって?そこに行こうと思う、わかる?」
「検索中… 検索中… ココカラ西ノ方ニ ソレラシイ水辺ガアルネ」
「西だね?OK、細かいことは現地のフレンズに聞くさ」
待てよ?博士達そこで降ろしてよ!
…
ここはサバンナちほー… なんでも例のかばんさんは出身で言うとこのちほーだとか?ツチノコちゃんが言っていた、パークガイドの帽子についていた髪の毛にサンドスターが当たりフレンズとして生を受けたんだそう だ。
この件で分かる通り、サンドスターの何がすごいって化石でも当たってしまえばフレンズとして甦るんだそうだ、何が起きてるんだ?考えて分かるようなものではない。
それにしても類い希な存在だかばんさん… 人間は影響を受けにくいと火山を通った時に言ったが、すまんありゃ嘘だった。
というのはさておき、かばんさんは髪の毛だからこそフレンズ化できたのかもしれない、髪の毛の主がもういないとか遠く遠く離れて干渉を受けないとかそんな理由かも。
髪の毛の主は知らないけど… 羽根付き帽子ということはパークガイドの誰かってことだろう。
よく考えたら髪の毛からポンと生まれたのだものそりゃあ記憶もなにもないよね?
彼女はここでサーバルキャットと出会うことで図書館への旅が始まった、そしてサーバルもサバンナちほーから出るという考えに至った。
サーバルは彼女の為だ彼女の為だと始めたはずの旅が、いつの間にか自分が彼女のそばにいたいという気持ちに変わりとうとう海の向こうの旅にまで着いていった。
美しい友情とはまさにこれのことだ。
彼女は人望が厚い、変な話サーバルじゃなくても誰かしら彼女に着いていくことになっただろう。
ところで俺にそこまでしてくれる友人は何人いるかな?いややめよう… 比べたから何だって言うんだ。
「ん… え?何あれ?」
その時… 歩いていると何やら奇っ怪な生き物が地面に横たわっているのが見えた、草が少し深いので分かりにくいが確かにいるのだ、白と黒の… なんだあれ?丸まってるのか?フレンズさん?
「ラッキー?ねぇラッキー?あれなに?なんかでかいナメクジみたいのがいるんだけど、やばい怖い」
せめてフレンズの姿が見たかった、なんだあれは?俺が小声で訪ねるとそのそちらの方を向きラッキーは答えた。
「アレハ “サバンナシマウマ”ダネ」
はぁ?シマウマ?
あぁなるほど… 言われてみればシマウマだねあの模様は、うーんと?そしたらあれはフレンズってことでいいんだよね?途端に安心してきた、害は無さそうだし話しかけてみよう。
「オーイ?もしもーし?そこの… え~と、シマウマさん?」
「へ?あぁごめんなさい、ボーッとしてました」
あ、そういうことね?
振り向くとどういう状態なのかようやくわかった、さっきまで見えていたのは後ろ髪か、ずいぶん長いからわからなかったが確かにシマウマの女の子だ。
「ここらでは見ませんね?」
「初めまして?俺はシロ… 少し前に海の向こうから来たんだ」
「海から?じゃああなたは海のフレンズ?」
「フレンズじゃないよ?俺はヒト、船で来たんだ?」
「ヒト… フネ… はぁなるほど」
うん、絶対わかってないよね?とりあえず例の水辺のことを聞くことにした。
「カバのとこですか、もちろん知ってますよ?ここをまっすぐです」
俺は彼女の指差す方を見たが、それは見渡す限りのサバンナだった… ざっくり言い過ぎだよ。
「よければ着いていきましょうか?」
「いいの?やったぜ!せっかくだしお願いしようかな」
「では、こちらですよ」
そこからは危険極まりないオフロードをこの二本の足で踏破するコースが待っていた。
俺は運動は得意なのさ?せーぶつ学的にね!そうして野を越え崖を越え、時に川を渡り大きな土手を登ったらそこには…。
「着きましたよ、ここです」
「はぁ… はぁ… タフだねシマウマちゃん?」
「シマウマですからね?水を飲んでいくといいですよ?ここのお水は美味しいです、今は空いてますが普段はいろんなフレンズでいっぱいです」
「そうなんだ?じゃあ飲「だぁ~れぇ~?」
俺が水辺に近づくとザバァー!っと誰かが顔に水をぶちかけてきました。
水辺から何かが現れたようだ、彼女が現れた瞬間水しぶきを大量に浴びたがもういいよ、疲れているのでいいシャワーである。←開き直り
そうして現れたのはおまちかね、みんなと仲良しな面倒見のいいカバさんだ。
タイトな服装が色っぽい、ふ~じこちゃ~ん?って言えば伝わるだろうか?
「あらシマウマ」
「カバにお客さんを連れてきましたよ?」
「お客さん?あらぁ?見ない顔ね?もしかして… あなたも自分がなんのフレンズかわからないのかしら?」
「初めましてカバさん?俺はシロ、フレンズじゃなくてヒトだからその辺は大丈夫だよ?ちゃんと知ってる」
そう言うと彼女は少しビックリしたような顔をして俺の顔を覗きこんできた。
こうして見ると優しい目だ、お姉さんって感じ?なんかこうあれだ、包容力!包容力を感じる!バブみって言うんだろ?知ってる!
つい顔を赤くしてしまったが、カバさんはそれを気にも止めず話を続けた。
「そうヒト… あの子と一緒、確かに似てるとこも多いけど、結構違うのね?あとあなたはもしかしてオス?かしら?」
「うん、訳あってパークの外から来たんだ」
「そうでしたの… あ、ご存じでしょうけど私はカバよ?何か御用だったかしら?」
あ、そうだ… いけないいけない、本題を忘れて帰るとこだったぞ。
「実は俺は今図書館で料理をつくってるんだけど…」
「まぁ、料理ってあれでしょ?ほら!カレー!」
カレーを知ってるのか、かばんさんのおかげかな?
「そうそう、それだけじゃないけどみんなにも食べてほしいからどうかな?って、ここは沢山フレンズが集まるし、カバさんここにいること多いみたいだから話しといてくれたらと思って」
「いいですわねぇ!そんなことでしたらお安いご用よ!」
「ありがとう!カバさんも是非来て?」
あっさりと商談成立… だね?さて、後は各ちほーで同じようにこのことを話しつつ帰ろうじゃないか。
なので二人とはここで一旦お別れだ。
「じゃあカバさん、シマウマちゃん、俺は図書館に戻るよ?どうもありがとう!」
「お役にたててなによりです!」
「図書館までは遠いから気を付けるのよ~?」
「は~い、それじゃ!」
そのままじゃんぐるちほーのゲートまでラッキーの案内で歩く。
しかし日が傾いて来たな… 道もよくわからないしやっぱり歩きじゃ三日はかかるよ?
「ねぇラッキー?徒歩じゃキツくない?乗り物ないの?」
「検索中… 検索中… 近クニ ジャパリバスハナイヨ」
「困ったね」
「…任セテ」
え?任せてと言ったのか?
もしかして数体集まって合体する機能とかあるのかな?ラッキービースト!トランスフォーム!
ということはもちろん無い、ラッキーは周囲を見渡しゲートの側にある詰所の様なとこに来た、横には物置?ガレージ?がある… とてもボロい、ツタが張ってる。
「開ケテミテ」
「ここを?まぁそういうなら… よいしょ!んぐ!開かない!」
劣化して開かないのか鍵が掛かってるのか知らないがとにかく開かない、参った… 壊すか?←脳筋
「鍵ガ閉マッテルノカモ 待ッテテ」
ラッキーは詰所に入り引き出しの中を漁っている、器用だな… 耳で引き出しを開けたぞ?どんな作りしてんだろ。
「アッタヨ 使ッテミテ」
鍵を手に取りシャッターの鍵穴へ… 鍵も鍵穴も錆が付いていたがカシャンと動く音が鳴る、少なくとも鍵としては機能してるってことか。
今度こそ開けよう、俺は先程同様グッと力を込めてシャッターを上へ上げた。
「そらぁ!」
ガラガラガラ!と勢いよくガレージが開いた、成功だ。
そしてその中には…。
「これは…」
「ジャパリバギーダヨ」
ジャパリバギー… これは所謂バイクが4輪になったような形をしていて色は黄色、どこかで潰れたバスを見たけどあれによく似たデザインだ。
ラッキーが言うに、これはパークガイドが緊急出動時に使うとか、例えばジャングルで迷子を捜索とか、怪我をして動けないお客様の救助、砂漠はもちろんのことなんと雪山にはスノーモービルもあるらしい、電動?ではないようだ、燃料タンクが付いてる。
「なるほど、緊急出動用か… 動くの?」
「チェック開始…」
ピコピコいって何かスキャンしてるみたいだ、これで異常分かるとか進んでんな。
スキャンが終わるとラッキーはピョコンと1つ跳ねて俺に言った。
「乗レルヨ」
やった!でも問題が1つ… でもとても大きな問題があることに気が付いてしまった。
「俺免許ないんだけど…」
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