第17話 サバンナへ行こう

 こんにちはシロです、時が経つのは早いもので俺もここジャパリパークに来て大体数ヶ月ちょっとくらいです、きっと一年もあっという間でしょう。(カレンダーがないので正確にはわからない)


 料理の方はメキメキと成長する一方で、課題だったチーズとヨーグルトはラッキーに聞くと「デキルヨ」とのことだったので後日手に入りました、彼らはとても優秀ですね?あれところで“彼”で合ってるのかな?まぁいいか。

 博士たち曰く、ラッキービーストがジャパリマンを作ってるので頼めば食材の加工なんかもやってくれるんじゃないか?とのことだ、ご覧の通り何でも言うことを聞いてくれたわけだ。


 あれからホットケーキやチーズケーキ、パフェにも挑戦、やっぱり元は動物でも女の子だからなのか、スイーツは好評だった。


 火を使わない料理なら博士たちもできるようになりました、卵かけご飯とか。

 尤も米は俺が炊くんだけど、二人は「フレンズは動物がヒトの特性を…」云々と言うので、馴れれば火も扱えるような気がするんだ、ファイトだよ長。


 でも俺個人の成果としてピザ的なものを作れたのが一番の成果かな?今度はパスタや麺類にも挑戦だ、イタリアンな食卓が増えそう… ちなみにナポリタンはイタリアンじゃないらしい。←どーでもいい


 そんなドタバタコックさんライフを送る日々の中、タイリクオオカミさんとお供にアミメキリンさんが図書館を訪ねて来ていた。

 どうやら例の漫画の持ち込みらしい… オオカミさんにとってここは編集社みたいなものなのかもしれない、ところで漫画がどんな物か俺も気になっていたんだった。


「雷が鳴り、一瞬見えたその姿にギロギロは戦慄した!」


「「おぉ~!」」


 読み聞かせている… なるほどずっと疑問だったけど合点がいった。


 漫画というよりあれは紙芝居だ、漫画を紙芝居形式で読み聞かせているんだ。

 文字の読み書きができないのに漫画?と思っていたが成る程こうすれば可能なわけか、この人もしかして博士たちくらい賢いんじゃないのか?絵だけで見てもなんとなく伝えたいことは分かるし、単に慣性だけで作家をしているわけではないようだ。





「というわけでパスタを作ってみました」


「「「おぉ~!」」」


 歓声を頂いた、少々手間だったがカルボナーラとやらを作ってみたよ、うまくいっているはずだけど… どうかな?


「細く長いものが複雑に絡み合ってるですね!」

「この白いミミズのようなものはなんなのですか?」


「その表現やめてよ… それがパスタ、スパゲッティとも言うかな?名前はカルボナーラ」


「どれが本当の名前なのですか?」

「スパなんとかだったりカルなんとかだったりとややこしいのです」


「パスタってのは助手の言うその白ミミズの名前だよ、またの名をスパゲッティ… そういう料理のことを総称してスパゲッティ料理とかパスタ料理って言うんだよ(適当)

 でそれはその中のカルボナーラっていう料理… ドゥーユーアンダスタン?」


 俺は一通り説明したつもりだったが博士達は何やら納得のいかない顔をしていた、何が気に入らん?その御立派な頭脳で理解してくれ。


「統一するべきです」モグモグ

「我々はともかく周りが困るのです」モグモグ


 まぁ考えててくれ… さて、オオカミさんたちの分も持ってこないと。


「どーぞ二人も食べていって?」


「お、ありがとうシロくん?実は一度君の料理を食べてみたかったんだよ?」


「本当に白いミミズが沢山…」


 予想通りオオカミさんは興味津々だ、しかしキリンさんも白ミミズ呼ばわりか、嫌がってはないし恐れてもないが不思議そうな顔をしている… そうかフレンズに麺類を見せるとこうなるのか。





 「いただきます」の後、皆フォークの使い方に難儀していたがキリンさん意外は難なく使いこなしたようだった、

 がんばれ迷探偵、次は箸を使う料理が待ってるよ?


 それから、みんな美味しい美味しいと食べてくれるのが実に幸せを感じる、これが“作り甲斐がある”ってやつなんだね?頑張っちゃうよ~?


「そうそう、お好みで粉チーズをかけるといいよ?」


「いろんな味が楽しめるんだね?頂くよ」


「先生が言うなら私も!」


「では博士、私たちも?」


「そうですね助手、これぞ味の追求です」


 やはり、パスタと言えば粉チーズだ、そうは思わんかね?そう思ったので作っておいた、皆さんお皿に適量をかけていく。


 さぁ、おあがり?


\おいしー!/


「はい、いい表情頂き!」


「おや?それは私の真似かな?フフ… じゃあこんな話を知ってるかな?丁度このパスタのように無数の触手を持ったセルリアンがいたらしいんだけど…」


 楽しい食事会だ、正直オオカミさんの怪談は食事中には勘弁願いたい内容だったけどオオカミさん的にはいい表情が見れたようでなによりです。


 こうしてみんなで楽しく食事なんて最後にしたのはいつだろう?忘れちゃったな…。

 なんか、こんなに楽しいならもっと大勢に喜んでもらえたらいいなぁ?なんて思うのは俺もとうとう料理人になってしまったということだろうか?


 そうだ、ライオン姉さんがパーティーの事話してたっけ?


 俺はパーティーのことを博士たちに提案してみた。


「みんなに料理を食べてもらいたいのですか?」


「うん、博士たちだって別に一人占めしようとしてるわけではないでしょ?みんなで共有した方が楽しいと思わない?」


「そうですが… みんなとはどこまでのことを言ってるのです?」

「一口にフレンズと言っても沢山いるのです、すべてが集まればしんりんちほーがフレンズでおしくらまんじゅうになるですよ?」


 まぁ分け隔てするつもりはないけどそうなるね。だったらこうするのはどうだろう?各ちほーで告知をする、目立つとこにチラシみたいな… やダメか、皆文字が読めない。

 でもそれっぽい宣伝をして興味があれば来るだろう、これはそう、自由参加というやつだ。


「いいじゃないか博士?彼の料理はみんなに共有するべきだと思うよ?」


「オオカミさん、なんかいい案ある?」


「そうだねぇ… キリン?君も考えてくれ」


「コホン、それではこの名探偵アミメキリン… 1つ名案があるわ!」


 お、あまり期待できないが一応聞いておこうじゃあないか?猫の手ならぬキリンの手も借りたい、実際猫とフクロウの手だけでは足りていない。


 博士たちもオオカミさんも期待してないようだが… なぜこんなイメージが?キリンさん黙ってれば美人なのにね?黙ってればね?


「声の大きなフレンズにいろんなちほーで叫んでもらうのよ!そうすればみんなに届くわ!」


「君にしては面白い… で、その声の大きなフレンズは?」


 すかさずオオカミさんのツッコミがキリンさんを襲う、名案というからなにかと思ったらパワーでごり押しだった。


「宛が無い!?と思うでしょう先生?でも今日のアミメキリンは一味違う!先生に遠吠えしてもらえばいい!」


 オオカミの遠吠えか… 考えたじゃないか?でもなんだかご本人様は不服そうなんですが?


「私はこの姿になってから遠吠えはしないよ、群れを作ってる訳じゃないしさ?」


「うぇっ!?」


「ポンコツですね」

「ポンコツなのです」


「ひどい!?」


 本当にひどいな… しかし声の大きなフレンズか、文字が通じない以上それがいいかもしれない、言わば広告塔の役割、さながら俺はスポンサーか?


 あれ?この案もう一息だと思うのは気のせいかな?


 俺があまりこの場所を離れたら博士たちが禁断症状を起こし、火を使い始めて間違えて図書館を焼き払うかもしれない、そうなれば長の焼き鳥の出来上がりだ。


 だったら代わりがいればいいのか、一人や二人に限らない、いろんなちほーにいてくれて宣伝をしてくれるフレンズ達…。


「キリンさん、それもう一息だよ」


「え?」


「声で知らせるってやつ、例えば各ちほーにそういうフレンズ… 大声でなくても話してくれる人がいればさ?」


「なるほど… キリン?私たちは帰りがけにみずべちほーでPPPに声をかけよう、温泉宿もね?」


「あ、え?は、はい!」


 そうそうその感じ!さすがオオカミ先生!あとそっちと反対側!鳥のフレンズがやってくれると… そうだ!


「高山のトキちゃんに頼もう!飛びながら歌ってもらうんだ!」


「強烈なトキの歌声なら聞きたくなくても耳に入るのです」

「シロ?それではサバンナちほーのカバにも声をかけるといいですよ?」


「カバ… さん?」


 知らない子ですね?サバンナちほーか、行ったことないな。

 助手が言うにはみんなの集まる水辺に必ずいるフレンズがカバさんだとか、世話好きだからみんなとおしゃべりしてくらしい。


「なるほど、じゃあ行ってみようかな?」


 しかしサバンナか…。

 地図を見ると大分離れてるのがわかる、こんなとこツチノコちゃんと歩いて以来だな、あの時はショートカットしたから寄ってないけど。


「気を付けて行ってくるのですよ?」

「セルリアンもいるのですからね?」


「やっぱり送ってくんないんだね…?」


「我々はおいそれとこの場を離れられないのですよ」

「我々は長なので」


 確かに、正論だ。

 二人を訪ねてくるフレンズも多いし、こればかりは仕方ないか…。


 と… 思ってたんだけど。


「まったく仕方ないですね?」

「行きだけですよ?」

「帰りは自分でなんとかするのです」


「いいの?やったー!さすがは長!」


 頼りになる長だ、でも真相はそうしないと俺の帰りが遅くなるからだろう。


「我々はおかわりを待っています」

「用が済んだらさっさと戻るのです」


「わかってるよ?まぁどうしてもって時はまたヒグマさん捕まえてよ?」


 プランとして、俺は高山に行かなくてもいいことになった。 

 何故ならトキちゃんには二人が俺を送った帰りにカフェで休憩がてら伝えていってくれるらしい、やったぜ頼りになる長だね?


 そして話が済むとオオカミさんたちは暗くなる前に温泉に行きたいとのことで足早に図書館を後にした、オオカミさんは飲み込みが早くて助かるね?


 じゃあ、俺も旅の準備をするとしますか!

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