第8話 ロッジにて

「ロッジに到着!」


 現在、俺とツチノコちゃんは行動を共にしてロッジに来ています。

 道中はなかなか危ないこともあったけれど例のピット気管とやらのおかげで最悪のパターンは回避できた、ピット器管様々である。


「なかなか大変だったな…」


「本当にね、俺セルリアン初めてみたよ?」


 そう、それはロッジに着く少し前のことだった。





「シロ、止まれ…」


 真面目な声で俺を呼び足を止めるツチノコちゃん、その目は真剣そのものでこれでもかというほど周囲を警戒しているのは俺でも分かった。


 即ち、近くに“何か”が待ち受けているということだ。


「もしかして…」


「セルリアンだ、しかも多いな…」


 確認できるだけで小さいのが5体はいるらしい、幸いなのが小さいってとこだが、さてどう突破したものか?無理に戦って被害が出るのは避けたいところ。


「迂回する?」


「それが一番だが迂回したところにまたいるかもしれない… 小さいやつだけとも限らないし~!くそ面倒な位置にどいつもこいつも!」


 ここはヒトらしく頭を使ってくか、自信ないけど…。


 ツチノコちゃんの話だと等間隔で何体か配置されてるような感じらしく迂回するなら大分遠回りになるらしい、しかも迂回した先にもいる可能性があり実質囲まれているような状態、だったら倒すか一ヶ所に集めたいところ、倒すにしても一網打尽にしてやりたい。


「…って感じかな、どっちがいい?」


「あの大きさの一匹くらいなら簡単だが…」


 ゲームと現実は違うので、雑魚を倒してレベル上げみたいなことはできない、だから危険は避けて通るのが一番なのだが今は戦闘も避けられないような状態。

 でも一匹倒しにいくと近くのやつに見つかる、でその近にいるやつがそれを見て近づいてきてまた近くの… という感じで負の連鎖を生む、実質あれは罠のようなものだ。


「分かった、じゃあ俺が囮になるよ」


「はぁ!?なに言ってんだァ!?」


「大丈夫、弱点は… 頭?背中?に石があるんだったね?それと明るい方に進むって?」


「あと個体にも寄るが海水だ… 本当にやるのか?危険だぞ!?」


 心配してくれてありがとう、策という程ではないけど俺が一ヶ所に集めてしまえばツチノコちゃんは突破できる。

 俺はそれを確認したらやり過ごしてツチノコちゃんの後を追う。


 まぁ、いざとなればやってやるさ…。


「大丈夫だよ?ざっとでいいから位置を教えて?あと荷物持ってくれる?」


「まぁ~… そう言うならなにか策があるんだろうな?」


「一応ね」


 ツチノコちゃんに大まかにセルリアンの位置を聞き目視できるとこまで近づいた、一番近くのヤツが見えてくる。


「あぁ~いたいた、あの青いやつか」


「それ以上近づくなよ?」


 それじゃあ… と俺は必要な物だけもらい後の荷物は彼女に任せた、どうかご無事で。


 さて…。


 ここは昼間だが木が多いので少し暗い、明るいものに引き寄せられるセルリアンにはちょうどいい、光るものを用意すればそこに寄ってくるだろう、まったく虫みたいなヤツだ、あれにも自我はあるんだろうか?


 ところで光源なんてどうするの?はいそこでこちらです… と俺が取り出したのは赤い筒上の物。


「なんだそれ?」


「発煙筒って言ってね、存在を知らせるために使う花火みたいな物だよ」


「なんだぁそりゃ?花火?」


「後で話すよ?さぁ隠れて、アイツら一ヶ所に集めるから、タイミング見てロッジまで走るんだ?荷物重いだろうけど頼んだよ?」


 彼女は囮にするのがやはり納得いかないのか苦い表情をしていた、でも確かに逆の立場なら俺もいい気分ではない。


「ん~ぐぬぬぅ…!いいか?絶対追い付けよ!」


「勿論、約束だよ」


 心配してくれるんだなんてやっぱり優しい子だ、感動した… まぁ今のやりとりって死亡フラグとか言うらしいんだけどさ?死ぬつもりは勿論ないけども。


 そんなことよりアイツら、特別足が早いって訳でもないらしい。


 適当に挑発して発煙筒を使って誘導してやろうじゃないか。


 そして俺はセルリアンに近づいた、大きさは1メートルくらいか?これで小さいってことは大きいのはどれくらいなんだ?倍か?もっとか?まぁいいさ、さぁ行くぞ!


「おい1つ目野郎!」


 セルリアンがこちらに気付き目が合った、生気の感じない気味の悪い目だ… ポヨンポヨンと跳ねながらこちらに向かってくる、あまり早くないので確かに走れば逃げれそうだ。


 ダッ!と地面を蹴りツチノコちゃんから離れるように走った、振り向くとさっきまで1体だったのが3体に増えている、いいぞ… これで活路は開けたか?


「来てる来てる!それじゃどっかに隠れてこいつの出番だ!」


 走りながら発煙筒の用意、そしてちょうどいい感じの木を見つけた、これに登って隠れたら… よし!てか増えてるし!5体全部来てるし!

 臆せずに発煙筒を使うと、バァッと火花が飛び散る、筒の先端から煙と共に赤い光が吹き出した。


「来たな?そらあっちに集まれ!」


 勢いよく発煙筒を投げた、するとセルリアンは俺のことなど意にも介さず発煙筒に向かい駆け抜けていく。

 ある程度離れたのを確認すると俺は木から降りてその場を後にした、発煙筒の光が消えたらまたこっちに来るだろう… 突っ立ってる暇はない、俺もツチノコちゃんの後を追うように急いでロッジへ向かった。



…  



「よし、ここまで来れば問題ないかな?ロッジも見えてきた、すぐそこだ」


 ツチノコちゃんも無事に逃げてるといいが… そう思いながら歩いていると後ろに気配、ツチノコちゃん?じゃなさそうだ、振り向くとそこには。


「ゲェッ!?セルリアン!?」


 さっきのやつよりでかい、3倍はある。

 この辺に隠れていたセルリアンだろう、こともあろうにこんなロッジのすぐそばにも沸いていたとは、ロッジのお客さんもこれでは近付けないじゃないか。

 無機質な眼球は俺を捉え、体をブヨブヨと揺らしながらジリジリとにじり寄ってくる。

 逃げたいが、一瞬でも背中を見せるとアウトな気がする。


「クソ… あぁもう!仕方ない、やるか!」


 覚悟を決めて臨戦態勢をとる、がその時だった。


「オォゥラァーッ!!」


 パッカァァァン!とセルリアンが暴散。


 なぜならツチノコちゃんだ、ツチノコちゃんが勢いをつけた飛び蹴りで見事セルリアンの石を叩き割ったのだ、それはもうものすごい蹴りだった、仮面ライダーもマスク越しに真っ青だ。


「…ったく!なんでこんなでかいの見逃すんだよ!お前の目は飾りかッ!?」


「ははは… ありがとう!助かったよ!」


「んぐぐ… お互い様だ、いいか?もう無理するなよ?」


 しかし何故彼女が?

 

 ツチノコちゃんは俺の作戦通りまっすぐ走り抜けてが途中でこいつに気付いて迂回したらしい、そこでなにも知らない俺が間抜けにも突っ走りピンチに… それを見たツチノコちゃんは幸い背中を向けていたヤツに向かって迷わずライダーキック、想定外のことも協力プレイで解決したというわけだ。





 ということがあったが俺達は無事ロッジへ、中に入ると受け付けにいたのはアリツカゲラさんというフレンズだ、メガネがチャーミング。


「ようこそロッジアリツカへ!いろんなお部屋がありますよ?」


「俺は普通のでいいけど、ツチノコちゃんはやっぱり暗くて狭い方がいいの?」


「いや、任せる… こっちのことはいい、気にするな…」


 ん?なんでちょっと汐らしいんだ…。

 

 は!?そうか!この状況!まるで女の子をホテルに連れ込んでるみたいになってるんじゃ!?なんてことだ!まずいですよ!


「ではご案内しますね?こちらへ…」


「待ってください、部屋は別々にします」


「できますが~… 一緒の部屋の方がいろいろ都合が良いのでは?」


 いや、誤解のありそうな言い方をしないでくださいアリツカゲラさん… 多分その方が楽でしょ?ってことをいってるんだろうけど、よろしくやってこいよ?みたいに聞こえるからやめてくださいお願いします。


「でもほら、男女で同じ部屋はやっぱり…」


「い、いや!いい!面倒だろ!?一部屋でいい!」


 え!ツチノコちゃん急に何言い出すの!?自ら連れ込まれるだなんていけない子!


「よろしい… ですか?」


「大丈夫だ!そうだろ!?」


「えっと… ツチノコちゃんがいいならいいんだけど」


 大変だ… まさかツチノコちゃん始めからそういうつもりで?

 というわけではなく、一部屋であることに文句はないがいつも一人でしか行動しないためにこうして誰かと寝泊まりする状況に慣れていなかったようだ。

 この言い方だとまだ大人の階段を登るみたいな表現に聞こえなくはないがそうではない、ツチノコちゃんは単独行動が主なのだ… 故にこういうシーンになりにくい。


 つまり何が言いたいかと言うとベッドは2つあるから別々に寝るってことだ、俺だって会ってからそんなに時間の経ってない子を襲うだなんてそんなことしたくないさ。 


 ほら、お泊まり会ってあるだろ?たまたま女の子もいたってだけさ、そんな経験はないけども。




 



「じゃあ次の予定」


「さっきのセルリアンの対策もしないとな」


 恐らくだが、さっきのセルリアンは港にいたやつらと同じやつらで消えたと思ってた港のやつらはこっちに移動していたんだ。

 これにはツチノコちゃんも同意見、思ってたより数が居ないのはハンターの仕事だろうか?


「じゃあ予定通り朝一番にここを出よう、ツチノコちゃんがいればアイツらがまだ残ってても切り抜けられる自信がある」


「んぁ!?あんまりオレを頼りにされてもだなぁ!?」


「大丈夫だよ、協力して進もう?頼りないかもしれないけど俺のことも頼ったらいいよ」


「そ、そうか…?」


 今後の打合せや食事、少し休憩をしているうちにやがて日が沈み始めた。

 部屋を出るとロビーの方で話し声が聞こえたので行ってみると、そこにはアリツカゲラさんのほかに二人のフレンズが。

 

「おや?噂をすれば… かな?」


 そう言ったのはタイリクオオカミさん、漫画家らしい。フレンズは文字が満足に読めないのに漫画には需要があるのだろうか?と疑問に思うところではあるがとりあえず漫画家らしいので彼女は漫画家だ。


「今丁度推理してたのよ?あなたが何のフレンズか… この名探偵アミメキリンがね!」


 自称名探偵のアミメキリンさんだ、オオカミさんの漫画の大ファンらしくその影響を多大に受けて探偵を名乗っているらしい。

 

 但し推理はまるでなってないご様子。


「ヤギじゃないですからね?キリンさん」


「分かってるわよアリツカゲラさん!私は前のことで学んだのよ!いい?こちらの方、毛が白いわ!そしてすぐ近くにゆきやまちほー!さらには何やら風格のあるこの物腰!以上の事からあなたがなんのフレンズか私にはお見通しよ!あなた…!シロクマね!?」


「…」


 微妙に情報をまとめているので頭ごなしに否定しにくい、もっとも大外れなのだが彼女もまさか人間がポンと現れるとは思わないだろうし。


「あ、人です」


「うぇ!?」


「へぇ~?どーりで… 耳も尻尾も見当たらないと思ったよ」


 キリンさんの隣でキラリと光るオオカミさんの眼光、こちらは全てを見透かされている気がする。


「髪が白いから紛らわしかったかな?」


「いえ気にしないでください、キリンさんの推理は当たったことが無いので」


 さりげ辛辣な発言をしたアリツカゲラさん、そして「なんで違うの!?」って顔したキリンさん。

 でも俺としてはなにやら観察力がありそうなこちらのオオカミさんが気になった、伊達に漫画家は名乗っていないらしい。

 左右の目は色が違う… これはオッドアイというやつだ、それがまた彼女のミステリアスな魅力を引き出している。


「俺の話をしてたの?」


「そうだよ、ツチノコも大概珍しいフレンズだが、そんなツチノコと一緒に行動してる君は何者なのかな?ってね… アリツさんは既に知っていたようだけど」


 部屋を決めるとき個々にあった部屋を案内するということでアリツカゲラさんには俺のことを簡単に説明しておいたのだ、きっと話の種に俺のことを話したんだろう。


「ちなみにシロさんはフレンズではなく、正真正銘“ヒト”だそうです、あとオスです」


「へぇ… ということは」


「パークの外から来たってことね!」


「うん、訳あって図書館に帰る途中なんだ」


 やったねキリンさん?その推理は大当たりだ、さすが迷探偵。



… 



 シロがロッジのフレンズたちに事情を話し四人で話し込んでいたその頃、ツチノコは既にシロに頼んで彼の荷物を見せてもらうので部屋に一人残っていた。

 その考古学者並みの好奇心が彼女の目を輝かせ、ヒトの使う道具や気になるものを調べこんでいく。

 

 ツチノコがそうして道具に興味を持つように、タイリクオオカミは人間シロに興味を持ったようだ。

 と言っても、彼女の場合は恐らく漫画のネタにつかえないか?と色々と話をして反応を見たいだけなのかもしれない、オオカミの観察が始まる。

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