断章・d

 わたしは走った。

 銃口を向けられた浩和のもとへ。

 そして、

 わたしはSPのように立ちふさがる。

 もうどうにでもなれ。


 タン。

 銃声とともに胸に激痛が走る。

 そう、撃たれたのだ。

 子ども警察官史上、二人目として。

 体中の力が抜けていくのを感じた。

 こらえることが出来ず、背中側に倒れ込む。

 浩和の腕が、わたしを受け止めた。


 全てが終わるまであと少し。

 それまで持ちこたえて。

 ──浩和。


 わたしは意識を手放した。


***


 銃声を聞き、藤枝と森岡は走り出した。走りながら腰を探り、拳銃を手に取る。

「撃たれたとしたら香奈ちゃんの方ね」

「ああ。あれは持ち出されていたし、動く盾となって鈴木を守るだろう」

 小声で会話を交わしながら、慎重に進んでいく。


  * * *


『銃声を確認、西村隊動きます』

『了解、突入は任せ──』

『勝手に動くな!』

『野並管理官、これは緊急事態です。なら至急命令を──』

『だから、どうするかを今、考えてもらっているんだ!』

『取り決めでは、銃声が聞こえたらSATは動くと──』

『そんなの、そっちで決めたことだろう! 繰り返す、田崎管理官の命令には従わず、次の指示を待て! 今、上が対応策を検討している!』

『──こっちは昔、上の命令で若い子一人殺されてるんだよ!』

 無線が、切れる音。

『おい、上野部隊長!』


  * * *


 九月十六日、十一時五十三分。

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