葉脈

 決して退屈していたわけではない。ただ目に入っただけだ。気づきは唐突に訪れた、信じられなくて右手を裏返す、戻す、逃げ場はない。

 手のひらには、甲には、線が走っている。どちらもそうだ。血管と掌紋と違いがあれどささいなことだ。太い線から枝分かれして、目を凝らせば細かい線が応える。これはあまりにも葉に似すぎている。

 そうだとしても少しばかり厚すぎるのではないか、いや、植物をよく見てくれ。さぼてんの体積を、道に生えているプニプニした多肉植物を思い出せ、決してこの手と遠い存在ではない、にしても緑色が足りない、本当にそうだろうか、この甲を走る静脈がまさに広がろうとする緑色でなければなんだろう。この頭痛が、目眩が、失われゆく意識の最後の足掻きでなければ一体何なのか。すがるべき柱を探して見渡せばそこは一面の林で、その木の間隔が、身丈が、人混みの人びとのそれと一致していることが完全にわかる。もたれれば宿り木になる、一人で立つならそれも良いだろう、君は好きな方を選べる。気づいてしまったならもう木擦れは招き寄せる声でしかなく、息を継げばもう次はない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お題 とりい @kinakobooster

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る