第9話

【残り165日】


うぐ、、く、苦しい…

身体が動かない…

金縛りか


「ぐるぐるぐるぐる」

しかも、変な音まで聞こえる


幽霊か、なんかの化け物…

…いや、違う


「重えええ!なんだよ!」


毛布ひっぺがしたら、腹でけんたが喉ならして眠ってる。

寒くて小さく震えたけど起きそうもない。


「けんた、」

「うにゃ……」

「うるあッ!起きろお!」

「ふにゃッ!」


俺が勢いよく起き上がって布団から放るように投げ出すと、床に転がったけんたはビックリしたような声をあげ、それから目をこすりながら言った。


「いっしにいちゃおはよ」



…………

記憶、戻ってる…


「にいちゃ!おれ、早く起きたにゃ!」

「……おせえよ。今俺の腹の上でぐうぐう寝てたの誰だ」

「うにゃにゃ、ちがうにゃッ」


足元にまとわりついてくるけんたをそのままに俺は部屋をでてリビングに向かった。

「何が違う…だ、」

…したら、すげーいい匂いがする。

みそ汁、焼いたソーセージの匂い。


いつもは昼まで寝てる松田が珍しく起きて、うまそうに飯を頬張ってる。

「うまいよ~ッ一新!」

「何食ってんだよ松田」

「いや心配でさあ、なんだかんだ。良かったな、けんたにゃん元に戻って」

「良かったんだか。おれあ教えてねえぞ。こんな凝った朝飯…」

「あの人が言ってた後遺症ってこういう事かもよ?あの人が教えた家事を記憶したままって事。なんだよ一新、らっきーじゃん☆」


朝っぱらからうぜえくらいテンション高い松田にうんざりしながら、俺も席についてじっとその朝めしを眺めた。

冷蔵庫にある、松田がラーメンに入れる為だけに買った食材でよくもまあ、こんなまともな飯が作れたもんだ。




「…余計なとこまで、残ってたりしてな」



「…?何?」

松田が口にいっぱい頬張ったまま聞いてくる。


「何でもねえよ、ど変態。」




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