第7話

とにかく栄養高そうなゼリー飲料を流し込む。


したら、だんだん頬がピンクになって、体温も上昇しはじめた!

なんとかなりそうか?

だけどさっき目を開けたきり全然目を開けようとしない。

じっとその様子を眺めていたら、松田がぽんと俺の背をたたいた。


「まあ、そう落ち込むなって」

「…落ち込んでねえ」

「体温も戻ってるし、明日の朝にゃケロッとしてるさ」

「………。」






【残り167日】


「にゃッにゃにゃッ」

「…るせえな、何………!」

「………だ、誰にゃッ」


けんたが起きてる。それなのに、感動すらできないぐらい部屋の隅っこで、フーって…尻尾膨らませて…なんだ?

どうしたってんだ?

でも機能は回復したみたいだな。


「…オラ、こっち来い。熱測るぞ触らせろ」

「フーッ」

「?誰に怒ってんだ、ゴラ」

「おれ、お前知らないッキライッ」

「ああッ?」

けんたは俺のイラついた怒気交じりの声にいちいちびくびく毛を逆立てながら、

部屋の窓の方向いて叫んだ。

「にいちゃああッ」

「なんだよどこ向いて呼んでやがる。ここだっつうの」

「にいちゃじゃないッおれおまえ知らないにゃ」

「はあ?」


その騒動を聞いた松田が部屋までやってきた。


「どうした?一新」

「フーッ!!」

突然現れた松田にも大きく威嚇したけんたは、もう充分隅っこにいるってのに更に身を固めるようにして全身毛を逆立てている。

「あ~けんたにゃん!目が覚めたんだね!相変わらず可愛いな~」


松田がまためちゃくちゃキモい事言ってるって思ってたら、けんたの奴がまるで助け求めるみたいに言いやがった。

「うにゃにゃああッタクマにいちゃあ!」


「!」

「たくま?なんだそれ。な、一新どういう意味?」

「俺が知るか!」

「なんだろ。熱でエラーでも出たのかな」

「ま、いいや。起きたし炊事洗濯なんでもやらせようぜ。今度は水に濡らしたままにしねえ様にすりゃいいんだろ。」

「おい一新!」



エラー?

そんな感じじゃねえだろ。


タクマなんて…かすりもしねえ名前、あんなはっきり言うかよエラーで



それに………


あーッもう面倒くせえな。止めだヤメ!

今日はゆうこ先輩と会う約束だしなっ

びびってすみっこから出てこなかったけんたをそのままに、俺はすぐに身支度して家を出た。


ゆうこ先輩は相変わらず美人だし、

…まあ、一緒に行ったカフェでも愛しい(はずの)俺と一緒にいんのに、すげー速さでメール打ってて相変わらず売れっ子キャバ嬢みてーな対応だったけど、

一緒にいて楽しいし、逆にライトなときめきっていうの?

めんどくさいこと言わないし。

うん、さいこー。


そんなさいこーな休日をすごして、すっかり夜になってから、俺は家に辿りついた。

「たでーまあ」

「おいっおい一新!」

「ん、なんだめちゃくちゃいい匂いじゃねえか」

「けんたにゃんだよ、けんたにゃん!なんだよお前、邪険に扱ってた振りして意外と教え込んでたんだな家事」

「あ?」



リビングに入ると食卓にハンバーグとサラダ、みそ汁、小鉢にきんぴらまで

それがきちんと並んでいる。

これ、けんたが作ったつうのか…?

俺、カレーとラーメンしか教えてねえ…しかもどっちもどレトルトだぞ…

こんなの…



「ッ!カネ」

けんたは、俺を見るなりあろう事か松田の後ろに隠れやがった。

この野郎。

「いやあ…お前のいない間になついちゃって!困った困った!」

「っけ!どうせ何かうまい餌でも見せびらかしたんだろ」


「おまえきらいにゃ!」

「ああ?」

「カネ、タクマにいちゃの友達にゃ、タクマにいちゃのこと一緒にさがしてくれるのにゃ!カネ、いじめる奴きらいにゃ!」

「………」



なんだってんだよ急に今更よ、

俺が座ろうと思って手をかけてた椅子を乱暴に離すと、その大きな音にけんたがビクついた。


「あ~ッそ、そら良かったな」

「一新兄ちゃんも一緒にさがすよー!なッ一新!」

「いやだね」

「今だけの誤動作だって一新。今は口合わせておけって。ばかだな」

「うるせえ勝手にやってろよ」

「何いじけてんだよ」

「いじけてねえよ!バカ」


なんなんだよ。

あんなに必死になった俺バカみてえ…

俺はイラついたまま部屋に入った。




「あ~あ、一新怒っちゃった」

「…ねえ、かね。タクマにいちゃにいつ会える?」

「う~ん、いつかなぁ?」

「0905590****」

「ん?何?」

「電話してもらいなさいって、タクマにいちゃいつも言ってたにゃ」


「………オイオイ、なんかおもしれえ展開じゃないの?」


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