第5話
【残り171日】
妙ななりゆきで謎のネコがうちに来て一週間とちょっとが経った。
年末年始関係なくバイトに明け暮れた俺も、元旦の今日ばかりは、ぼろアパートに帰る足取りも軽やかだ。
クリスマスからこっち何かとついてなかったもんなあ。
今日ぐらいは褒美をもらってもいいだろ。
建てつけの悪い扉をあけると、ボロ階段上がる足音でも聞こえてたのか、
ネコは玄関ですでに俺を待っていた。
「にいちゃ!おかえりにゃ」
クソネコはドジだけど、教えてやると何とか少しずつ家事を覚えた。
けど、今日は何やってた?全身ずぶ濡れだし泡だらけなんだけど…
「おせんたく失敗した」
「なにやってんだよ」
「うにゃにゃ…」
「とにかくいいや。お前こん中に入れ」
泡と水含んだ洋服はめちゃくちゃ重い、けど俺はねこをかかえると押入れにそのまま押し込んだ。
「にゃにゃ?」
「俺がいいって言うまで絶対出てくんじゃねえぞ」
やー…やっぱ神様っているんだな
クリスマスイヴの夜に寒空の下、平手打ちくらって、
こうして恵まれぬネコ型アンドロイドの面倒なんかを見てると、
大学一美人のゆうこ先輩が元旦に我が家に遊びに来るとかゆう奇跡がおきるんだからなー!
なーッ!!
…てヤバいテンションの俺が、浮き上がった心そのまま勢いよく押し入れの扉閉めようとしたら、ネコが派手なくしゃみをした。
「物音たてたらぶっ壊すからな」
「にゃにゃ!わかたにゃ、オレ静かにしてる」
「じゃあな」
つって、ばーんと押し入れを閉めると中でネコが驚いたような声を上げたけど、それきり言いつけを守ってか静かになった。
それから間をあけずにすぐゆうこ先輩は俺の部屋を訪ねて来て、簡素だけどくそねこの掃除ですっかり片付いた部屋に驚いた。
まあ、大学での俺を見てたらそりゃ驚くよね。
ロッカーん中グシャアァ…なのに、部屋がコレだぜ。
ああ、この日の為にお預け食らってたんだな俺は。
ごちそうさまです。
「ねえ一新、これって付き合うって事でいいんだよね?」
美味しく頂いてしまったあとで、ゆうこせんぱい……いや、ゆうが髪の毛を束ね直しながら尋ねてくる。
「ああ。じゃね?」ってかるく答えると、不満そうにゆうが頬を膨らませた。
しばらくイチャついてたけど、携帯が突然鳴ってゆうは急いで帰り支度を始める。
え…帰んの…?
え?
「じゃあね、一新。また遊ぼうね~」
って携帯耳に押し当てながら部屋を出てった。
ゆうこ先輩…カレシ100人いる伝説ほんとだったのか…
俺はそのままベッドにぱたりと倒れ、ただ呆然と
【残り170日】
んあ…俺、あのまま眠ったのか…
ふああ、
なんか…忘れてるような……
あ!くそねこ!
急いで押し入れの扉を開けたけど、その薄闇の中でうずくまったまま、ネコはぐったりして動かない。
「…おい、……くそねこ」
怖々漏れ出た俺の声に、ネコはそっと目をあけて俺を見た。
あ、
よか…った…
て、なに安心してんだ俺
「いっし、にいちゃ……」
「オラいつまで寝てんだ朝飯は」
「…………、ん」
その場で身体を起こそうとしたネコはよろけて、そのまま押入れから大きな音をたてて転げ落ちた。
「なにやってんだよお前…」
起こそうとネコに触れて、俺はハッとした。身体が異常に熱い。
「……これ、熱?」
「…くるし…にゃ」
昨日水浸しのまま放ってたからか?
ご丁寧に風邪ひくとか…
んな機能誰が付けやがったんだよ!これこそ何の利点あんだ…
あー…ちくしょう…
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