第4話


「にいちゃ、いっしにいちゃ」


ん、朝…か…

ベッド狭…ぬく…


「んんん、痛いにゃ」


いたい…痛いって、

これ、サチ…じゃなくてみゆき…だっけ、あれ、違う…


「うわ!!いつの間に、俺!」


腕の中に抱き込んでたのを急いでひっぺがして飛び起きたら、昨日のあのが、大きく息をついてから身体をふるふる震わして伸びをした。

何か妙に気持ちいいと思ったら、いつのまにかこのクソ猫を抱き枕にしてたようだ。

ぬくくてな、ホントに本物の猫なんじゃねえかこいつ。


しばらくそのまま呆然としてたら、そんな俺はおかまいなしに、ねこはすでに毛布にくるまって丸くなってる。

「にゃむにゃむ」

「…こるあっ!!!クソ猫!」


いきおいよく毛布をはぎ取った。

ねこはふぎゃッつって毛え逆立てながら、そのまま床にゴロンゴロン転がってく。


「起きろッ置いてやってんだ飯くらいつくれ!」

「…つくれにゃい」

「…、じゃあお前何できんの」


イラついた俺の言葉に、きょとんとしたねこは首をかしげて懸命に考えてる。

それすら今の俺には腹立たしい。大きく舌打ちすると、ねこはびくりと身体をゆらした。


「あ~あ、面倒なもん押し付けやがってあんのクソ野郎。」


腹も減ってるけど、なんにもする気にならなくて寝転んでたら、クソ猫が覗きこんでくる。

うっとうしいな。遊べとか言ったらぶっ壊すぞまじで…


「いっしにいちゃ…元気ない」

「ああ、お前のせいでな」

「……」

クソ猫は2.3度首を捻ってから俺の額を撫でた。


「何のつもりだオラ」

「俺、なんでもできるにゃ。にいちゃが教えてくれたこと何でもするにゃ」


そうか…たしか成長する人工知能って…



「てことは…掃除洗濯覚えさせりゃいいんだな」


俺が急に立ちあがったせいでねこは尻尾倍ぐらいに膨らませてびびってた。

どんな仕組みかしらねえけど、だれがこんな細部まで感情豊かに設定したんだ?

意味あるか?

そもそもセクサロイドじゃねえんだし、

子供型のアンドロイドに家事おぼえさせるなんて…ピンポイントどころか需要があるかどうかも危ういだろ

ターゲット孫のいねえお年寄りとかか…?


着信が鳴って携帯を取ると、

松田か…名前見ただけでイラッとすんな。くっそ…


「なんだよ」

『いやーけんたにゃんどうしてるかと思ってさ。』

「テメ。早く止める方法見つけねえとまじ実力でぶっ壊すからな」

『オイオイ、やめろってば、その事について連絡したんだよ』

「あ?」

『期限があってさ一度ログインしたアンドロイドは180日後自然停止するって』

「180日だあ?んなの面倒見切れるかってテメエが引き取れ!」

『それが俺~もう新しいアンドロイド予約しちゃってさあ~!』

「なにっ?」

『俺のは、正真正銘のセクサロイドだぜッ☆』


うぜええ…


「…るっせえ!くそ変態!留年しろ!!」

そう言い放つと俺は携帯を切って壁に投げつけた。


…てことは、

180…いや、179日こいつと…


「……うにゃにゃ……?」

ねこはじっと俺を見ながら首をかしげると、小さく耳をパタパタと動かした。


食費……リアルにヤベーかも…

俺、家賃も滞納してんのに…

先がおもいやられるな。


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