第3話

「いっしにいちゃ」


そう、俺の名を呼んできらきら目を輝かせて近づいてくる。

いや、可愛いよ?

だけど、よく考えろ。


これ現実か?


「な、な、けんたにゃんっ!俺がお前の兄ちゃんのまつだ、かねよしだよ?

わかるだろ?ちゃああんと大金を支払ってだね…」


松田に、そうとつとつと語られてる“けんた”はおびえるように松田の目前から逃げて俺の後ろにぎゅっと隠れた。


「俺こわくないよおッなんで一新に懐いてんのよ」

「刷り込みっつうやつかもな」

「え?」

「ひよことか…、あんだろほらありきたりなさ」


♪ちろりーん♪

『それから☆けんたにゃんは、設定年齢が10歳以下となっておりますので規定によりセクサロイド加工では有りません。よろしく御容赦くださいますよう♪でわでわ~素敵なニャンドロイドライフをお楽しみください☆』



……………。



「じゃっ!いっしんお兄ちゃん。ちゃんとけんたの面倒見てニャンドロイドライフを楽しんでね☆」

「おるあっ早く止めろこんなの」


「にいちゃ、とめるってなあに?」

ガキの瞳からキラキラキラーって光が…さ、錯覚か…


「ぐっ!…汚えぞ松田!」

「着るもんだって今日の為に買っといたんだし。もって帰って着せ変えたりしたら楽しいよ多分!いいじゃんったまにゃ俺も協力するから、な」


て言いながら、

さっそくアンドロイドを注文した会社のサイトで別タイプのアンドロイドを選び始めた松田の頭に一撃くらわしてやった。

「っていいながら猫耳のセクサロイド探してんじゃねえよクソニート」

「いでッニートじゃないでしょ。ちゃんと出てるよ大学」



さんざん悪態ついて、結局ねこをうちのボロアパートに連れ帰った。

あーあ…うち壁すげー薄いんだけど

うるさくしたらマジで強制的に松田の家に放りこも…


「オラ、来い」

「いっしにいちゃんのいえっ!」

「ああ。静かにしろよ」

「せまいっ」

「しかたねえだろ一人暮らしの苦学生だぞおれは。松田と一緒にすんな」

「おれ、狭いのすき」


あ、そっか猫だからか。

「って、コラでてこい」

ねこは、いつのまにかベッドと床の隙間にインしていた。

そこ俺も何があるかわかんねえくらい、読み終わった雑誌とか飲みかけのペットボトルとか、ごちゃごちゃしてんのに、

ねこは、ゴロゴロのど鳴らしてリラックスしてる。

信じられん…

いや、俺の部屋の汚さも信じられん

「クソガキ!出て来いってんだよっ」

「…いっしにいちゃ怒った?」

「怒ってんよ。んなとこ入んな、早く出て来い」


つか、さむ……おれ、何を普通に対応してんだ。ようはインプットされてるだけでただの人形だろ。

一日も早くこいつ止めねえとな……


「いっしにいちゃ、怒った?ねえ怒ったんにゃ」

「もういいっつってんだろ」

うぜええ…て思ってたら、ねこの腹からぐううう…と音がなった。

「うにゃっ!」


へえ、ロボットでも腹は空くんだな…

「お前、飯とか食うのか?もしかして」

「食う!」


ん?

そういやパッケージにたしか

料理や掃除も覚えるってかいてあったよな!


「お前って料理作れんだっけ?」

「う?りょうりて、なぁに?」

………こりゃ、あんまり期待しない方がよさそうだ。




仕方なく、お湯いれ3分のインスタントラーメンで空腹を満たすことにした。

あーあ…俺の貴重な非常食が

後で松田に食費請求してやろ


「ちゃんとフーってして食え」

「あちっっ!にゃー」

「ばかか…ほらティッシュ」



今日俺の誕生日だっけ。

なんか……んなの忘れてた。

クリスマスも

結局欠片もかんじらんねえ変な展開になっちまったな


俺がベッドにもぐったら

暗闇でねこが俺をじーっとみてんのがわかる

いや、怖い怖い…

俺はねこに背を向けて無理矢理寝ようと目を瞑った。


「さむいにゃ」

「だからソリャお前の勘違いだから大丈夫だ」


こんなクソガキと添い寝なんかできるか…


「くしゅっ」

「記号の羅列でそう感じるだけなんだからよ」

「身体ぶるぶるぶるぶるてにゃ、」

「…はいはい、おやすみー」

「………っくしゅ」


……

ちっ…しょうがねえな

「…来い」


なんだこりゃ…ホントなら今頃サチと


俺はねこに背を向けた


「………」


だけど

暖かいんだな

機械のくせに


ひさしぶりだ

こんな

……


………


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