1章_2
「大広間の床で
どうします? とモアネットが
それに対してモアネットが
「これだけの城だ、客室があるだろう」
「知らないんですかパーシヴァルさん、客室はお客様をお通しする部屋なんですよ」
彼なりに押し掛けた自覚はあるのだろう、ゆえにこれ以上反論する術がないのだ。
「
「アレクシス王子はお
「ベッドが崩壊して、鳥が窓をぶち破って入ってきて、上の階でタップダンス大会夜の部が開かれて、隣室が深夜にパーティーを開いてサプライズのピエロが間違えて部屋に入ってきたことがあるんですか?」
「……改めて聞いてくれるな、思い出す」
どうやら今あげた事例はほんの一部らしく、ここ一年まともに
その声色には
「仕方ないですねぇ。
「
「何か不満でも? 外の小屋で寝て頂いても構いませんよ」
「い、いや何でもない。優しくて親切で
分が悪いと察したのか大人しく感謝の言葉を口にするパーシヴァルに──それにしては一つ聞き捨てならない単語があったような気もするが──モアネットも気分が良くなり、先導するようにカシャンカシャンと歩き出した。
彼等の弱り具合に思わず気分が良くなり、
広く
当然だが、ベッドが崩壊することもなければ上の階でタップダンス大会夜の部が開かれることもない。隣室が深夜にパーティーを開いてサプライズのピエロが間違えて部屋に入ってくることだってない。鳥に関してのみ、森の中なので入ってくる可能性はあるが。
「アレクシス様はこの部屋を使ってください。パーシヴァルさんは
「いや、俺もこの部屋で構わない」
「………あっ」
「どうした?」
「いや、あの、分かりました。お、お気になさらず。大丈夫ですよ、私そういうことに
「嫌な
ふざけるなと咎められ、モアネットが再び兜の中で舌を出す。
そんな二人のやりとりに対し、アレクシスは疲労を
「王子、布団と
「うん、ダニも居ないみたい」
「ちゃんと干してますよ。失礼ですねぇ」
「王子、ベッドの下は俺が確認します」
「いや大丈夫。今回はカマを持った男も
「だからそんな心配……今回は!? 前に潜まれたんですか!?」
なにそれ
アレクシスの不評があがり彼の立ち位置が
もちろん、アレクシスの不運は宿に泊まろうとお構いなしだ。時には隣室に
そのトラウマから、眠る前には常にベッドの下まで確認するようになったのだという。
不運の呪いといえど、これはあんまりではないか。さすがに同情が
だからこそ深く溜息をつき、
出来上がった
「なんて
「可愛いにゃんこ!」
「ご覧くださいアレクシス王子、この生物、顔の半分が
「ウインクする可愛いにゃんこ! それは呪い
「「呪い除け?」」
声を揃えてオウム返しされ、モアネットが答えてやる気にならないと
ちなみにこのウインクする可愛い猫の呪符は、間違いなく呪い除けである。
もっとも呪い除けといえど万年効くわけではなく、効果はせいぜい半日。それもモアネットが寝たり
そのうえ呪いの犯人と真相が分からないのだから、降りかかる不運を
「それでも、今夜一晩くらいの
そうモアネットがそっぽを向きつつ教えてやれば、パーシヴァルが感心と
柔らかな布団が彼を受け止め一度ベッドが
あっと言う間に眠りについてしまうあたり、相当疲労が
「そういうわけですから、パーシヴァルさんも隣の部屋で寝たらどうですか?」
「いや、俺はここに残る」
きっぱりと断るパーシヴァルに、モアネットが
それから二時間後、自室で調べものをしていたモアネットは部屋着の上に
暗い部屋の中、彼の金の
「お楽しみのところ申し訳ありません」
「………ん? どうした?」
「え、いや……さっきのより強い
「………そうか。うん。なら
間延びした返答と共にパーシヴァルが扉を開ける。そこには
なんだか調子が
明かりを落とした暗い室内にアレクシスの寝息が聞こえる。
「この呪符なら、明日の昼までアレクシス様が寝てても……パーシヴァルさん?」
聞いてます? とモアネットが問えば、ソファーに身を預けていたパーシヴァルが十数秒
その返答の
だが次の
人の話も聞かずにこの態度、失礼どころではないとモアネットが
モアネットの体が……もとい鎧が彼の
「パーシヴァルさん!?」
「モアネット
「な、なにをするんですか!」
「モアネット嬢、
「……はぁ?」
「わざわざ調べてくれたんだな、モアネット嬢は
「あ、あの、パーシヴァルさん?」
グリグリと大きな手で兜を
なにせ今のパーシヴァルは日中とは
これで
だが抱きしめられているといっても鉄の鎧は厚く、体温一つ通さずにいる。胸の高鳴りとかは
「モアネット嬢、ありがとうな。貴女は優しい
「パーシヴァルさん、正気に
「呪符も作り直してくれたんだな。本当に可愛くて愛らしいにゃんこだ、貴女は絵が
「どうしたんですかパーシヴァルさん、頭でも打ったんですか!?」
モアネットが悲鳴をあげるも、パーシヴァルは
それから十五分後。
「……たまに、あぁなるんだ」
ソファーに
そんな彼の目の前に立ち、モアネットが「たまにって?」と
「……
「
「いや、でも王子を」
「今、すぐに、寝ろ」
モアネットが一刀両断すれば、パーシヴァルが「護衛が……」と
きっと
もっとも、モアネットはそんな彼に対してフォローしてやる気にもならず、隣室で物音が聞こえてくるのを
……散々撫で
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