第3話

窓から差してくる太陽の光と、鳥のちゅんちゅんというさえずりにうっすらと目を開ける。

目を開けるとそこは知らない天井だった。


「…あ、そうか…俺…」


セントラル学院に入ったんだ…。

俺は眠い目を擦りながらまだ片付けが済んでない部屋を見回す。

そして頬を数回叩き完全に目を覚ます。


「よし!今日から頑張るぞー!」



「おはよー!一夜、八代っ」


「おはよう」


「お、おはよー…!」


食堂に行くと一夜と八代はもう来ており朝食を机に並べていた。


「もしかして待ってた?」


「そんなことはない。俺達も今来たところだ」


一夜の言葉に八代もうんうん、と笑顔で頷く。俺はそれに感謝しながら朝食を取りに行き、席に座る。


「そういえば今日から授業だったか」


「2時間だけね。最初は校内案内…じゃなかったっけ?」


「僕…校内案内楽しみだな…」


「俺もだ。この学院の図書室は凄いと聞いたことがある」


「俺も俺も!班行動だったら一緒に回ろーか!」


一夜は1つ頷き、八代も笑顔で頷く。

俺はそれに満足し、ミニトマトを口に入れる。

__その場がざわつき始めたのはそんな時だった。


「…?」


そのざわつきが気になり口に入れたミニトマトをプチッと噛みながらそっちに目を向ける…と、そこには警備隊がいた。

警備隊はこの五つ星の秩序を守り犯罪を撲滅する…というキャッチコピーでその名を轟かせている職業だ。

憧れるけど俺には向いてないかな。推理とかできないし。

なんて、そんなことをのんびり考えながら警備隊を見る。その足は揃ってこちらを向いていた。

…待って。なんか近づいてきてない?目線めっちゃ俺に向いてない!?


「ノーザンアースの奏だな」


「え、えーと…はい…。俺になにか…?」


俺はミニトマトを喉につまらせかけながら飲み込み、顔を引き攣らせながらそう言う。


「お前に殺人事件の容疑がかかっている。一緒に来てもらおうか」


目の前にバッと令状が出される。

俺はそれにカチャン…とフォークを落とす。


「さ、さ…殺人事件…!?」



「だから!ほんとに身に覚えが…っていうか誰が殺されたんですか!?」


「うるさい喚くな」


俺は手を拘束され警備隊の車の奥の奥に連れてこられる。

俺は拘束された手越しに警備隊の人を睨む。


「そんくらい教えてくれても…」


「…しょうがない。同じノーザンアース出身者、と言えばわかるな」


「同じ…ノーザンアース…」


俺はいきなり出されたその名前に困惑し、必死に記憶を探る。

そして1回冷静になってその頭をフル回転させる。

ノーザンアースは…俺達2人しか…。


俺は震える声でその名を口にする。


「…あさ、か…?」


「そうだ。ノーザンアースの朝霞だ」


「え…待ってよ…嘘でしょ…?」


俺はいきなり突きつけられた事実に膝をつく。警備隊はそのいきなりのことに銃を構える。


「朝霞が…死んだ…?」


「そうだ。そして今、お前が犯人の可能性が出てきた」


「…俺…俺は朝霞の幼馴染で…昔から一緒にいた大の親友で…」


「何を言っている。早く立て!」


警備隊がそう声を荒らげる。

俺はそれも耳に入らず唇をきゅっと結ぶ。


俺は朝霞を殺すことなんてできない。例えそう命令されても、憎んでいても。

朝霞は唯一無二の幼馴染だから。殺したくても殺せない。まず、殺したいとか思ったことない。


俺はゆっくりと立ち上がり、まだ開いている車の扉を見る。車の中に警備隊は1人…外にもう2人くらいいると考えると…うん。俺は背も小さい方だしいける。この手もどうにかしたいけど…しょうがない。


「…さな…」


「なんだ。はっきり言え」


「俺は朝霞を殺したりなんかしない!できない!」


俺はそう叫ぶ。警備隊が一瞬同様した瞬間を狙いその場から駆け出す。

外に出るとそこには5人の警備隊がいる。


「えっ!」


「逃走などさせないぞ!」


「捕らえろ!」


「うそ…」


思ってたより数が多い…!

背中にカチャッ…と銃を当てられる。さっきの奴が後を追ってきた…?


「__逮捕だ」


後ろにいる警備隊が冷たくそう言い放つ。

俺はその言葉に目を見開く。


「容疑者が逃走した場合、逮捕が義務付けられている」


1人の警備隊が俺のつけている拘束具と違う拘束具を持ってくる。

そしてカチャカチャと俺の拘束具を外し、新しい拘束具をつけようとしたその瞬間だった。


__ピカッ


辺りに閃光が走りその光で何も見えなくなる。


「わっ」


それと同時に俺の手は誰かに引っ張られその誰かに引きずられながらその場から逃れる。


「くっ…!」


俺はその誰かにビックリしながら、その場を去った。



「ま、まだ目がチカチカする…」


「ふむ。少し光が強すぎたか。改善しよう」


「か、奏…大丈夫?」


一夜がそう言って分厚い本を閉じる。

対して、八代が心配そんな目で俺を見る。


「__って!そうじゃなくて!なんで2人が!?」


話を聞くとどうやらさっきの光は俺を逃がすための作戦だったようで、俺の手を引いたのは八代らしい。


「えっと…僕達、奏が幼馴染を手にかけるような人に…見えなくて…」


「リンゴをくれたし」


「それが理由!?…って、2人のことがバレたら俺も、2人も捕まっちゃうかもしれないんだよ…!?」


「ならばお前は朝霞を殺したのか?」


「っ!もちろん殺してない!」


「なら…大丈夫、だよね」


八代がそう言って笑顔になる。

対照的に俺は目の奥が熱くなるのがわかる。


「ふ、2人とも…ありがとうっ…!」


「さて。しかしこのままだとお前は犯人のままだ」


一夜の言葉に八代の顔が険しくなる。

俺も目の奥の熱さを我慢し頷く。


「俺が朝霞を殺したヤツを見つける。でもたぶん、1人じゃ無理だ…」


俺は立ち上がりながらそう言い、2人を見る。


「手伝って、ほしい」


「よし。その言葉を待っていた!」


「僕も…手伝う…」


2人がそう言って俺と同じように立ち上がる。

俺はその言葉に1つ深呼吸をして寮を見上げた。

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