計測

何日かかけて基本魔法理論の本を読み漁った。

幸いというか何というか……課せられていることさえしていれば、その他の時間をどう使おうが気にする者は誰もいない。


そうしてせっせと書庫に通い、得た知識を整理し、独自の訓練方法を作り上げた。


そして、魔法訓練の実践初日。


「………よし」


井戸より組んできた水を前に、息を整えて精神統一をする。


私がこれから行うのは、自分の魔力量の測定。

前回の生では魔法師になるなりたいなど思ってもみなかったし、ましてや魔法を扱う訓練なんて全く興味がなかった。

そのため、そもそもで自分がどれだけの魔力を持っているのかすら知らない。


ということで、目の前に置かれているのが魔力量の測定に必要な桶。

この桶の中にあるただの水をどれだけの量魔力精製水に変えることができるかで、どれほどの魔力量を保有しているのか知ることができる。

魔力精製水とは薄ピンク色をしていて、魔法薬の素地になるもの。

要は、ただの水をどれだけピンク色に染めることができるか、そのできた量がそのまま魔力量と見做されるということだ。

因みに魔力精製水は、油のように水と決して交わらないため、大量の水に対して精製をした場合、魔力精製水になりきらなかった部分と魔力精製水となった分はくっきり別れる。


とりあえず自分の魔力量が全く見当つかないので、平均に合わせて桶を準備した。

魔力が少ない物は、コップ一杯ぐらいの魔力精製水を作るのがやっとらしい。


「魔力量を量るときは、不調を感じたらすぐに止めろ、か……」


最後にもう一度本を読みつつ注意点を確認する。

魔力量を量る行為とは、自身の限界まで魔力を使うということ。

魔力残量が危険水域に達すると目眩や吐き気を引き起こし、魔力量がゼロになると最悪死に至る。

そのため本来は魔力を量る時にも、きちんと監督する人間のもとで行うことが望ましいらしいが……まあ、それは望むべくでもないので、しっかりと本を読み込みながらやるしかない。


平均ぐらいはあって欲しいという願望を込め、桶一つを用意していた。


「……ふー……」


もう一度桶の前で息を整えると、桶に魔力を注ぎ始める。


……けれども。


「……え?」


意気込んでいた割に、呆気ないほどすぐに桶の中の水は薄ピンク色に染まった。


全く、魔力を使った感覚はない。

こんなに簡単に魔力精製水ができるのか……自分の目を疑ったほどだ。


身体に変調はない。

とりあえず、もう一杯桶を準備して魔力を注ぐ。

そして先ほどと同じく、魔力精製水はすぐにできた。

それを繰り返すこと、計十回。……身体の変調は見られなかった。



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