魔法

魔法……それは、自分の中にある“魔力”を用いて、超常の事象を起こすこと。


魔法が発動するために必要な作業は二つ。


一つは、体内で生成され溜まっている魔力を汲み出すこと。

そしてもう一つは、頭の中でその力の方向性を定めること……より具体的に言うならば、その魔力によってどのような事象を、どれだけの規模で、どこで起こすかということをイメージすることだ。

そのイメージが鮮明であればあるほど、発動する魔法はより強固なものとなる。


……とはいえ、いきなり具体的なイメージを思い浮かべろと言われても、一部の想像力豊かな人以外には難しいことだ。

その解決方法として、“魔法名”と“呪文”が存在する。


魔法名は、その事象を引き起こす魔法の名。

そして呪文は、魔力という力の方向性を定めるキィ・ワード。

どちらも人のイメージを共通化することで、よりイメージし易く、また集中力を高めるため、大半の人は魔法を使う際に呪文を唱え魔法名を告げることで魔法を発動させる。


ちなみに先ほど私が何の呪文も唱えずに魔法を使ったのは、それだけその魔法が単純なそれだったからだ。


一般的には、難しい事象を起こそうとすればするほど、キィ・ワード……つまり呪文に頼る傾向があり、またそれ自体が長くなる。


「……魔法師、か」


善は急げと言わんばかりに、私は家の中に戻り書庫に向かう。

お父様専用のそこに、私は立ち入る権限など本来はないのだが……お父様は視察か、もしくはその名を借りてあの母娘のところにいるのだから書庫内で鉢会う可能性はないだろう。

使用人たちも基本お父様側に立っているため、私とお母様には興味が薄い。


難なく書庫に入ると、私は魔法関連の本が置かれている棚を見上げる。


優れた魔法師になるには、訓練が必要だ。

とはいえ、お父様が講師をお呼びくださる筈がない。


だから今の私にできることは、この書庫の中にある本である程度独学で学び……後々、その腕で高名な魔法師に自分を売り込み、弟子入りを認めてもらう事だろう。


というわけで、私は魔法関連の書物を端から順々に手に取っていった。


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