第3話:やっかみ

友人の旦那、嫁の写真を見た時、大概の人の反応は2パターンである。「優しそうだね」か「カッコいいね(可愛いね)」。もしも子供を見た場合は、こう変化する。「可愛いね」か「母親似(父親似)だね」だ。


人間は、実は人の見た目についてさほど興味がない。だがそうなると人は一体何に執着しているのか?


「ねえ涼花。私、明日子供産みます。っていったらどう思う?」

「なにその、『アムロ、行きます。』みたいな宣言。」

「応援してくれる?」

「お腹も大きくないのに明日産まれるわけ?」

「そう。ここぞォ!って時に、ボコォ!って卵を産み落とすの」

「……もしかしてだけど、韻踏んでないよね?」


涼花は他人の子供ウォッチャーと化したSNSを開きながら、空腹の胃袋の中に冷めたコーヒーを流し込んだ。子供だか卵だか知らないけど、まずはお相手を探すべきじゃ? と至極当前のことを言おうか悩んでいると


「シーラカンスはさ、魚なのに肺があるんだよ。人間だってもしかしたら突然変異で卵産むかもしれないじゃん。」

と、百子は今にも親指を立てそうな勢いで、右側の口角をキュッと上げている。別に卵については引っかかっていないし、正直どうでもよかったが、涼花は少し目を閉じて思いを巡らせてみた。


「じゃ、その卵産んだら、一緒に育てる?」


そう。30代の女性は『結婚と出産』に執着するのだ。だからこそ、友人の旦那子供に興味を持つ。強靭なプライドを背負いながら。


「人類史上初、卵を産んだ女と、たまごを育てあげた女として歴史に刻まれるね。」

「はあ。たまごっこって……。」

「うん。たまごっちみたいね」

「……何か。うん何か。なんて私たちにおあつらえ向きなんだろう。」

「はあ。婚活しよ。」

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