第4話

 スミレは空想にふけった。

 あの人が、もしも砂場の女の人の夫でないとしたら、何かしらあの人とお話がしてみたいわ。でも、何をお話したらいいんだろう。ゴルフや野球のことは知らないし、男性がどんな話に興味を持つのかもわからない。編み物や刺繍のことには興味がないだろうし、どうしたらいいんだろう。もしもあの方が優しい人で、あの方が独身で、向こうから声をかけてくださったら、私はあの方と結婚して、穏やかな家庭を築いて、あの方の興味のあるものを一生懸命勉強するわ。あの方は私にとって白馬の王子様かもしれない。

 スミレは、そんなことを思いながら、心も体もだらりとなって、ソファーにもたれて王子様の到来を夢見ていた。

 ああ、いけない。私はどうかしているわ。こんなことを考えるなんて・・・。

 スミレは立ち上がって、自分だけの夕食の準備に取り掛かった。ソーセージとベーコンと野菜をたくさん入れて、コンソメスープを作った。出来上がって蓋を開けた時、いい匂いが立ち上がって来た。その時ふっと、アメリカ映画のヒロインがしていた夫との激しいセックスのシーンが目に浮かび、全身が撃たれたようになった。今まで忘れていた快感が全身に走った。スミレは思わず胸に手を当て乳房を握り締めた。

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