5
話はそこで終わったが、母の怪訝そうな顔から事実だろうということは理解できた。
だとしても、あれはあまりにも現実味があった。
確かに僕は、あそこで話をしたはずだ。
扉を開ける音も聞き、姿も見て、言葉のやり取りをおこなった。
それは全部白昼夢だったのだろうか。
その翌日にまた、幼馴染と会う機会があった。その時のことを聞いてみると、
「そもそも、ドアが開けられたことさえ知らないんだけど」
と、真顔で言われてしまった。僕自身の声も聞いた覚えが無いらしい。
どういうことだろうと二人で彼の玄関先で話していると、外で散歩でもしていたのだろう、彼の祖母が帰ってきた。(誤解を招かぬよう伝えておくが、この当時にはまだ祖母は存命だった)
幼馴染は僕の昨日の体験を祖母に伝えると、最初は驚いたようにしていたが、すぐにふっと微笑みながらこう言った。
「そっか……その日お彼岸だったからね」
そういう問題なのだろうか。いやそもそも、もしもそうだとしても、僕に顔を見せるのもおかしくないだろうか。普通だったら可愛い自分の孫になにか伝えるべきではないのだろうか。そう思ったが、流石にその場で直接言葉にはしなかった。
それ以降、幼馴染との話題でよくこの話が上がった。
そんな中で、少しばかり興味深いことがあった。
ある日のこと、二人で地元の道をぶらぶら歩きながら、その時も彼の祖父の霊の話で盛り上がっていた。
「お前本当に霊感があるんじゃね?」
「でもあれが初めてだからなぁ。よくわからん」
「なら、霊感があるかどうかわかるテストがあるから、それやってみろよ」
そう言われて彼は霊感チェックテストのやり方を教えてきた。
その後に聞いたテストとはやり方が若干違ったので、おそらく時間が経つにつれてバリエーションも増えたのだろう。正しいやり方かはわからないが、少なくとも、僕が聞いたやり方はこうだ。
まず、頭の中で、自分の玄関を想像する。そして玄関から家に入って、家の中の部屋の扉をすべて一つずつ開けていく。開け終わったら閉め直して、最後に玄関から外に出る。この一連を、全て想像でおこなう。その想像の途中で、自分の家族や友達、あるいはペットなど、とにかく生物に会ったなら、その人は霊感があるということらしい。
論より証拠ということで、さっそく自分もやってみた。
想像の中で、まず僕は自分の家の玄関の前に立った。
僕の家は玄関を開けるとすぐに左右に部屋がある。その内の右の扉を開けることにした。
開けた先には、『おかっぱで見た目はトイレの花子さん風の小さな女の子』が、こちらに背を向けて横たわっていたのが一瞬だけ見えた。
それ以降は、特に誰とも会わずに玄関から外に出て終わった。
その結果を幼馴染に告げると、もしかしたら取り憑かれてるつかれてるんじゃないかと冗談交じりで言われたが、僕には心当たりは一つあった。
あの公園の出来事。もしやあの時の何かが憑いてきたのだろうか。
今でも特になにか不都合なことが起こるわけでもなし。
取り憑かれてるというのも気のせいだろうと思ってはいるが、もしもまだ自分の後ろに誰かがいるのなら御祓いにでも行くべきだろうかと、不幸に思える出来事が起きる度に時々考える。
無論、十中八九気のせいだろうが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます