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高校二年の夏に、塾帰りしていた時にも、その公園に立ち寄っていた。
時折まっすぐに帰りたくない時には、たまに缶コーヒーでも買って、そこのベンチでゆっくりと飲んで落ち着けていた事があったのだ。夜ということもあって、人通りも少なく、あまり車も通らない道であった為、静かなひと時を過ごせるその空間は、とても居心地が良かった。
その日もそうだった。
公園のベンチで腰を落ち着け、ゆったりしていると、なにかを僕は感じ取った。
違和感、と呼べばいいのだろうか。
とにかくその場で、何かおかしいと思った。それは確かだ。
辺りを見回すが、何もない。強いて上げれば、遊具のブランコがあった。
何故ブランコを上げたのかというと、そこに違和感の正体があったからだ。
ブランコの片方が、少しばかり揺れていたのだ。
風だという人もいるだろう。だが、生憎その時は無風だった。そして左右二つ付いているブランコの片側だけが揺れているのだ。もし風なら、両方とも揺れるはずだ。
そこがおかしいと思う時点で、霊嫌いなら帰るべきだろうが、何を思ったのかブランコに近付いてしまった。
ブランコは僕が近寄っても、まだ揺れていた。ゆらりゆらりと、まるで人が乗っているようで。
僕は基本霊は苦手だ。
だからそういったスポットに行くことはないし、これからもないだろう。
だから実体験もほとんどないし、これからも増えることは、たぶんない。
だからだろう。その行動に危険を感じてはいなかったのだろう。
思わず僕は、そのブランコの揺れを手で押さえたのだ。
なんてことはない。吊ってある鉄の鎖を指で抓んで揺れを止めた。ただそれだけだ。
ブランコはそのまま停止する。しばらくたっても、そのまま。
結局なにかの気のせいだったのだろうかと、僕はそう結論付けた。
それを否定するように、またブランコは揺れ始めた。
思っていたより、その時の僕は冷静だった。
ただ、『やっちまったかも』とは感じていた。
ひとまずその場から離れようと、公園を立ち去ったのは言うまでもない。
家に帰ってきた後も、あの時の出来事を考えていた。
僕は何故か恐怖を感じることはなく、むしろあれは何だったのだろうと思っていた。
もしもあれが霊だとして、ブランコに乗ってただ揺れていただけの状態。姿を見せて何かをするという訳でもなく、ただブランコを揺らすだけ。
そんな状況で、怖がるというのもさすがに滑稽というものではないだろうか。
結局のところ、その日はなにも起こらず、それ以降もなにも起きることはなかった。
推測で、不慮の事故とかで亡くなった子供が、独り寂しくブランコで遊んでいたのだろうかと考えたが、僕にわかることは、少なくとも悪霊とか、そういった悪い霊ではないということだけだった。
幕間はここまでとして、そろそろ本題へと戻ろう。
その後、何事もなく僕は帰宅し、母に今日の出来事を簡単に話していた。
その時に、母は何気なくこう聞かれた。
「彼のお母さんには会った? 挨拶した?」
「いや、母親には会わなかったけど、お爺ちゃんにはあったよ」
「え、お爺ちゃんは二年位前に亡くなったはずだけど」
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