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それは高校三年の冬に入って、それほど間のない頃。
僕は幼馴染の家にいた。というのも、その当時小説を書いていた僕に、『脚本を書いて、それを友人たちと演じて撮影したドラマを、動画投稿サイトに投稿しないか』という誘いがあった為だ。結局、演者が忙しくスケジュール調整が難しくて、頓挫してしまったが。
その日は彼の家の応接室のような部屋で、動画の編集ソフトでどのように編集しようかと、幼馴染と、幼馴染の友人と、僕の三人で悩んでいたのだ。
あまり進んではいなかったけれど、その当時はその雰囲気を楽しんでいた。
夕方から進めて、やがて夜になって。でも時間が進んだ感覚はなく、皆パソコンの画面とにらめっこしていた。
そうしてどれだけ経ったのだろうか。
コンコン。
なにか音が聞こえた。考えるまでもない。ドアのノックの音だ。
思わず僕は「はい」と返事をしてしまった。
何故か家主の息子である幼馴染を差し置いて。
さて、ドアを数回ノックして、中から返事があった。それも拒絶の返答ではない。
次に人は、どんな行動をとるだろうか。
もちろん回答は、
開ける、だ。
そうしてゆっくりドアが開いた先には、
幼馴染の祖父が立っていた。
「おぉーう、ミウ天くん」
昔家にお邪魔した頃と、何一つ変わらない彼は、昔と同じ言葉で僕に言った。
「あっお久しぶりです」
その言葉を皮切りに、
「それじゃあ、これからも○○(幼馴染の名前)をよろしくね」
こちらこそと僕が返すと、そのまま笑顔で彼はドアを閉めた。
結局、中に入ってくることはなく、幼馴染が彼に声を掛けることも、掛けられることもなかった。
やがて解散となって、すっかり夜となった町で、なんとなくだがまっすぐ帰らず、家の近くにある公園でぼうっとしていた。
まだ脚本が完成していないこともあり、そのままゆっくりと一人で思いに耽っていたのだ。
実を言えば、その公園では以前、不思議と言うにはいささかインパクトも何もない出来事があった。
その当時に思い出していたことでもあるので、幕間の話の一つとして語っておくことにする。
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