2
その時僕は、偶然の再会にひどく驚き、向こうも少なからず驚いた様子だった。
高校三年の夏。受験も控えていた僕は、高校の友人と共に某都内まで来ていた。
別に、遊びに来たわけではなく、何校も集まった受験生向けの大学の説明会のイベントに参加するためだ。
しかしながら、僕は気乗りはしなかった。
はっきり言ってしまえば、自分は勉強嫌いの底辺の人間だ。だから、大学の説明も軽めに受けて、自身の低い偏差値でもなるべく楽に行ける大学はないかと模索していたのだ。
いろいろと話は聞いてみたが、どうにも自身に降りかかる事に対して他人事な感覚を覚えてしまう。
自身のことでも真剣みが薄れていたそんな矢先で、偶然会場で肩を叩かれた。
急なことだったので慌てて振り返ると、そこには幼稚園から中学まで一緒だった幼馴染がいたのだ。顔立ちは全く変わっていなかった。すぐに誰だかわかった。
突然のことで、お互いに盛り上がってしまったが、すぐに我に返る。
友人もいることだし、ひとまずは一緒に説明会を回ることにした。
それから帰りも、三年振りの会話に花が咲いていたのを覚えている。半ば友人はおいてけぼりを食らってしまったことは反省点だが、それでもその瞬間は、過去の自分に戻った気がして楽しかったのだ。
やがて、高校三年の終盤も、たまに顔を合わせては話をしたり、免許を持っていた幼馴染とドライブを楽しんだり、彼の高校の友人ともよく話をした。
しかしながら、僕の親は、あまり良い顔はしていなかった。
というのも、彼とは少しばかりの因縁もあった。
小学生時代には、よく彼の家に行って遊んだことがあるが、ある日一緒に遊んだ時、僕に触れさせもしなかったゲームソフトが、僕が帰ったその日に紛失してしまったらしい。そのとき真っ先に浮かんだのが僕である。どうも僕が盗んだのではないかと疑っていたらしい。無論僕はそんなことはしていないし、そもそも触らせてもらえなかったゲームソフトだ。取りようがない。
しかしそれでも、彼は僕が取ったと言い張った。結局大した確認もせず、僕の母親がその代金を彼の親に渡したという結末で終わる。
今思えば、母の言う通り碌な対応ではないと思う。
それ以外にも彼は、他の友人にも傍若無人な振る舞いをおこなっていたのか、彼を知る元友人は、『あんな奴、くそくらえだ』と吐き捨てた程だ。
いわゆる彼は、いじめっ子と呼ばれる存在だった。
そんな彼と、よくまた付き合っているなと思われるかもしれないが、それ以外の一面も、確かにその幼馴染は持ち合わせていた。優しい面が全くないわけではなかったのだ。
その度に僕は、彼との事件は水に流していた。だから今回もまた、仲良くしていたというわけだ。
そうした経緯があって、彼との交流が再開したのだが、ここから先が重要なのだ。
彼との再会が、僕が初めての実体験を経験するターニングポイントとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます