霊は答えを教えない。

ミウ天

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 僕にとって霊は、年を取るごとにその印象を変貌させていった。

 幼少期はただただ恐怖の存在。

 少年期は畏怖嫌厭いふけんえんの中に少しばかりの興味。

 青年になった今は、怖い展開は嫌ではあるが、霊そのものに嫌悪感はあまり持たなくなった。

 元々はバラエティでの恐怖番組が起点となり、ホラーを苦手としているが、その割にはオカルト話や自身で書く物語には幽霊の出てくる話(無論、ホラー展開はほぼない)があるほどだ。

 嫌よ嫌よも好きのうちとは誰が言ったものだろう。ここまで言いえて妙な言葉はない。

 しかしながら、根は嫌っている御陰か、実体験にはそう恵まれてはいない。

 果たして、嫌いなものに遭わずに済むと喜ぶべきなのか、小説のネタに出逢えないと嘆くべきか。

 しかしながら、先程述べた通り、と僕は言った。

 こんな僕でも、実体験はあるにはある。

 ただ、世間がぞっとするような話では、壮大に僕が悪霊の呪いから逃げるような、そんなホラー映画も真っ青な話ではない。











 ただ、一つだけ言えるとしたら。


 残された者に、霊は答えを教えない。


 僕には結局、何をすればいいのかなんてわかりっこなかったのだ。


 罪なんてそんな大層なものでもないし。

 

 誰かに咎められるような話でもないけれど。


 それでも僕は、何かできたこともあるのだろうかと。


 短いのか長いのかも、中途半端な今の人生の中で、幾度か考えてしまう。









 これは、そんなお話なのです。

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