3話 最悪のサイアク
ーーーーーーカゲ人間の出現20分前。
ある国家機密施設所の司令室ーーーーーーー。
「空中観測機に“クロイ空”を確認しました。」
軍事服を着た1人の女性が、パソコンのモニターを見ながら、司令室の真ん中に立っている、いかにもエラそうな軍事服を着ている男性に伝えた。
男性は前方の大型スクリーンを見ていた。
そこには、黒い空になっていた、街が写し出されていた。
その男は一呼吸置き、
そして、周りに座って指示を待っている軍人達に、
「今すぐ、その街に避難勧告を!」
「お前は、バリケード起動準備を!」
「お前は内閣に…」
嵐のように渋い声で指示を1人ずつだしていった。
「ハッ!」
指示を受けた軍人達は、その指示を全うすべく動き始めていた。
大方指示を出した男性は疲れたように椅子に座り、ゆっくりと最後の指示を出した。
「特殊部隊、出動命令」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
稔は走っていた。
今は、駅の方へと走っていた。
駅の近くにも、カゲ人間の襲撃に対しての避難地下通路があるからだ。
「ハァ…ハァ…、よし、この通りはいないな」
稔は物影に隠れながら、行き先を確認していた。街へと出て稔はすでに2回カゲ人間とでくわしているため、慎重になっていた。
1回目は、最短ルートで行けるショッピングモールへと、行く道で交差点を左足に曲がったら、200メートル先にカゲ人間がいた。幸いにも、後ろを向いていたので、カゲ人間が稔の姿を見つける前に稔は引き返して別の場所へと走っていった。
2回目は、小中一貫となっている学校の方へと向かっている時だった。さすがにカゲ人間と、でくわしているので稔は警戒しながら、走っていて、残り500メートルとなった一本道の先で
「うわっ…。この一本道通らないと行けないのに…」
稔はカゲ人間がこちらに向かって来ているのに気づき急いで引き返した。
そして、
「ハァ…ハァ……クソっ」
稔は汗をながしならがら、死に物狂いで駅へとを走っていた。服はボロボロで体中傷だらけだ。
それでも稔は懸命に走っていた。
稔以外は人はいなく、
ドーン…。
どこかで、火がガスに引火して爆発した音。街は火の海になってしまっている。
「もう、これは夢だ。絶対夢なんだ…」
と、稔は自分に言い聞かせ、瓦礫の山を登っていた。頂上付近まで登り少年は周りを見渡した。学校が崩壊していて、いつも活気のある商店街は瓦礫の山になっていて、面影すらなかった。
稔は絶句していた。
生まれ育ったこの街が、もう街じゃなかったからだ。
「………………ッ。」
稔の頭の中にまた新しい情報が入ってきた。
稔はとっさにさっきまで、自分が走ってきたところを振り向いた。
「何故、オレのいる場所がわかるんだ!………カゲ人間!」
と、稔は言って瓦礫の山を降り、また走り始めた。否、逃げ始めた。
そして、稔がさっきまで振り向いていた先には、人の影のような黒い生物が、歩いてきていた。
「クソッ!もう駅にいないことに賭けるしかねぇ!」
ここから駅までは一本道でカゲ人間が現れたせいで、もう稔は後戻り出来なくなってしまった。
「頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む…」
稔は一心に願ながら、駅の方へと走っていった。
ずっと走っていたから、足や肺はもちろん、みのるの体は限界に近い状態だった。が、駅にカゲ人間がいないのに、望みを賭けて、死に物狂いで走った。
残り200メートルーーーー。
駅の近くの避難通路付近にはまだ、カゲ人間は現れていない。
「やった…。助か…」
稔がそう言いかけた瞬間
「…………ッ」
稔の頭の中にまたある情報が入ってきた。
そして、稔は走るのをやめた。
その時
シューーーン
ドーーン
避難通路付近に何かが降ってきた。
言うまでもない。
カゲ人間だった。
そのカゲ人間はすぐに稔の姿を見つけゆっくりと稔の方へと歩き始めた。
前に行ってもカゲ人間。後ろに行ってもカゲ人間。
こんな最悪の状況に稔は
「ハハッ…。サイアクだな…ホント…」
笑っているのか泣いているのかわからない声でそう言い、
膝から崩れてしまった。
そして、稔は逃げるのを諦めてしまったーーーーーー。
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