2話 サイアク
「ヤバいな…。運命様は最悪だな…」
稔は運命を呪っていた。
当然も当然。
あと、もう少しで安全区域の避難通路に到着できていたはずなのに、よりにもよって人類の天敵に出会ってしまったからだ。
稔1人だったらまだしも、もう1人。
しかも、か弱い女の子(稔はそう思っていないが)が、いるこの状況。
稔は動けずに立ち尽くしている間もカゲ人間はゆっくりとこっちに歩いている。
その行動に気づいた稔は1つ疑問が浮かんだのが、そんな疑問は一瞬で投げ捨て、咲希の方へと振り向いた。
咲希は立ったまま足が震えていて、気は動転して、怯えていた。
それを見た稔は咲希の肩に両手をのせ揺さぶるように
「咲希!咲希!」
と、咲希の名前を大声で呼んだのだが、咲希は揺さぶられながら、大声で名前を呼ばれいるのにも反応せず、ただ怯えているだけの状態。
「クソッ!カゲ病か!」
そういって稔は自分の胸ポケットにあるペンダントを取り出した。そのペンダントは円型で先端の方にスイッチがあり、稔はすぐにそのスイッチを押した。
スイッチを押してすぐに、ほんのりとペンダント全体が光始め、緑色に光始めているその光は、どこか癒される光を放ち始めた。
その光を咲希の顔の方へと近づけると、だんだんと怯えている表情をしていた咲希の表情が普段の表情に変化していき、10秒ぐらい咲希に光を当て続けていたら、咲希は我を取り戻した。
「あれっ?私、いったい…」
「カゲ病だ。そんなことより…」
ゆっくりと歩いてきているカゲ人間の方を稔は見た。
残り80メートルくらいのところまで、カゲ人間はきている。
ゆっくりと近づいてくる恐怖に稔も体の震えを抑える事ができないでいたが、稔の心はこの状況でもまだ諦めていなかった。
震える足を抑えるように、自分で自分の足を何回か叩き、
「生きるんだ!絶対生き延びるんだ!!」
稔は自己暗示のように自分に言い聞かせそして、咲希の方を向いて、
「このまま一緒に逃げるのは無理だ。オレが囮になる。その隙に咲希は木とかの影に隠れながら逃げるんだ!」
覚悟を決めた稔は強い口調で言った。
「でもそれって…」
「咲希が避難通路に着いたのを確認したら、オレもいくから。」
「わかった…」
稔の覚悟を感じ取った咲希は素直に従った。
稔はその返事と咲希の表情を見て安心したように心を落ち着かせ、
「よしッ。」
そう言ってカゲ人間の方へと走った。
それを見ていた咲希も様々な感情を感じながら、木に隠れながら、避難通路まで走っていった。
カゲ人間は自分の方へと近づいてくる、稔にやはり興味を示した。
稔はカゲ人間の距離が30メートルくらいになったところで横に進路変更した。
それに釣られてカゲ人間も横にゆっくりと移動。
稔はゆっくりと歩いてくるのを利用して、近づけては進路変更し、近づけては進路変更し、の繰り返しで避難通路に遠ざけるように逃げていった。
そして、咲希が避難通路のある地下へと入っていく姿が見えた。
「よし、あとはコイツを振り切って…」
稔も避難通路へと行こうと考えていた時…
「えっ。はぁっ?マジかッ!」
頭の中に、突然すっとある情報が入ってきた。
その情報に一瞬戸惑ったが、
「咲希!扉をロックしろ!!」
と、言って稔は裏門がある逆の方向へと、走った。
その数秒後ーーーー。
シューーーン
ドォーーーン
避難通路のある校門付近に黒いモノが落ちてきた。
カゲ人間。
それも2体。
数分前に現れた最初の1体。そして、今新しく来た2体。計3体のカゲ人間が学校に現れた。そして、その3体はまたゆっくりと走って逃げている稔を追いかけ始めた。
稔はあたかもカゲ人間が現れるのがわかっていたのごとく、さっきの衝撃音に目もくれずに全力疾走で裏門へと、走っていき、
「ホントに運命様はサイアクだ!!」
といって裏門から学校を出て、
街へと走っていったーーーー。
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