特別賭博地域オリンポス
まだ一桁であろう年齢の子供が今行っているのはまさにギャンブル。チップとはこの街の通貨、金だ。それを賭けて砂場で棒倒しをしている。一応説明すると棒倒しとは砂で山を作り、そこに木の棒を頂上付近に刺す。そしてそれを倒さないように砂を取るゲームだ。しかしここでは『親』が山を作り、『子』が砂を取る。そして三巡以内に棒が倒れたら親の勝ち、賭け金は総取りとなる。子は棒を倒さなければ良いわけだが棒が倒れずに三巡過ぎた場合、砂を一番持っていた人間の勝ちとなる。だからちびちび砂を取るという戦術をとっていたら他のプレイヤーに勝たれてしまう。このゲームは如何に棒を倒さず、他のプレイヤーを牽制し、協力し合えるか。
まぁこんな子供遊び、子と親が裏で手を結べば簡単にゲーム性が崩壊するのだが。
でもこれでわかってくれただろう。この街、オリンポスではギャンブルが日常だ。弱い者は淘汰され、強い者が生き残る。弱い者に残された道は大勝負をするか逃げるかのどちらかしかない。
俺は勿論逃げる側だ。だって勝てないのだから。勝てない勝負に挑むギャンブラーはいないだろう。俺もこの街に住んでいる以上ギャンブラーではあるが高校に入ってからギャンブルは一回もしていない。例えそれがジャンケンであっても。
この街はギャンブルをしていいだけで強制ではない。中には俺みたいに真っ当に働いて稼いで生活をしている人もいる。俺も将来はそっち側になるつもりだ。俺の通っている高校では放課後毎日のように賭場が開かれて教員も参加しているがそういった事は俺は全て断っているので友達もいない。別に飲み食いするくらいなら付き合うさ。ただ二言目には「どっちが奢るか勝負しようぜ」だもんな。嫌になっちゃうよ。子供ですらこの有様なんだから大人はもっと酷い。感覚がみんな麻痺しているんだろうな。だから注意する人間もいない。治安悪すぎだろ。
だが犯罪率は割と少ない。なぜなら治安維持を目的とした風紀班が厳しいからだ。人殺しは勿論、特にギャンブルでの犯罪はかなりの重罪なため、みんなやろうとしない。ちなみにここは人工島でしかも通貨も違うため日本の領土内にはあるがちょっと別の国感がある。共通語は日本語だけど。
だからオリンポスは「海外旅行に行きたいけど行けない。でも行きたい」って人には打って付けの場所なのだ。娯楽施設もそこらかしこにあるし。だから連日旅行客で埋め尽くされている。
でも彼らは、いや住んでいる大半の人間ですら知らないだろうが、この街には闇がある。それはそれは深い闇が。
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