トジバクギ
清浄院夏海
プロローグ
俺は世界で一番不幸な人間だと思う。不幸、とは語弊があるな。不運だ。そう不運。でも本で読むような面白い不運とは到底思えない。空から女の子が降ってきたりすることもなければ買ったばかりの卵を割ることもない。……卵はたまにあるけどさ。でも、まぁ、そこそこの生活はできてるんじゃないかな。多分。
ここは少し特別な地域だが平凡に生きていれば平凡のまま死を迎えられる。街も綺麗だしそこそこ気に入ってるし。このまま自堕落な生活を送るのも悪くない。今日も眠くなるような授業を聞き流し、帰って七度寝するかーと家に向かって
歩いていると近所の公園から子供の無邪気な声が響いてきた。
「おーい、『かけっこ』しようよー!」
「いいよー!じゃあケンちゃん『親』ねー!」
どうやら仲の良い五人組の子供が遊んでいるようだ。それはもう俺のような死んだ目ではなくキラキラした眩い瞳で。
さて、普通の人間ならこの光景にほのぼのするかもしれない。年端もいかない少年少女が仲睦まじく遊んでいるのだから。だが俺はそんな感情は一切湧いてこない。むしろ嫌悪感を示すといってもいい。なぜなら
「やった!私の勝ち!『50チップ』ね!」
なぜなら、彼らのやってることは『
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