第六話「花と平原の世界」

 殺戮の世界から今度は花かよ極端だな…などと思っていると、後ろからリモが斬りかかってきた。間一髪で躱すと舌打ちされた。

「なんでいきなり斬りかかってくるんだよ!」

「…わたしのことをお前に話して大丈夫か考えていたんだ。お前はリモに危害を加えるような奴じゃないし、弱っちい訳でもない。話してもいいだろう。」

「ああ、聞かせてもらおう。ずっと気になってたしな。」

 いつもの舌足らずな口調とは違い、はっきりとした喋り方に戸惑いながら俺は答えた。

 たいしたことじゃないさ、と言って、リモは語りだす。

「まず、わたしはリモじゃない。リモの中にいるもう一つの人格だ。私たち、いや、リモのいた場所はさっきの殺戮の世界のような世界だった。それとあの性格を考えたらもう分かるだろう?」

 つまり、リモが自分を守るためにこいつを無意識に生み出したって訳か。

「お前のことをリモは知っているのか?」

「違和感を覚えることはあるが恐らく気付いてはいないだろう。それに私にはリモの記憶があるが、リモには私のときの記憶がない。」

 リモは少し悲しげに言った。

「私は、リモにとって必要なのだろうか?私は…私は誰からも必要になんて…」

「そんなことはないっ!」

 俺は思わずそう叫んでいた。

「俺にはお前が必要だ。純粋なリモだけじゃなくて、お前みたいなやつのことも知りたいし、仲良くなりたいと思ってる。お前がどう思ってるかは知らないけど…」

 俺はリモを見ながら言う。

「俺はお前たちと仲良くなりたいと思っている」

「…そうか」

 リモは少し照れた顔で微笑んだ。

「だったら、私に名前を付けてくれないか?」

 確かに、リモって呼ぶとわけわかんないもんな。

 俺は少し考えてこう言った。

「よし、お前の名前はエルだ。これからもよろしくな、エル」

「ああ!こちらこそ、リモ共々よろしく頼む」

 エル…エルかぁ…、と感慨深そうに何度も呟くエルだったが急にパタッと倒れる。そして、むっくり起き上がると不思議そうな顔で首を傾げる。

「あれ…?ここは?…うわぁああすっごいきれいなおはなばたけー!」

 そしてすててーと走っていく。元気なもんだなぁ。

「おい!置いてくんじゃねえよ!」

 俺はリモを追いかけながら叫んだ。

 どうやらエルがリモに戻るときには一瞬意識を失うようだな。

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