第2話 ミートアゲイン!
「おーい能登、ちょっといいか、」
「? はい」
ホームルーム後、カバンに教科書を詰め込む私に担任が話しかけた。先生は申し訳なさそうに眉を下げているが、その割に手に持ったファイルを半ば強制的に私の手に収めてくる。
「ちょ」
「能登、お前って帰宅部だったよな」
「まあ……」
表情だけでこの人が言わんとしていることがわかった。ゼッタイ何か面倒な雑用を押し付ける気だ。
「ちょっと雑用を頼まれて欲しいんだけど」
ほら来た。別に暇だから良いけれど、なんかなんかなんだなかーって感じだ。別に文句なんて1つもないけど。
「いいですよ」
「マジか助かる。……ちなみにさ、オマエ、“前野まつり”に会ったことはあるか?」
まえのまつり。先生が言うその人は、同じクラスの前野まつりちゃんに違いないだろう。2年生になって初めて一緒のクラスになった人だ。
「ないです」
しかし、まつりちゃんは進級してからただの一度も学校に来ていない。いわゆる、登校拒否ってヤツだ。
「そうかぁ……まぁいいや。それ、前野の分のプリントなんだけど」
「あぁ……」
「中に前野ン家までの地図のメモも入ってるから」
「は」
じゃあ、俺これから会議あるから、よろしく。そう言って先生は教室から出て行った。
……ガチかよ。
前野まつりちゃんといえば、さっきも言った通り登校拒否をしている。それだけでも噂好きな女子高生の格好のエサだが、理由はそれ一つじゃない。美人なのだ。それも、超が付くくらいの。私は遠目からしか見たことはないけれど、芸能人のようなオーラがある華やかな人だった。地味な私とは正反対の世界で生きている人だ。
そんなこんなで前野まつりちゃんはよく噂されていた。20も歳上のカレシとの子どもを身ごもったとか産んだとか、家出して大学生のカレシと一緒に住んでるとか。根も葉もないものだったから月日が経つにつれて風化して行ったけど。ていうか、全部オトコ絡みだわ。やっぱり美人は違うよね。ハハ。
とにかくサッと行ってサッと帰って来よう。なんならポストに入れて来るだけでもいいし。
なんて考えているうちに前野まつりちゃんの家に着いてしまった。表札に「前野」って書いてあるから間違いない。
どっ、どうする。どうしよう。こんなことなら友だちも連れてくれば良かった。ピンポン押したらまつりちゃんが出て来るかな。できることならお母様をお願いしたい。お母様にサッと渡してサッと帰ろう。よく考えたら、初対面の良くわからないヤツがプリント渡すとか意味不明すぎるじゃん! どんな反応されるかわかったもんじゃない。よし、お母様、お母様来い。お母様プリーズ!
「――ねぇ、ウチに何か用?」
焦りきった私は、背後に立っている人の存在に気づくことができなかった。
「あっ!? あっ、あの、これ、前野まつりさんに……!」
急いで振り返ると、そこにはガチ美少女が立っていた。全体的に色素が薄く、華奢で、出るとこ出てて、極めつけは吸い込まれそうな大きな瞳……。
ッて、あれ。
「そりゃありがと。てか、アンタ誰」
この人、この前図書室でセックスしてた人じゃねぇか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます