JK、戦います!

西園ヒソカ

第1話 サイッコーに世知辛いゼ


 学校内とかおかまいなしにおっぱじめやがって……。ピンクな吐息を背中で感じながら、私はそんなふうに考えた。


 私、能登ほたるは、どこにでもいる普通の女子高生である。……いや、うそ。うそついた。イマドキこんな地味なJK、私以外滅多にいないだろう。


 起伏のない日常を送ってきた私にとって、今の状況は生まれて1番ヤバい出来事かもしれない。うん、だって、せせせセックスをしている人がこんなに近くにいる状況、ゼッタイおかしい。きっと人生で最初で最後。こんなことを考えてるうちにも情事は着々と進んでいく。


神さまはなぜ、未だハンドヴァージン、それ以外にも何もロストしていない私にこんなにも刺激的な映像を間近で見せようと言うのだろうか……。


 今日は図書委員会の放課後の当番の日だった。いつも一緒に当番をしている先輩は急遽用事が入ったらしく、しかも司書の先生もお休みで今日は私1人だけの予定だった。


 そもそも、放課後に図書室に人が来ることは極希で、私たち図書委員にとって放課後の当番の時間は寝たり課題をしたり本を読んだり司書の先生と話したり、適当に過ごす時間でもあった。図書室でダラダラする時間は嫌いではない。むしろちょっと対応が苦手な歳上の人がいなくて心が楽なくらいだ。


 掃除を終え、足取り軽く棟の違う図書室へと急いだ。


 そして図書室に入ろうとした瞬間、聞こえたのが情事開始のガサゴソきゃっきゃ音だった、と……。


 いや、最初ははぁ!? リア充死んでくれないかな!? って思ったよ。思ったけどさ、こんな生々しい音やら声やらを聞いたら思考停止するって。動物はすべてこの行為によって生まれたんだなーとか、そんなちょっと頭の良さげなことを考える隙なんか1ミリもない。あー死ね。ほんと死ね。リア充なんか嫌いだ。


 とか思いつつも、好奇心が募って思わず情事を覗いてしまうのはJKの性だろう。ちょっと見るくらいなら、と図書室の中を覗く。男子生徒は向こうを向いていた。(ちなみに服は着ていた。)女子生徒は本棚にもたれかかり、こちらを見ていて……。


“見ていて”?


 そう。すべてを捕らえてしまいそうな大きな瞳は、こちらを見ていた。そして、



 ……あ。




 目が、合った。

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