第8話 拐われました

あの変な痣が出てから約四年経ち、あの時の少年は14才になっていた。



「はぁー、なんでこんなに害獣増えてんだろう。この前とかとうとう腕の数がおかしい熊が出てきたし、害獣駆除は角の生えた猪だけで充分だってーの、仕事増やすなし」



少年は父と共に村の畑に出てくる害獣を駆除する仕事を生業としており、暇な時は畑仕事を手伝ったりしていた。


えっさほいさと手を動かして鍬(クワ)を土に突き刺して耕していく。父は剣を振るのと同じだと言っていたが、だいたい鍬と剣は別もんだろう。



「ふぅー、ここらでちょっと休むか」



畑を半分ほど耕し、一休憩を挟もうと鍬を土に突き刺して木陰に向かって歩き出した時だった。



「神のお心のままに!行くぞお前らあああ!!!」


「おおおーーー!!!」


「!!?」



突然木の近くにあった茂みから男が五人凄い形相で飛び出してきた。一人はこちらを指差し「確保!!」とか叫んでいる。


なんだなんだ人拐いか!?



「うわあああ!!!なんだお前ら!?」



とっさに鍬を投げようと思ったが、ついさっき鍬を土に突き刺して来たとこを思い出す。慌てて逃げたがなんとこいつら足が早い。捕まえようとしてくるやつらを殴り蹴りしたがさすがに五人相手では分が悪い。



「お前ら何しとるかあああ!!!」


「おっとおおお!!!」


「うわこの人超強い!!」


「めげるな!!はじめての神様からの勅命だ!!!踏ん張れえええ!!!」











さすがに素手で魔法やらなんやらを使う相手には父も敵わなかったようで、縄でぐるぐる巻きにされて捕まってしまった。


せめて鍬を持っていれば。



「協会からの馬車がこちらに向かっているそうです!」



ボロボロの男が、これまた目の周りに青アザを作ったボロボロの男に敬礼する。



「よし!じゃあ来るまでの間神様に失礼のないように怪我を治しておこう!魔力がまだ大丈夫な奴は?」


「俺まだいけます」


「では頼もう」



そう言ってボロボロになっている人拐い達は治療を開始した。


というか、あちらはボロボロなのにこちらは無傷なのはなんでだ。



「おい、息子よ。これは一体どういう状況だ」


「そんなん俺が知りたいわ」



しばらくしてこんなド田舎には不釣り合いな立派な立派な教会からの馬車が到着した。それに少年と父はえっさほいさと詰め込まれ、馬車は猛スピードで近くの教会に運び込まれたのだった。

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