第9話 テレンシオ・ローリング・ヴァガバンド
四年前の神官が出てくるのかと思ったら、違う人が出てきた。白いふさふさの髭が髪の毛と融合してしまっている。
あいつはどうした飛ばされたのか?と少年は思った。
「おお、まさか本当にこんな辺境な地に現れていたとは。どうりで我々が血眼(ちまなこ)になって探しても見付からない訳だ」
「なんだよ俺等悪くねーし、つーか違う扱いしたのそっちだーー「しっっ!!」
「んだよ父(おっとう)」
「いいからお前は黙っちょけ」
モヤモヤしながら少年は黙る。しかし納得がいかない。
そこで神官の部下らしき人が駆け足でやって来た。先程の確保集団とは別の人である。ちなみに確保集団はずっと後ろに居るのだが、ビシッと姿勢を正し気配を消していた。
「クロス神官。この二人の名前が判明しました。どうも元々流民のようで、村に出生登録されていなかったので探すのに手間取りました」
「うむ。しかし判明したのなら良い。さて、二人の詳細な情報を聞かせてくれ」
「はい。では、まずーーー」
父(48)
エレネスト・ローリング・ヴァガバンド。
元各地を渡り歩く旅人で、幼子と共に村に住み着き、狩の経験から村に出没する害獣駆除の仕事で生計を賄っている。魔力はなし。どうも旅先で結婚していたようですが、妻には逃げられたようです。可哀想に。
「余計なお世話じゃ!!」
「では、次にーーー」
息子(14)
テレンシオ・ローリング・ヴァガバンド。
父と共に村の害獣駆除を生業として生活。たまに村人の畑を耕す手伝いをしている。村一番の問題児というか、わんぱく者で、つい先日村に出たタランチュラベアーを村の子供達と共にそこらにあった石や農具を投げ、隙を見て棍棒でボコ殴りにして撃退。子供達の間からはガキ大将扱いされているそうです。
「そして、今回の勇者候補であります」
以上です、と神官の部下が手帳を閉じた。
「……
神官がエレネストとテレンシオを見る。
その視線に気付いたテレンシオが神官を睨み付けた。
「なんだよ」
「いや、何の因果かと思っての」
「?」
神官は意味が分からないと顔に書いているテレンシオから視線を外した。
「さて、そろそろ本題に移るとしよう。皆の者、準備を」
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