世界救済
「魔女狩りにあった魔女達を蘇らせ、人間をこの世から抹消し、世界を救うためです」
最後の魔女はあっさりと、さも当たり前の様にそう云ってのけた。
時雄は一瞬、戸惑い思考が停止してしまった。だが、すぐに気を持ち直し、意を決して彼女に問いかけた。
「魔女狩りにあった魔女達を蘇らせる事は、なんとなく理解できます。でも何故、人間を抹消しなきゃいけないのです? それで本当に世界は救われるのでしょうか?」
「ええ、そうですよ」
魔女は相変わらずの無表情だ。彼女はなおも続ける。
「人間は、有害でしかないのです」
シンリは、けっけっけっ、と奇怪で不快な笑いをする。
「と云うのは冗談で」
彼女は無表情で冗談を云う。冗談なのか本気なのかは分かりにくい、と時雄は頭を抱える。
「本当の理由は、最初の魔女を殺す事にあるのです」
彼女は、抹消する、というのも大げさに云っただけですよ。と続けた。
そして彼女は語り始める。魔女を蘇らせ、人間を抹消する理由を。世界を救う訳を。
「最初の魔女は、この世界を支配し、ゆくゆくは自分を創造した神すら殺そうと企んでいます。それはこの世界に住む生命にとって、好ましくないものです。
「最初の魔女の肉体は魔女狩りにより、現在は灰となってしまいましたが、彼女───最初の魔女は今でも生き続けています。『サイクロプスの心臓』と呼ばれる、『分身』を持っているからです。その分身体が存在し続ける限り、世界は危機に晒されています」
「サイクロプスの心臓って、あの本に出てきた……!」
時雄は本の中に出てきた、気味の悪い一つ目の化け物を思い出した。
「そう、それさ。君が最後に見た、
そしてシンリは、けっけっけっ、と奇怪で不愉快な笑い声をあげる。
「私たちは、最初の魔女もとい、サイクロプスの心臓を殺さねばなりません」
最後の魔女は虚ろな瞳で時雄を見つめ、時雄の方へと歩み寄った。
「そのために、貴方の力が必要なのです」
そして冷たい掌で、時雄の拳を包んだ。
「一緒に世界を救いましょう」
最後の魔女が世界を救う事の素晴らしさや、最初の魔女がどれだけ酷い人物なのかを話していると、いつの間にか一日が過ぎていた。
「心臓退治には、人手が必要です」
彼女は、カバンから古びた地図を取り出し、しばらくの間、考え込む。
「まずは、
そして一行は、魔女狩りが最も盛んだった東方の村へと旅立った。
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