それはムリ

(土曜の夜8時、仕事から帰宅する吉野)

吉野「(マンションの廊下をどすどす歩き)くそ、今日はマジで痛かった……天気良さそうだし近場の海でも行ってみるかって最高に上がるデートプランがぶっ潰れた……インドアなあいつが珍しく頷いたと思ったのに!!(とぶうぶう言いつつ玄関のドアを開けようとして鼻をヒクヒク)

 ……ん、え、なにこれ、すげえいい匂い……この匂い、うちからか?」

(ガチャリと鍵を回してドアを開ける。しんとした中に料理のいい匂いが)

吉野「……うあ、やっぱうちからじゃん……って、どういう状況だこれ……(と言いつつ照明をつけてキッチンのテーブルを見る。ラップのかかった皿がいくつも並ぶ)えっ、ちょ、これ何……ん、何か書き置きか?

『用事できたから帰る。とりあえず食え 晶』って……

 うおお〜〜〜〜!? めちゃめちゃ美味そうな超和食じゃん……あいつ、これ作ってくれたんか!? そういや家ん中めっちゃ綺麗になってるし、しかも肉じゃがと独活の酢味噌和えとかどんだけ頑張ったんだよ!? ってか、つい今し方までここにいたんじゃねえのか、この部屋の空気……

 ぐあああああ、用事ってなんだよおい!? あと10分早く帰ってくれば死ぬほど抱きしめられたのに……こんな残酷な生殺しってあるか!!???(頭を抱えてジタバタ身悶える)」


(一方の岡崎は用事などなく、自室のソファで息を乱しクッションに顔を押し付けジタバタ身悶える)

岡崎「作るまではやった……やってしまった……しかしこの後あいつの正面で自分の作った飯を一緒に食う勇気はない……『美味いか?』とか死んでも聞けねーし『美味い』とかって言われたら照れすぎて死ぬ……

 ムリ!! とにかくそれはどう考えても絶対にムリっっ!!!」



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