キャンディ
(吉野のバイト先のガソリンスタンド)
吉野「窓をお拭きしますねー。灰皿などは大丈夫ですか?」
客「あーそれいいから。
おいっさっきからユウトぎゃん泣きじゃんか!もーいい加減なんとかしろよ!」
客の妻「(必死にあやす)ごめんなさいパパ……ゆうちゃん〜、どうしたの?さっきミルク飲んだばっかりでしょ?」
客「オムツとかじゃねーのかよ?お前、育児ほんと大丈夫かよ?こっちは運転で神経使ってんだからしっかりしてくれよー全く!」
妻「…………
ごめんなさい」
吉野「……(作業しつつその会話を黙って聞く)」
(その後、会計のために店内に入ってきた妻)
妻「…………(レジで寂しそうに俯く)」
吉野「……(カウンターで会計)532円のお釣りです。
それと、これどうぞ(ポップキャンディを一本差し出す)」
妻「…………(驚いたように吉野を見る)
……え……
でも、うちの子まだキャンディとかダメで……」
吉野「(ニッと笑って囁く)いえ。これ、あなたにです。
あなたがあんまり従順に従ってると、彼、ますますあんな言い方しますよきっと。
男って、そういうもんです。
『今度そんな言い方したら別れるから』って、一度言ってみてください。きっと彼、泣いて謝りますから」
妻「…………あんな会話、聞かれちゃって恥ずかしいです。
でも、彼にそんなこと言って、もし本当に家族が壊れてしまったら……」
吉野「きっと、大丈夫です。
あなたみたいな奥さんを失って平気な男、多分いないと思います」
妻「…………
(嬉しそうに目を潤ませ、真っ赤になる)ありがとうございます!
キャンディ、いただきます」
吉野「(優しく微笑む)まいどありがとうございます」
(妻、車内に戻る)
夫「おい〜もう勘弁しろよ、ユウト泣きっぱなしー!さっさと金払って戻ってきてくんなきゃたまんねーって」
妻「…………(じっと夫を見る)
……ねえ。
離婚しましょ、私たち。今ここで。
——好きな人ができたの。たった今」
夫「……………………ええええええーーーーちょっちょ待って今何があったのお願いちょっとだけ待ってくれエリカ〜〜〜〜〜!!!!!!」
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