卒業

(高校の卒業式を終えた屋上)


吉野「(フェンスに寄りかかり、煙草の煙を青空へふーっと吐く)

……なあ、岡崎。

ここで一緒にいるのも、今日で最後だな」

岡崎「——ああ。

……そういやお前、第一志望よく受かったよな」

吉野「当たり前だ。

まあ、しばらくこの辺とはお別れだけどな」



岡崎「…………」


吉野「……寂しいか?」


岡崎「は?なんだそれ?

お前の失恋の度にだらだら愚痴聞かさるのはもう真っ平だからな」

吉野「(くすっと笑う)……まあ、そうだよな」


岡崎「……あんま煙草吸い過ぎんなよ」

吉野「ああ。

お前は相変わらず淡々と充実した大学生活送るんだろうな」

岡崎「……さあ、どうかな」



吉野「——じゃあな」

岡崎「ああ」



(別れた後)

岡崎『……4年か。

どんな時間なんだろうな、お前が隣にいない4年って……


……は?何言ってんだ俺?

その後また会うかどうかだって、分からないのに——


……今見たあいつを、目に焼き付けておこう。

この先もう会えなくても、忘れないように』



(大学1年の4月)

吉野『(岡崎の携帯にメール)岡崎今なにやってるー?』

岡崎『もちろん学校だ』

吉野『俺今友達と中華街〜!!見ろ、この巨大な肉まんっ!美味いっ!!で、隣に写ってるのは俺の彼女♪♪』

岡崎『…そうか。よかったな。…で、何の用だ』

吉野『え、今のが用事だろ』

岡崎『は……そうなのか?』


(1週間後)

吉野『あーっムカつく!あんな気の強い女さっさと別れるんだった。胸クソわりー!』

岡崎『…お前は相変わらず女を見る目がないようだな』

吉野『うるせー。くそっ肉まん代返せっっ!!なー岡崎なんかおもしれージョークでも言ってくれー』

岡崎『……そう言われてこの俺が面白いこと言うと思うか?』

吉野『ウソウソ。そういうリアクションがすっげえ好きなんだよなー。

付き合ってくれていつもサンキュな』


岡崎『…………

まあいいけど別に』



(大学2年の春)

岡崎「(吉野の携帯を鳴らして通話)おい。起きたか。月曜は一時限から講義だってグチってたろお前」

吉野「ふえ〜〜?…うあヤバイ寝坊だ!電話くれて助かったー!」

岡崎「……ったくお前は……

……仕方ない。月曜だけ、朝電話してやる。…月曜だけだからな」

吉野「うおーマジか!?神かよ…恩に着るっ!!」


(大学3年の春)

吉野『なあ岡崎、お前履歴書ちゃんと書けたか?』

岡崎『んー微妙だ』

吉野『やっぱり?俺もだ。……じゃあさ、お互いのヤツ写メ送って添削し合わねーか?お互い、自分自身のことより相手のことの方がよくわかるんじゃね?』

岡崎『……お前にしちゃ名案だな』

吉野『てめぇ』


(大学4年の夏)

吉野『就活お疲れ』

岡崎『お互いにな』

吉野『今、近くで花火大会やってるんだ。ベランダからよく見えるから、写メ送る』

岡崎『………綺麗だな』


吉野『……ほんとは、隣で一緒に見たいけどな』



岡崎『————』


吉野『…今部屋ならビール持って来いよ。乾杯しよーぜ』


岡崎『ああ。

——乾杯』



(そんなこんなで4年後の春)

吉野『お前んとこ、もう卒業式終わったろ?うちも今日終わった。

……4年なんて、あっという間だな。

就職は俺もそっちだからさ、今度一緒に飲もーぜ』



岡崎『……そうだな』


(…………

離れてた時間のはずが……何かすごく…その……

いや気のせいだろ絶対……)





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